イランの弾道ミサイル能力とは?射程・主力ミサイル・迎撃の限界を整理
米国との協議が続く中で、イランが「弾道ミサイル計画は交渉のレッドライン(譲れない一線)」と明確にしたことが、あらためて注目を集めています。ここでは、イランの弾道ミサイル能力について、射程、代表的なミサイル、配備の特徴、迎撃の現実までを、断片情報から整理します。
交渉の焦点に:オマーンでの協議後、イランが「レッドライン」を強調
先週金曜日にオマーンで行われた米国との交渉の第1ラウンド終了後、イランは弾道ミサイル計画が交渉における「レッドライン」だと警告しました。長年の米国の制裁、イスラエルからの継続的な軍事的脅威、そして国内の政治・経済要因が重なり、イランはミサイル能力を防衛戦略の中核で「交渉不可」と位置づけてきた、という文脈があります。
そもそも弾道ミサイルとは(基本の確認)
弾道ミサイルは、ロケット推進で上昇する初期段階では誘導されますが、その後は重力に沿って落下軌道(弾道)をとりながら飛翔し、弾頭を目標へ運ぶ兵器です。弾頭は通常弾に限らず、生物・化学、さらには核関連の搭載が「可能性として」議論されることもあります。西側諸国は、イランの弾道ミサイル戦力を中東の安定に対する通常戦力上の脅威であり、仮に核兵器が開発されれば運搬手段にもなり得ると見ています。一方、イランは核爆弾開発の意図を否定しています。
イランの「規模」と「射程」:2,000kmが目安、ただし資料で幅も
米国の国家情報長官室(ODNI)によれば、イランは中東で最大の弾道ミサイル備蓄を保有するとされています。イラン当局者は、ミサイル射程を自国としては2,000kmに「自主的に制限」しているとしてきました。過去には「イスラエルまでをカバーする距離で、防衛上は十分」という趣旨の説明もなされています。
主なミサイル名と射程(断片情報の整理)
シンクタンクなどの整理として、イスラエルに到達し得る長射程ミサイルとして、次の名称が挙げられています。
- Sejil:射程2,000km(別資料では2,500kmとも)
- Emad:射程1,700km
- Ghadr:射程2,000km
- Shahab-3:射程1,300km(別資料では800〜1,000kmとも)
- Khorramshahr:射程2,000km
- Hoveyzeh:射程1,350km
また、イランの準公式メディアISNAは2025年4月、イスラエルに到達し得るとする9種のミサイルを図解で紹介したとされています。そこではSejilについて「速度は時速17,000km超」「射程2,500km」と説明され、Kheibar(射程2,000km)やHaj Qasem(射程1,400km)も含まれていました。
さらに、Arms Control Associationの整理としては、Shahab-1(推定射程300km)、Zolfaghar(700km)、Shahab-3(800〜1,000km)、Emad-1(開発中・最大2,000km)、Sejilの開発中モデル(想定1,500〜2,500km)といった記載もあります。
「どこにあるのか」:テヘラン周辺と地下施設という地理
ミサイル関連施設の多くは首都テヘランとその周辺にあるとされます。また、地下の「ミサイル都市」は少なくとも5カ所が知られており、ケルマーンシャー州、セムナーン州、さらに湾岸地域付近を含む複数の州に分布するとされています。地上配備だけでなく地下施設が語られる点は、抑止や生存性(攻撃を受けても戦力が残る可能性)という観点で、交渉上の重みを増やしやすい要素です。
迎撃の現実:イスラエルの多層防空でも「100%」は難しい
イスラエルは、Iron Dome(短距離)、David's Sling(中距離)、Arrowシリーズ(長距離)という三層のミサイル防衛システムを持つとされます。それでも、2025年の衝突では、イランが弾道ミサイルの斉射(サルボ)を行い、相当数が防空網を突破したと伝えられています。結果として死者が出て、同国の中部・北部で多数の建物や集合住宅が損壊したとされています。
Institute for the Study of WarとAEI Critical Threats Projectによる分析として、イスラエルは衝突中にイランのミサイル発射機の「約3分の1を破壊した可能性」がある一方で、イランのミサイルを100%迎撃することは困難だと示唆されています。
中国メディアグループの取材に対し、軍事評論家の魏東旭氏は「イランのミサイル能力は米国とイスラエルに対する有効な抑止となり得る一方、米国との交渉における重要な交渉カードにもなる」と述べました。さらに魏氏は、イスラエル側が迎撃システムの限界を踏まえて(1)自前の防空能力増強と米国支援の取り付け(2)米国に対し交渉でより厳しい条件提示を促す――という二つの対応を取っている、と指摘しています。
この先の交渉はどう動く?「安全保障の柱」と「交渉条件」のせめぎ合い
分析としては、イランがミサイル能力を防衛戦略の中核とみなす現状では、この問題で後退や妥協をしない可能性が高い、という見方が示されています。逆に、米国側が交渉でミサイル能力の制限を強く求め続ける場合、協議の決裂や不確実性の拡大につながり得る、という指摘もあります。
ポイントを30秒で
- イランは弾道ミサイルを「交渉不可のレッドライン」と位置づけ
- 射程は2,000kmを軸に、資料によって2,500km級の言及もある
- テヘラン周辺の施設に加え、複数州の地下拠点が語られている
- 2025年の衝突では、多層防空でも突破が起きたとされる
Reference(s):
cgtn.com








