ハンガリー、EUのウクライナ向け900億ユーロ融資を阻止へ ドルジバ石油停止が火種
EUのウクライナ支援をめぐり、資金とエネルギーが一つの交渉点として絡み合っています。ハンガリーの外相は、ドルジバ(Druzhba)パイプラインによる対ハンガリー向け石油輸送が再開されるまで、EUの総額900億ユーロ(約1060億ドル)のウクライナ向け融資を阻止すると表明しました。
何が起きているのか:融資と石油輸送が同じテーブルに
今回の焦点は、EUが検討するウクライナ向けの巨額融資と、ロシア産原油を運ぶドルジバ・パイプラインの輸送停止です。ハンガリーとスロバキアは、EU域内でドルジバ経由のロシア産原油を使う精製所が残る数少ない国で、供給が滞ると国内の燃料供給に直結します。
ドルジバの停止:1月27日以降、供給確保が急務に
報道によると、ドルジバの流量は2026年1月27日に止まりました。ウクライナ側は、ロシアのドローン攻撃でパイプライン関連インフラが損傷したことが原因だと説明しています。
一方、ハンガリーとスロバキアは、輸送再開が遅れていることについて政治的な理由があるとして、ウクライナ側を批判しているとされます。
ハンガリーの対応:戦略備蓄の放出と「融資阻止」のカード
ハンガリーのシーヤールトー外相は、ドルジバ経由の石油輸送が止められていることはEU・ウクライナ連合協定に反するとの立場を示し、融資を阻止する方針を明確にしました。
国内対応としては、ハンガリー政府が政令で原油の戦略備蓄から約180万バレルを放出すると決定。政令によれば、石油会社MOLは放出分への優先アクセスを得て、利用期間は4月15日まで、返却期限は8月24日とされています。
数字で見る備え
- ハンガリー:戦略備蓄から約180万バレル放出
- 1月末時点の備蓄:原油・石油製品で96日分(公表データ)
「備蓄放出は不要」とする声:クロアチアJANAFの説明
ただし、供給網のもう一つの経路であるクロアチアのパイプライン運営会社JANAFは、現時点で備蓄放出の必要性に疑問を呈しています。JANAFは、MOLグループ向けに非ロシア産原油がすでにパイプラインで相当量輸送されており、さらに追加のタンカー3隻(同じく非ロシア産)がクロアチアのオミシャリ(Omisalj)ターミナルに向かっていると説明しました。
JANAFは「輸送は継続しており遅延もない」として、備蓄に手を付けるほどの逼迫ではないという見方を示しています。
精製・供給の現場:MOLは調達先を多様化、ウクライナ向け軽油を停止
MOLは供給確保のため、サウジアラビア、ノルウェー、カザフスタン、リビア、そしてロシア産の原油を積んだタンカーを手配し、ハンガリーおよびスロバキアの製油所向けに調達を進めているとされます。また今週、ウクライナ向けの軽油(ディーゼル)供給を停止したとも伝えられました。
タンカーの第1便は2026年3月上旬にオミシャリ港へ到着する見通しで、その後、原油が製油所に届くまでさらに5〜12日かかる見込みだとしています。時間の読みが重要になる局面です。
スロバキアも「石油緊急事態」:放出は約182.5万バレル
供給不安はハンガリーにとどまりません。スロバキア政府も石油の緊急事態を宣言し、MOL傘下の製油所スロヴナフト(Slovnaft)の要請を受け、約182.5万バレルの放出を約束したと報じられています。
今後の焦点:インフラの不確実性が「資金協力」の温度も変える
今回の出来事は、パイプライン停止という物理的なボトルネックが、EUの金融支援という政治的な意思決定にも影響し得ることを示しています。3月上旬に予定される代替調達の到着、そしてドルジバの再開時期が、融資協議の行方とともに注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








