米最高裁が「トランプ関税」を差し止め、各国は安堵と警戒—直後に一律10%案も
米最高裁がトランプ大統領の包括的な「世界向け関税」を違法と判断したことで、貿易相手国はひとまず安堵しつつも、直後に示された「全輸入品に一律10%」という新たな構想に身構えています。2026年2月現在、世界最大の経済圏との取引条件が揺れ、企業の判断にも影響が広がりそうです。
何が起きた?—最高裁判断と、直後の「10%関税」構想
報道によると、米連邦最高裁は、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動した大規模な関税について、「同法では関税を課す権限が認められない」として差し止めました。
一方で判断が伝えられた後、トランプ大統領は別の権限を根拠に、米国へのすべての輸入品に10%の関税を課す意向を示したとされています。
影響が及ぶ範囲:止まるもの/残るもの
- 今回の判断で影響:IEEPAを根拠にした「包括的な世界向け関税」
- 今回の判断の対象外:鉄鋼・アルミニウムなどの分野別(セクター別)関税や、他の物品にかかる個別の措置
つまり、差し止めで終わりではなく、関税の“手段”が変わる可能性が残る、という受け止めが広がっています。
各国・地域の反応:歓迎と慎重姿勢が同居
各政府は、米国側の次の一手(新たな10%関税の具体像を含む)を見極めながら、通商・投資・サプライチェーンの影響を計算し直している状況です。
欧州連合(EU):まずは精査、「安定と予見可能性」を重視
EUの通商担当報道官オロフ・ギル氏は、EUが判断内容を綿密に分析していると述べました。そのうえで、米政権と緊密に連絡を取り、対応の「明確化」を求める姿勢を示し、貿易には「安定」と「予見可能性」が必要だと強調しました。
ドイツ:政府は米側に確認、産業界は「権力分立」に言及
ドイツ政府は、次のステップを確認するため米政府と「緊密に連絡している」としています。
一方、産業団体BDIのウォルフガング・ニーダーマルク氏は、判断を米国の権力分立が機能している証左だとして前向きに評価しました。
英国:既存の合意の継続に期待、影響の把握を急ぐ
英国政府は、米国との「特別な貿易上の立場」が継続すると見込むと表明。報道によれば、両国は昨年5月に合意し、英国の鉄鋼・アルミ製品への関税が引き上げられたほか、英国車の関税は27.5%から10%へ引き下げられました。
英国政府は、今回の判断が英国および世界の関税にどう影響するか、米政権と協議して理解を深めるとしています。
フランス:マクロン大統領「法の支配とカウンターウェイト」
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、今回の判断について、民主主義における権力への「抑制」や法の支配の重要性に触れ、「最高裁があり、法の支配があるのは悪くない」と述べました。
さらに、トランプ大統領が示した新たな10%の世界向け関税の帰結を見極め、必要に応じて対応するとしつつ、農産品、ラグジュアリー、ファッション、航空関連などの輸出継続の意思にも言及。最も公正なルールは「相互主義」であり、「一方的な決定に従わされるべきではない」と述べたとされています。フランスの経済相ローラン・レスキュール氏は、関税は「少なくとも議論の余地がある」との見方を示しました。
カナダ:「不当だった」立場を補強、ただし痛手の関税は残る
カナダのドミニク・ルブラン国際貿易相は、判断が、カナダ側の「(関税は)常に不当だった」との立場を補強すると述べました。
ただし、カナダで痛手が大きいとされる鉄鋼・アルミ・自動車などへの分野別関税は、引き続き有効だとも指摘しています。カナダ商工会議所も、今回の判断を「米通商政策のリセット」と見るのは危険だとし、より直接的で広範な圧力手段が登場し得る、と警戒を示しました。
メキシコ:輸出の8割が米国向け、10%案の影響を精査
輸出の約80%を米国に依存するとされるメキシコは、最高裁判断後に示された一律10%関税が自国へ与える影響を調査中だと表明。マルセロ・エブラルド経済相は、米国側がどの措置を取るのかを見て、影響を判断すると述べました。
「ルールの確認」と「次の手段」—市場が見ているポイント
今回の流れは、関税の是非だけでなく、どの権限・どの手続きで課されるのかという制度面にも焦点を当てました。各国が強調した「安定」「予見可能性」は、企業の現場では次のような論点に置き換えられます。
- 価格:一律関税は幅広い品目に波及し、値付けや在庫計画に直撃しやすい
- 契約:長期契約・見積もりに「関税条項」をどう織り込むか
- 供給網:調達先や生産地の分散を進めるのか、米国市場を優先するのか
- 政策の読み:裁判所判断で止まっても、別制度で復活する可能性がある
就任から約1年が経つとされるトランプ大統領の通商政策は、行政権限の使い方そのものが注目点になっています。最高裁判断で一度ブレーキがかかった一方、次のカードとして「別権限による一律10%」が示されたことで、各国は“歓迎”と“警戒”の間で、落ち着いて計算をやり直しているように見えます。
Reference(s):
Global leaders react after US supreme court strikes Trump's tariffs
cgtn.com








