トランプ氏、世界一律関税を15%に引き上げ 最高裁判断の翌日に再加速
2026年2月22日、米国のドナルド・トランプ大統領が、最近導入した「世界一律関税」を10%から15%へ即時引き上げると発表しました。最高裁が前日の21日に、別の関税枠組みを違法と判断した直後の動きで、米国の通商政策は「次の手」に焦点が移っています。
何が起きたのか:10%→15%へ、発表はSNSで
トランプ氏は22日までにSNS投稿で、世界一律関税を15%に引き上げ、直ちに発効させると説明しました。各国が長年米国を「搾取してきた」との主張を繰り返し、今後数カ月で「合法的に可能な」追加関税も導入する考えを示しています。
背景:最高裁が「前の関税」を違法と判断、その数時間後に新枠組み
今回の動きの前提にあるのが、21日の米連邦最高裁による判断です。最高裁は6対3で、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて課していたトランプ氏の従来の関税措置を違法としました。
その後まもなく、トランプ氏は大統領令で「一律10%」の関税を導入し、さらにそれを15%へ引き上げた形です。違法とされたルートを避けつつ、関税政策自体は継続・強化するメッセージにも見えます。
焦点①:関税「返金」をめぐる訴訟が拡大
最高裁判断を受け、法的・財政的な波紋も広がっています。報道によれば、コストコなど多数の企業が、違法とされたIEEPA関税で支払った分の返金を求めて提訴し、米通商裁判所には1,000件を超える案件が持ち込まれています。民主党の一部議員からも返金を求める声が出ています。
返金額の規模感:1300億ドル→1750億ドル超という推計も
- 米税関・国境警備局(CBP)のデータ(昨年12月公表):IEEPA関税で約1300億ドルの歳入
- ペンシルベニア大学の推計:総額が1750億ドルを超える可能性
一方、実際にどこまで返金されるのか、どの範囲の支払いが対象になるのかは不透明です。専門家は、最終的な判断は米国際貿易裁判所(CIT)が担い、手続きが長期化する可能性があるとしています。
「誰が負担したのか」問題:企業と消費者にしわ寄せ
さらに難しいのは、関税コストの帰着(誰が実際に負担したか)です。ニューヨーク連邦準備銀行の研究では、関税関連コストの約9割が米国内(企業・消費者)で負担されたとされています。
ただ、一般の消費者が「自分はいくら関税分を払ったのか」を立証するのは現実的に困難です。中小企業もシェア維持のためにコストの一部を飲み込んだケースがあり、精密な算定は簡単ではありません。財務当局側は、大規模返金が財政を圧迫し得る点も示唆してきました。
焦点②:トランプ氏の「関税ツールキット」—次はどの法律を使う?
IEEPAルートが最高裁に否定された一方で、トランプ氏の選択肢は複数残っています。今回使ったとされるのは、1974年通商法の「122条」です。
主な選択肢(記事中で言及されたもの)
- 通商法122条(1974年):国際収支問題への一時的対応として使える仕組み。全ての国・地域に非差別で適用しやすい一方、原則150日が上限で、延長には議会の承認が必要とされます。
- 通商拡大法232条(1962年):国家安全保障を理由に関税を課す枠組み。鉄鋼・アルミ・自動車などで使われた経緯があります。
- 通商法201条・301条(1974年):「不公正」な貿易慣行(知的財産侵害、強制的な技術移転、差別的措置など)への調査を経て関税を課す仕組み。対象を絞った措置に移りやすいとされます。
- スムート・ホーリー法338条(1930年):差別的貿易慣行があるとされる相手に最大50%の関税を可能にする、強い措置として言及されています。
HSBCのアナリストは、122条を「つなぎ」として使いながら301条などの調査を進め、のちにより標的型の関税へ移行するシナリオもあり得るとしています。つまり最高裁判断は「一つの道」を狭めたに過ぎず、政策全体が止まったわけではない、という見方が広がっています。
焦点③:各国・地域の反応—交渉と対抗措置の綱引きへ
関税引き上げは主要な貿易相手に素早く波及しました。現時点で表に出ている反応は、対話を探りつつも、必要なら対抗措置も視野に入れるというトーンです。
ドイツ:首相が訪米へ
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、関税は最終的に全ての当事者に痛みをもたらし、とりわけ消費者への影響が大きいと指摘。ワシントンを訪れ、トランプ氏と直接協議する考えを示しました。EU加盟国とも連携し、統一的な対応を調整しています。
フランス/EU:報復の「手段」はある
フランスのニコラ・フェラッチ対外貿易担当閣外大臣は、EUのパートナーや欧州委員会と協議中だとしつつ、輸出管理、サービス分野の関税、EU調達からの排除、900億ユーロ超相当の米国製品を対象とする停止中パッケージなど、対抗手段があると述べています。
カナダ:最高裁判断は歓迎、ただしUSMCA見直しが控える
カナダは最高裁判断を歓迎しながらも、鉄鋼・アルミ・自動車などの関税が残っている点を課題として挙げました。さらに、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しが7月1日に予定されており、米通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表との協議を見据えています。ワシントンが三国枠組みの更新より二国間合意を好む可能性も示唆されています。
韓国:緊急会合、輸出環境の維持を優先
韓国大統領府は緊急会合を開き、新たな米関税の影響を評価。産業界と連携しながら動向を注視し、米国との協議を継続して輸出条件を守る姿勢を示しています。
ここから何を見るべきか:3つのチェックポイント
- 15%関税の運用:即時発効の影響が、物価・企業コスト・サプライチェーンにどう波及するか。
- 返金訴訟の行方:誰がどの範囲で救済されるのか。判断と手続きが長期化する可能性。
- 次の法的根拠:122条の150日という時間制約の中で、232条・301条などへどう移るのか。
最高裁判断で「歯止め」がかかったように見えた米国の関税政策は、別ルートで再び動き出しました。いまは、法律・財政・外交が同時に揺れる局面です。関税の数字だけでなく、どのルールで、どの範囲に、どれくらいの期間かけるのか——その設計図の変化が、今後の市場と国際関係を左右しそうです。
Reference(s):
Trump raises global tariff to 15%, what's next in his trade arsenal?
cgtn.com








