米最高裁がトランプ関税を違法判断 新たに一律10%関税へ、波乱再燃 video poster
米国の関税政策が、2026年2月に入り再び大きく揺れています。米連邦最高裁が「国家緊急」関連法を根拠にした広範な関税を違法と判断した直後、トランプ大統領が別の法的根拠で新たな一律10%関税を打ち出し、市場と外交の不確実性が強まりました。
最高裁は「IEEPAで広範な関税は課せない」:6対3で判断
報道によると、米連邦最高裁は2月20日(現地時間・金曜)、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いて、ほぼ全ての主要貿易相手を対象に課していた関税措置について違法とする判断を示しました。評決は6対3でした。
多数意見は、関税のような「税」に相当する広範な措置を大統領が単独で課すには、議会の明確な授権が必要だと整理。憲法上、課税権限は行政府ではなく議会にある、という原則を再確認した形です。
ロバーツ長官「明確な議会承認を示す必要」
ロバーツ首席裁判官は、こうした例外的な権限の主張には「明確な議会承認」を示す必要がある、との趣旨を示しました。判断では、政府側のIEEPA解釈が、行政権の大幅な拡張に明示的根拠を求める「重要問題(major questions)」の考え方に反するとされました。
反対意見にはトーマス、アリート、カバノーの各判事が加わりました。
トランプ氏は数時間で「新関税」へ:貿易法122条で一律10%
最高裁判断を受け、トランプ大統領はこれを強く批判。その数時間後、1974年通商法122条を根拠に、ほぼ全てを対象とする一律10%の「世界関税」を導入する新たな大統領令に署名しました。
- 発効時刻:2026年2月24日 午前0時01分(米東部標準時)
- 適用期間:150日間
- 上限:最大15%(ただし延長は議会承認が必要)
ホワイトハウスは、IEEPAに基づく追加関税については「できるだけ早く」停止し、徴収を終了する方針も示しました。
一部の地域は税率が下がる可能性も
今回の切り替えにより、既に別枠の取り決めでより高い税率が設定されていた相手にとっては、結果的に税率が下がる余地も出ます。例えばEUは別の枠組みで15%の税率が合意されていたため、新たな一律10%が適用されるなら、数字の上では引き下げになります。
歓迎と批判が交錯:企業団体は安堵、政治は対立へ
最高裁判断そのものは、企業団体や一部の海外当局者から「予見可能性を回復する」として歓迎されました。
- 全米小売業協会(NRF):サプライチェーン運営に「必要な確実性」を与える
- 靴流通・小売団体:企業と消費者にとって予見可能性の回復につながる
一方で米国内政治では火花が散っています。カリフォルニア州のニューサム知事は、無効とされた関税で徴収された分を「利息付きで返金すべきだ」と求めました。
海外では、欧州議会の通商委員会トップが「法の支配」を示すシグナルだと評価。カナダ政府も、IEEPAを根拠とした関税の正当性に疑義があるという従来の立場が裏づけられた、と受け止めたとされています。
市場は一瞬安堵、すぐ再び不透明感:焦点は「次の一手」
投資家や企業にとって厄介なのは、最高裁が一定の歯止めをかけたように見えても、政策が別ルートで素早く組み替えられる点です。シンクタンクの欧州政策センター(EPC)のアナリストは、今後の米国の関税方針を世界が見極めようとする中で、世界貿易が高い不確実性の局面に入る可能性を指摘しました。
またベッセント財務長官は、最高裁判断で大統領の交渉上のレバレッジが一部弱まる一方、より広い貿易制限(全面禁輸を含む)に関する権限は残り得る、という趣旨の見解を示しています。
返金はどうなる? 2025年に「2000億ドル超」徴収の報道
今回の判断は、既に支払われた関税が返金されるのかどうかを直接は扱わず、今後の争点として残りました。報道によると、米税関・国境警備局(CBP)は2025年1月20日から12月15日までに、関税として2000億米ドル超を徴収し、そのうち約1290億米ドルがIEEPA関連だったとされています。
さらに、ニューヨーク連銀の報告書では、2025年の関税負担の約9割が米国内の消費者や企業に転嫁された、という分析が示されたと伝えられています。
ここまでの経緯(時系列)
- 2026年4月2日:トランプ氏が、広範な輸入品に最低10%の基準関税などを発表
- 4月23日:12州が提訴(ニューヨークの米国際貿易裁判所)
- 8月29日:控訴審が政権側敗訴判断を支持
- 9月:政権が最高裁へ上告
- 2026年2月20日:最高裁がIEEPA関税を違法と判断
- 2月24日:通商法122条による一律10%関税が発効予定(150日間)
これから何が起きそうか:3つの「確認ポイント」
- 法廷闘争の第2ラウンド:通商法122条の適用をめぐる提訴、そして「返金」を求める訴訟
- 150日後の分岐:延長には議会承認が必要とされ、政治交渉の比重が増す可能性
- 企業の実務:発効日(2月24日)前後の輸入コスト、価格転嫁、在庫・調達先見直し
最高裁判断は「大統領の権限」に線を引く一方で、関税そのものが消えるわけではありません。ルールと政治、そして企業実務が同時に動く局面だからこそ、次に出てくる“根拠条文”と“期限”が、ニュースの見出し以上に効いてきそうです。
Reference(s):
Trump's new tariffs reignite volatility after emergency powers blocked
cgtn.com








