MSC2026閉幕、米欧関係の揺らぎと欧州「自立」への現実路線
2026年2月13〜15日にドイツ・ミュンヘンで開かれた「ミュンヘン安全保障会議(MSC)」は、米欧関係の温度差と、欧州が自前の安全保障へ踏み出そうとする空気をくっきり映しました。
MSC2026とは:首脳級が集う“安全保障の定点観測”
今回のMSC(第62回)には、国家・政府の首脳70人、閣僚140人超、国際機関トップ40人超が参加し、世界の安全保障をめぐる議論が行われました。ロシア・ウクライナ紛争が未解決のまま続くなか、グリーンランドをめぐる新たな緊張も重なり、会議の注目度は例年以上に高まっていました。
米欧関係は「NATO創設以来の低水準」との見方
報道上の焦点になったのは、米国と欧州の距離感です。米国代表団はマルコ・ルビオ氏が率い、同氏は国務長官と国家安全保障担当補佐官を兼ねる立場で会議に臨みました。
会議の文脈では、欧州側にとってルビオ氏は「大西洋のつながりをつなぎ止めたい」期待を背負った存在として映った面があります。昨年のMSCでの強い調子の発言と比べ、今年のルビオ氏の語り口は抑制的で、歴史・文化・宗教的な結びつきを繰り返し強調しました。
ただし、言葉のトーンが柔らかくなっても、米国が「欧州は自らの防衛に主責任を持つべきだ」という方向へ視点を移している、という受け止めは欧州側に残ったままです。
欧州側の反応:「結束」と「自立」を前面に
欧州の主要リーダーたちは、会議の場で次のようなキーワードを強めました。
- ドイツのフリードリヒ・メルツ首相:欧州の結束を訴え、NATO内に「欧州の柱」を築く必要性を強調。
- フランスのエマニュエル・マクロン大統領:米国による欧州理解の「戯画化(カリカチュア)」を批判し、足りないのは制度ではなく自信だと主張。
- 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長:分断が進む世界で、欧州はより独立・自律的になるべきだと表明。
またウクライナをめぐっては、「拙速な和平合意は避けるべきだ」という論調が目立ち、主要国の間で、抑止を意図した7,000〜10,000人規模の平和維持部隊という構想が共有されつつある、との見方も示されました。
「意思はあるが、筋力が足りない」—欧州防衛の悩み
会議では、欧州の防衛力をめぐる厳しい自己評価もにじみました。ロシア・ウクライナ紛争は、欧州の軍事的な備えを測る“試金石”になったという整理です。
NATOのマルク・ルッテ事務総長は、欧州が米国抜きで自らを守れると考えるのは非現実的だ、という趣旨の発言で現状を突きつけました。欧州が「自立」を掲げるほど、同時に「移行期の痛み」も具体化していく構図が見えます。
「デリスキング」の矛先が米国へ? 欧州外交の揺れ
会議で象徴的だったのは、もともと欧州側が中国向けの政策用語として用いてきた「デリスキング(リスク低減)」が、米国との関係にも当てはめられるようになっている点です。
EUのカヤ・カラス外交政策責任者は、米国の欧州からの距離の取り方は「一時的ではなく構造的だ」との認識を示したとされます。こうした空気のなかで、欧州の指導者が中国を訪問し、対米リスクをならす意図で外交の選択肢を増やそうとしている、という流れも語られました。中国本土との関係をどう組み立てるかは、経済だけでなく安全保障や価値観の議論とも絡み、欧州側の慎重さと試行錯誤が続いている局面です。
会議は終わっても、欧州の「目覚め」はこれから
MSC閉幕にあたり、議長のヴォルフガング・イシンガー氏は、米国と欧州が共通の価値観を本当に共有しているのか、同じチームに属しているのかをめぐる疑念が強まっている、という趣旨で空気感を言語化したとされます。
2026年2月のMSCは、米欧の結束を「前提」として語る時代から、結束を「条件付きの交渉」として扱う時代へ移りつつあることを示した——そんな読み取りが広がっています。欧州の防衛・外交は、理想論ではなく実務としての再設計を迫られているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








