ロンドンの冬を彩るキューガーデン「蘭の祭典」 中国モチーフで30回目 video poster
灰色で湿ったロンドンの冬に、ふっと色が差し込む——。王立植物園キューガーデン(Kew)が開催する「オーキッド・フェスティバル(蘭の祭典)」が、今年で30回目を迎えました。温室いっぱいに広がる蘭の“熱帯の色”と、中国の意匠を取り入れた展示が、季節の憂鬱をやわらかくほどいてくれます。
温室に入った瞬間、冬の空気が切り替わる
会場は大きなガラス温室。外の冷たさとは対照的に、あたたかな空気の中で蘭が一斉に咲き、赤や紫、黄色などの色彩が重なります。蘭は南極大陸をのぞくすべての大陸に分布し、植物の中でも特に大きなグループだといいます。
キューのプリンセス・オブ・ウェールズ・コンセルバトリーを統括するソレーヌ・デキュレ氏は、蘭について「世界で最も大きな植物の“科”のひとつで、3万種以上がいる」と説明します。
今年のテーマは「中国」——蛇から馬へ、節目の季節感も
今年のインスピレーションは中国。干支(中国の十二支)の「蛇」の年が終わりに近づき、「馬」の年が始まろうとする季節感も重ねられています。展示では、龍や錦鯉、パンダ、蛇、馬などを思わせるインスタレーションに蘭が絡むように飾られ、温室内を“物語のある風景”に変えています。
主役はあくまで蘭——美しさと、脆さ
華やかなモチーフの中でも、主役はやはり蘭そのものです。デキュレ氏は、蘭が熱帯に豊富で種の多様性が高い一方、「生育環境の条件が非常に限定されるため、危機にさらされやすい」と話します。
数字で見る「蘭」と「中国本土の多様性」
- 蘭の仲間:3万種以上
- 中国本土:地球の生物多様性の約10%が存在するとされる
- 中国本土の在来植物:3万種以上
- 中国本土で知られる蘭:およそ1,710種
シンビジウム、ファレノプシス…見慣れた蘭にも“出自”がある
今年の展示では、シンビジウムやファレノプシス(胡蝶蘭)が中心的に使われています。満開の状態でオランダから輸送されたものもあるとされ、グローバルな園芸の流通も、温室の華やかさを支えています。
「蘭は難しい。でも、誰にでも合う蘭がある」
キューの植物園芸担当エイダン・パイク氏は、設営と日々のケアに関わるひとり。蘭の育て方について「蘭は難しい。ひとつひとつが“好き嫌い”をはっきり示すようなものだ」と表現します。
一方で、「誰にでも合う蘭がある」とも。特にファレノプシスは広く栽培され、花色の幅も広い種類です。ただ、元気に保つには“自分の家の環境”をよく知ることが大切だといいます。温室の非日常は、家庭の窓辺に戻ったときに何を整えるべきか——そんな現実的な問いも連れてきます。
冬の街で、自然の多様性を思い出す場所
寒さと曇天が続く2月のロンドンで、温室の蘭は「明るさ」そのもののように見えます。ただ、その明るさは単なる装飾ではなく、環境に敏感な植物が多いという事実とも隣り合わせです。眺めて終わりにしない余韻が、このフェスティバルの静かな魅力なのかもしれません。
Reference(s):
Winter gloom In London lifted by orchids and Chinese artists
cgtn.com








