国連トップ「力が法に勝つ」 多極化と多国間体制の再構築を訴え
2026年1月29日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は年初の記者会見で、「力の論理が法の支配に勝っている」として国際秩序の不安定化に警鐘を鳴らし、包摂的な「多極化」の加速と多国間機関の強化を訴えました。
「国際法が踏みにじられている」—危機感の中身
グテーレス氏は、世界で「力の法(law of power)が、法の力(power of law)に勝っている」と指摘しました。国際法が軽視され、協力が損なわれ、多国間機関(複数国・地域が参加する国際的な枠組み)がさまざまな方面から圧力にさらされているという認識です。
そのうえで、危うい行動、とりわけ「無謀な行動」が危険な反応を引き起こし、地政学的な分断によって増幅され、さらに「不処罰(impunity)の蔓延」によって事態が深刻化していると述べました。
会見で示されたキーワード
- 国際法の軽視:ルールが守られないこと自体が、次の行動を呼び込む
- 協力の浸食:協調より対立が優先されやすい環境
- 不処罰の拡大:十分な反応がないと「システムが不安定化する」という問題意識
「80年前の構造」に縛られた世界の問題解決
グテーレス氏は、気候、紛争、経済など幅広い課題を見渡したとき、「世界の問題解決の仕組みが清算(reckoning)を迫られている」と表現しました。現在の制度や前提、協力の習慣が「80年前の経済・権力構造」を色濃く反映しており、世界の変化に追いついていないという見方です。
解決策として同氏が強調したのは、現行システムの刷新と、特に多国間機関の強化でした。
多極化は必要、ただし「それだけでは平和を保証しない」
グテーレス氏は、世界の問題は「一つの力がすべてを決める」形でも、「二つの力が世界を競合する勢力圏に切り分ける」形でも解決しないと述べました。その代わりに、意図的かつ決意をもって多極化を加速することが重要だとし、望ましい多極化の条件として「ネットワーク型」「包摂性(最初から取り残しを生まない設計)」「パートナーシップによる均衡」を挙げました。
同時に、多極化は万能ではなく、それ自体が安定や平和を担保するわけではないとも指摘。正当性が「共通の責任」と「共有された価値」に根ざした、強い多国間機関が必要だと述べています。
「構造は古びても、価値は古びない」—国連憲章への回帰
会見の終盤、グテーレス氏は「構造は時代遅れでも、価値はそうではない」と語り、国連憲章に刻まれた価値こそが持続的な平和と正義の前提条件だと強調しました。困難があっても国連は共有された価値に命を吹き込み、「あきらめない」と述べ、混迷の時代において平和、正義、責任、進歩につながる具体的で前向きな反応を生む行動を選び続ける決意を示しました。
いま、この発言が読まれる理由
「危うい行動」と「十分でない反応」が連鎖すると、ルールが効きにくい状態が常態化し、疑念が広がり、対立がエスカレートしやすくなります。グテーレス氏の言葉は、こうした連鎖を断ち切るには、力学の変化(多極化)を受け止めつつ、同時に共通ルールを支える場(多国間機関)を鍛え直す必要がある、という問題提起として読めます。
Reference(s):
cgtn.com







