欧州で洪水と寒波が同時進行:嵐と極渦の乱れで被害拡大(2026年冬)
2026年に入ってからの数週間、ヨーロッパでは南部を暴風雨と洪水が襲う一方で、中・北部は厳しい寒波に包まれ、死者や避難者が出るなど混乱が広がっています。同じ「今冬」の中で、雨と凍結が同時に進む“分断型”の異常気象が、交通・物流・生活インフラを揺さぶっています。
南欧:大西洋の暴風雨が洪水と土砂災害を引き起こす
南欧では、強い大西洋の嵐が立て続けに到来し、各地で浸水や停電、交通の乱れが続いています。
ポルトガル:嵐「Kristin」「Leonardo」で死者14人、支援は最大25億ユーロ
ポルトガルでは、気象当局が「Kristin」「Leonardo」と名付けた暴風雨の影響で、少なくとも14人が死亡し、負傷者や住まいを追われた人も出ています。特に中部を中心に、洪水、地滑り(地盤が崩れる現象)、停電、交通網の寸断などが報告されました。
政府は、被害を受けた家計・企業・自治体を対象に、最大25億ユーロ(約29.5億ドル)規模の支援策を発表しています。
スペイン:南部で3,000〜5,000人が避難、鉄道も広範に影響
スペインでも嵐「Leonardo」がもたらした豪雨により、南部で3,000〜5,000人が避難を余儀なくされました。アンダルシアやエストレマドゥーラの一部では河川の増水・氾濫が発生し、休校や交通障害が相次ぎ、鉄道は多くの路線で運休となりました。
なぜ続いたのか:弱まって“ずれた”アゾレス高気圧
ポルトガル海洋大気研究所(IPMA)によると、今回の極端な荒天は、大西洋の低気圧が短期間に連続して通過したことに加え、冬の嵐からポルトガルを守る役割を果たすことが多いアゾレス高気圧が例年より弱く、位置もずれていたことが背景にあるとされています。
IPMAの気象学者アンジェラ・ロウレンソ氏は、こうした状況が「短時間でも非常に破壊的な極端な強風」を生みうると指摘しています。リスボン大学の気候科学者ペドロ・マトス・ソアレス氏も、今冬のような“嵐の連続”は頻繁ではないものの、ポルトガルが亜熱帯と中緯度のはざまにある気候条件の中で、前例がないわけではないと述べています。
中・北欧:凍結、降雪、着氷で交通・生活が麻痺
一方、ヨーロッパ中部から北部の広い範囲では、厳しい冷え込みと大雪、凍雨(雨が地表で凍りつく現象)が生活インフラに影響しました。
- ドイツ:北東部で路面凍結による交通事故が多発。ベルリン周辺の高速道路で一時通行止めとなった区間もあり、負傷者が出たほか、ブランデンブルク州で高齢女性が衝突事故で死亡。公共交通の運休や休校、ベルリン〜ハノーファー間の鉄道運行にも影響が出ました。
- ルーマニア:寒波・降雪・凍雨に関する「赤」警報が出され、気温はマイナス15℃、積雪は15cmに達したとされています。
- バルト沿岸(エストニア、ラトビア):近年でも特に厳しい冬に。エストニアでは一部の島で「10年で最悪級」の結氷状態となり、フェリーが止まって住民がホバークラフトや全地形対応車に頼る場面も。ラトビアではこの週末、南東部ダウガフピルスの観測点でマイナス32℃を記録しました。
鍵は上空:世界気象機関が示した「成層圏突然昇温」と極渦の弱まり
世界気象機関(WMO)は、北極上空で起きた「成層圏突然昇温」(成層圏の気温が急上昇する現象)が、極渦(ポーラーボルテックス)の大幅な弱体化につながり、北ヨーロッパや北米へ寒気が流れ込みやすい状況を作ったとしています。
極渦とは、冬に強まりやすい、北極周辺の上空にある大規模な低気圧帯(冷たい空気の渦)です。通常は寒気を北側に“閉じ込める壁”のように働きますが、成層圏突然昇温などで弱まると不安定になり、寒気が中緯度へ南下しやすくなると説明されています。
「豪雨」と「凍結」が同時に起きると、何が難しくなるのか
今回のように、同じ季節に地域ごとに極端な現象が重なると、行政・企業・家庭は複数のリスクを並行して扱うことになります。たとえば次のような点です。
- 交通の分断が連鎖する:洪水による線路・道路の遮断と、凍結による事故多発が同時に起きると、迂回も難しくなります。
- 停電・燃料・物資の確保が複雑化:南部の浸水と北部の結氷で、復旧に必要な人員や資機材の配置が読みづらくなります。
- “短時間の極端”が被害を大きくする:強風や凍雨は短い時間でも、倒木・着氷・転倒事故などを増やしやすいとされます。
ヨーロッパのこの冬は、空の上(成層圏)から地上(洪水・凍結)まで、複数の要因が重なって表面化したかたちです。今後、荒天と寒波のどちらが次に強まるのかだけでなく、「同時多発の分断」にどう備えるかが問われています。
Reference(s):
cgtn.com








