グリーンランド軍事化なら対抗措置 ロシア外相、NATO新北極ミッションに警告
北極圏の安全保障をめぐる空気が、また一段と張りつめています。2026年2月11日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は「グリーンランドが軍事化され、ロシアを標的にする能力が築かれるなら、軍事的対応を含む十分な対抗措置を取る」と述べました。ちょうど同じ日に、NATOが北極圏での新たな安全保障ミッションを立ち上げたことも重なり、地域の力学が揺れています。
ロシア外相の発言:焦点は「グリーンランドの軍事化」
ラブロフ外相は、ロシア連邦議会下院(国家院)での発言として、グリーンランドにロシア向けの軍事インフラが置かれる事態を強く警戒しました。具体的には、軍事行動も含む「軍事・技術的措置」に言及し、抑止のメッセージを前面に出した形です。
同日公開されたオンライン・プラットフォームでのインタビューでも、ラブロフ外相はNATOが北極圏を「対立の場」に変えようとしていると主張。さらに、NATOの軍事活動が増えるほど、ロシアが「北方航路(ノーザン・シー・ルート)」に持つ権利が挑戦を受ける、という問題意識を示しました。
NATOが開始した新ミッション「Arctic Sentry」とは
NATOは同じ2月11日、新たな複合領域(陸・海・空・宇宙・サイバーなど)ミッション「Arctic Sentry」の開始を発表しました。NATO側は、北極圏の戦略的重要性が増していること、そして厳しい自然環境の中での安定維持が必要だと説明しています。
現時点で見えている枠組み
- 当初は、加盟国がすでに行っている活動や演習を「調整」する役割が中心
- ノルウェー、デンマークによる今後の演習も調整対象に含まれる見通し
- デンマークは「大きく貢献する」と表明
- ドイツはユーロファイター4機の初期展開を表明
- ロシアと1,340kmの国境を接するフィンランドは、安全保障強化として歓迎
ただし、NATOがこの枠組みの下で「どこまで追加的な戦力を常時投入するのか」は、現段階でははっきりしません。言い換えると、新ミッションの実体が“調整の強化”にとどまるのか、“常態的なプレゼンス”へ傾くのかが、今後の焦点になりそうです。
米国の圧力と、グリーンランドをめぐる政治の温度差
今回の緊張の背景には、米国がグリーンランド(デンマーク自治領)を国家安全保障上の要所と位置づけ、強い関心を示してきた流れがあります。
報道によれば、ドナルド・トランプ米大統領はこれまで「グリーンランドが米国の安全保障に不可欠」と繰り返し述べ、島へのミサイル防衛構想「Golden Dome」を置く案にも言及してきました。最近は表現を和らげた一方、JD・バンス米副大統領は2月10日(火)、アルメニアでのインタビューで北極圏への関与に踏み込み、「同盟国の投資不足」を示唆しつつ、米国が広大な地域の防護に大きく関与するなら「相応の利益」を求めるのは自然だ、という趣旨の発言をしました。
また、ロシア側でも今月(2026年2月)に入ってから、セルゲイ・リャブコフ外務次官が、グリーンランドをめぐる動きは米国の「世界的優位」を求める姿勢から来ていると述べ、ロシアは「いかなる状況でも」自国の安全保障を確保すると強調したとされています。
「条約の見直し」と「常設プレゼンス」——次に起きそうなこと
政治・軍事の言葉が先行する一方で、制度面ではより具体的な動きも進んでいます。デンマークとグリーンランドは米国との協議を始め、1951年の米軍配備に関する条約を見直す交渉に入る見通しだとされています。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、NATO加盟国が北極圏(グリーンランド周辺を含む)で「恒久的なプレゼンス」を整える考えに支持がある、との趣旨も述べています。ここでポイントになるのは、次のような線引きです。
- 防衛協力の透明性(何を、どこまで、どの目的で置くのか)
- 抑止と挑発の境界(「守るため」の配置が、相手には「狙うため」に見える可能性)
- 北方航路の利害(安全保障と物流・資源・環境の議論が絡み合う)
北極圏は、環境の脆弱さと軍事的な重要性が同居する地域でもあります。だからこそ、言葉が強くなるほど、偶発的な誤認やエスカレーションをどう避けるか——外交と軍事運用の「すれ違い管理」が、静かに問われていきそうです。
注目点としては、NATOの「Arctic Sentry」が今後どの程度の実働を伴うのか、デンマーク・グリーンランド・米国の条約交渉がどんな着地点を探るのか、そしてロシアが示唆する「対抗措置」が具体的に何を指すのか。北極圏のニュースは、軍事だけでなく経済・航路・技術・環境が一度に動くため、断片をつなげて追う必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








