ハーバード大の多色顕微鏡、細胞の形とタンパク質位置を同時に可視化
細胞の「細かな形」と「どのタンパク質がどこにいるか」を同じ画像の中で同時に捉える——。この“二者択一”を越える多色顕微鏡技術を、ハーバード大学の研究チームが開発しました。ナノメートル(nm)スケールの解像度で、細胞構造と分子の位置情報を一度に観察できる点が、いま注目されています。
何が新しいのか:構造と分子情報を「同じ工程」で
生物の微細観察では長らく、目的に応じて手法を使い分ける必要がありました。
- 細胞の超微細な構造を見るなら、一般に高解像度の電子顕微鏡が得意
- 特定の分子(タンパク質など)の場所を知りたいなら、一般に蛍光観察が得意
ところが従来は、構造を精密に見るほど「分子の識別」が難しくなり、分子を色で見分けようとすると「構造の解像度」に制約が出やすい、というギャップがありました。今回の技術は、単一の電子ビームで構造情報と分子情報を同時取得し、二重の撮像ワークフローを不要にしたとされています。
仕組みのポイント:電子ビームで光る専用プローブ
研究チームは、標的となるタンパク質に結合する専用プローブを開発しました。このプローブは電子ビームで刺激されると、カソードルミネッセンス(電子線で誘起される発光)として可視光を放つ仕組みです。
複数の色(マルチカラー)を使い分けられることで、細胞の微細構造を捉えながら、同時に「どのタンパク質が、どの場所に集まっているか」も重ねて読み取れる可能性が広がります。
どこまで実証された?:哺乳類細胞から、感染したショウジョウバエまで
この手法は、哺乳類細胞や生体組織で検証され、例として真菌に感染した果実バエ(ショウジョウバエ)の試料でも確かめられたといいます。細胞内のシグナル伝達の追跡や、分子クラスター(分子の集まり方)の組織化の理解など、観察対象の幅が広がることが期待されます。
発表の場:先週末の国際学会で報告
研究は、先週土曜日(2026年2月21日)からサンフランシスコで開催された第70回バイオフィジカル・ソサエティ年次会合で発表されたとされています。基礎研究の現場で、画像から読み取れる情報量を増やす試みとして関心を集めました。
今後の焦点:2次元から3次元へ、クライオ電子顕微鏡で拡張予定
現時点では2次元イメージングに限られるのが制約です。研究チームは今後、クライオ電子顕微鏡(試料を凍結状態で観察する手法)を用いて、3次元の細胞再構成へ技術を拡張する計画だとしています。
細胞の「形」と「分子の配置」を同時に読めるようになると、これまで別々の実験で推測していた現象が、同じ視野の中でつながって見えてくるかもしれません。次に注目したいのは、3D化によって“細胞の中の地図”がどこまで精密に描けるようになるのか、そして多色化がどこまで進むのか、という点です。
Reference(s):
New microscopy technique captures simultaneous cell detail and color
cgtn.com








