トランプ氏のNATO軽視発言でEU反発拡大、グリーンランド論争も波紋
2026年1月下旬、スイス・ダボスでの発言をきっかけに、米欧関係(トランプ政権とEU)の緊張が一段と高まっています。焦点は「NATO(北大西洋条約機構)への信頼」と「グリーンランドをめぐる強硬な言辞」です。
NATO同盟国の貢献をめぐる発言が“火種”に
米国のドナルド・トランプ大統領は先週、ダボスでのFox Newsのインタビューで、同盟国が有事に米国を助けるのか疑問を呈しつつ、アフガニスタンでの同盟国部隊の貢献を矮小化する趣旨の発言をしました。
具体的には、同盟国について「アフガニスタンに部隊を送ったと言うが、前線から少し離れていた」といった趣旨のコメントを行い、欧州側で強い反発が広がりました。
英国・ポーランドが強く反発
- 英国のキア・スターマー首相は、この発言を「侮辱的で、率直に言ってぞっとする」と非難。英国軍に死傷者が出たことを踏まえ、同盟の犠牲と責任を軽く扱う姿勢だと受け止められました。
- ポーランドのドナルド・トゥスク首相もSNS投稿で反論し、自国もアフガニスタンで兵士を失ったと指摘しました。
グリーンランドをめぐる強硬論が“もう一つの衝撃”
今回の反発は、直前に起きていたグリーンランドをめぐる対立とも重なります。トランプ大統領は、デンマーク王国の自治領であるグリーンランドの獲得に向け、軍事行動も選択肢になり得るかのような言い回しを用いたとされ、欧州側が強く警戒を強めました。
デンマーク首相「主権は交渉できない」
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、安全保障・投資・経済は交渉し得る一方で、「主権については交渉できない」と述べ、線引きを明確にしました。
その後、トランプ大統領はNATOとの間でグリーンランドの将来に関する「枠組み合意を得た」との趣旨を主張しましたが、強い言辞は欧州側に「威嚇」と受け止められ、軍事的な圧力を否定する声が相次ぎました。
欧州側の危機感:「この1週間で大きな打撃」
欧州の反応は、感情的反発にとどまらず、同盟の前提が揺らぐことへの危機感として表れています。
- フランスのエマニュエル・マクロン大統領はダボスの世界経済フォーラム(WEF)で、最大限の譲歩要求や関税を梃子にした圧力は「根本的に受け入れがたい」と述べました。
- EU外交政策担当のカヤ・カラス氏は、ここ1週間で「大きな打撃を受けた」と発言しました。
- 欧州理事会の元常任議長シャルル・ミシェル氏は、従来の大西洋関係は「死んだ」とCNNに語りました。
国際法・NATO条約との整合性も論点に
批判の一部は、グリーンランドをめぐる軍事力の示唆が国際法に反する可能性に向けられています。指摘されているのは、国家の領土保全や政治的独立に対する武力の威嚇・行使を禁じる国連憲章などの原則です。
また、米国とデンマークはいずれもNATO加盟国であるため、仮に攻撃という事態になれば、北大西洋条約の枠組み自体を揺さぶるとの見方もあります。
米側の説明:ミサイル防衛と北極の戦略性
トランプ政権側は、グリーンランドが米国の安全保障にとって重要だと強調しています。WEFの場でスコット・ベッセント米財務長官は、トランプ大統領がグリーンランドを「ゴールデン・ドーム(ミサイル防衛構想)の盾に不可欠」と考えていると述べました。
一方で、ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は新華社に対し、「重要ではあるが、すでに守る能力があり、条約上も義務がある」と語っています。
報道によれば、グリーンランドには米軍の重要基地があり、北極域では氷の融解により新航路や資源アクセスが現実味を増していることが、関心を押し上げているともされています。
いま何が問われているのか:同盟の“信頼”と“言葉のコスト”
今回の一連の応酬は、軍事や経済の実務以前に、同盟が依って立つ「信頼の言語」をめぐる揺れとして映ります。NATOへの評価、同盟国の犠牲の扱い、領土・主権に関する言い回し――それぞれが、次の交渉の前提条件を変えてしまうからです。
トランプ大統領はその後、軍事行動や関税の脅しを後退させたとされます。ただ、欧州側に残るのは「また同じ言葉が繰り返されるのか」という警戒感であり、2026年の米欧関係は、発言の余波を抱えたまま次の局面に進みそうです。
Reference(s):
EU outrage grows following Trump's military threats, dismissal of NATO
cgtn.com








