新種スピノサウルス発見:ニジェールのサハラで「巨大な魚食恐竜」の姿が鮮明に
ニジェールのサハラ砂漠で、巨大肉食恐竜スピノサウルスの新種とされる化石が見つかり、2026年2月19日(木)に科学誌「Science」で研究成果が公表されました。内陸の川で大型魚を狙った可能性が示され、スピノサウルスの暮らし方をめぐる議論に新しい材料が加わっています。
どこで、何が見つかったのか
化石が見つかったのは、ニジェールのサハラ砂漠にある遠隔地ジェングエビ(Jenguebi)です。砂丘に囲まれた砂岩の露頭が点在し、化石が豊富な地域だといいます。
研究チームは2022年の調査で、都市アガデスから車列を組んで出発し、約3日間オフロードで移動。砂に埋まって立ち往生することもあった中、新種とされるスピノサウルスの頭骨3体分の一部や他の骨、さらに別の生物の化石も確認しました。
新種「スピノサウルス・ミラビリス」とは
研究チームはこの恐竜を、属名は既存のスピノサウルス(Spinosaurus)、種小名をミラビリス(mirabilis)として命名しました。mirabilisは「驚くべき」といった意味で、特徴的な頭部の構造に由来するとされています。
今回のポイントは、スピノサウルス属として確認されている種が2つ目になったことです。もう1種のスピノサウルス・アエギプティアクス(Spinosaurus aegyptiacus)は、エジプトの化石をもとに1915年に命名されています。
体のサイズと、目を引く「頭のクレスト」
- 全長:約12メートル(約40フィート)
- 体重:約5〜7トン
- 頭のクレスト(骨の突起):高さ約50センチ(約20インチ)。湾曲した剣のような形
- 背中:帆のような構造(長い背骨の突起で支えられる)
- 口先:ワニのように細長い形
研究の主導者の一人は、この恐竜を現代の水辺の鳥になぞらえ、川に入って魚を狙う「地獄のサギ(hell heron)」のようだと表現しています。
食べ物は「魚」中心? かみ合わせが示す適応
この新種は、白亜紀のアフリカ(約9500万年前)に生息し、地域の水路でシーラカンスのような大型魚を狙っていた可能性が語られています。
注目されるのは、魚食(piscivory)に特化したとされる特徴です。
- 円すい形でギザギザのない大きな歯(滑りやすい獲物向き)
- 上下の歯列がきれいに噛み合う(歯が互い違いに入り込むように合わさり、獲物を逃しにくい)
- 鼻孔の位置が後方で、口先を沈めても呼吸を保ちやすい
共同研究者は、こうした歯の噛み合わせが「魚を突き刺して逃がしにくい仕組み」になり得ると説明しています。結果として、他の恐竜を追うよりも、魚を捕る能力のほうが際立っていたという見立てです。
「海の潜水ハンター」説に、内陸発見が投げかけるもの
既知種スピノサウルス・アエギプティアクスの化石は、白亜紀当時の海岸線(テチス海沿岸)に近い、エジプトやモロッコの産地から出ています。このため一部では、スピノサウルスは外洋で泳ぎ、潜って追跡するタイプの捕食者だったのでは、という仮説も語られてきました。
一方、今回の化石は最寄りの海岸線から約500〜1000キロ離れた内陸で見つかったとされます。研究チームは、産地と体の特徴を踏まえ、スピノサウルスを「完全な水棲」ではなく、浅瀬で狩りをする半水生の捕食者として捉えるほうが合う可能性を示しました。
クレストは武器ではなく「見せるため」だった?
ミラビリスの最大の見どころである頭のクレストは、骨そのものはしっかりしている一方で、武器にするには繊細すぎるように見えるとされます。そこで研究チームは、クレストの役割をディスプレイ(誇示)寄りに考えています。
角のようにケラチン(爪や角の主成分)に覆われ、鮮やかな色を帯びていた可能性も言及されました。もしそうなら、繁殖期のアピールや、縄張り・個体識別といった行動と結びついていたのかもしれません。
「ジュラシック」以後のスピノサウルス、研究は次の段階へ
スピノサウルスは、大衆文化では映画などを通じて広く知られる存在になりました。ただ研究の現場では、今回のように新たな標本が出るたびに、住んでいた環境や泳ぎ方、狩りの方法といった基本像が細部から組み替えられていきます。
今後は、追加の骨格(四肢や胴体)の発見が進めば、歩き方や泳ぎ方、クレストの性質(成長段階や雌雄差の有無)なども、より具体的に検証されていきそうです。
Reference(s):
Fossils of a new species of huge dinosaur Spinosaurus unearthed
cgtn.com








