UNESCOが警鐘:海の炭素吸収の「空白」が気候予測を揺らす
気候変動の将来予測を支えるはずの「海の炭素吸収(オーシャン・カーボンシンク)」に、見落とせない“空白”がある――。ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)は今週月曜日(2026年2月23日)に公表した報告書で、海が二酸化炭素(CO2)をどれだけ吸収し、どのように蓄えるのかについて理解の不足が残り、気候予測や政策判断に誤差を生み得ると警告しました。
何が問題視されたのか:吸収量の推計に「10〜20%」のズレ
報告書によると、海洋による炭素吸収量を見積もる科学モデルは、現実の観測値と比べて世界全体で10〜20%程度ずれる可能性があるとされています。地域によっては、ズレがさらに大きくなることもあるといいます。
ズレの背景にある2つの不足
- 長期の観測データが限られている(継続観測の密度・期間が足りない)
- 重要な海洋プロセスが、気候変化にどう反応するかの理解が不十分(温暖化や海洋環境の変化に伴う挙動の不確実性)
なぜ今重要か:政策が「海の将来像」を十分に織り込めていない
海は大気中のCO2を吸収し、温暖化の進行をある程度ゆるめてきたと考えられています。報告書の著者らは、こうした海の吸収能力が将来弱まる場合、より多くのCO2が大気に残り、地球温暖化が加速しかねないと指摘します。
その場合、各国の排出削減目標や気候計画は、前提となる“吸収されるはずのCO2量”が変わることで、見直しの必要が生じる可能性があります。つまり、政策が「海が今後どう振る舞うか」という不確実性を十分に織り込めていないと、計画の精度そのものが揺らぐ、という問題意識です。
「海ベースの介入」やCO2除去は、強い根拠が前提
報告書は、炭素除去(CO2を取り除く取り組み)や、海洋を活用した気候対策を検討する際、より強固な科学的根拠に基づく必要があると強調しています。海の炭素循環の理解が不十分なまま対策を急げば、期待した効果の見込み違いや、想定外の影響評価が難しくなるためです。
今後の道筋:国際協力、監視網の拡充、モデル更新
報告書は不確実性の整理にとどまらず、海洋炭素科学を気候政策により直結させるためのロードマップも示しました。柱は次の3点です。
- 国際協力の強化(データ共有や共同研究の枠組みを拡げる)
- 海洋炭素モニタリングの拡充(観測の空白を埋め、長期データを厚くする)
- 気候モデルの更新(観測と理解の進展を反映し、推計のズレを縮める)
読み解きのポイント:私たちが「確実」と思っている数字は、どこまで確実か
気候予測は単一の数字ではなく、観測・モデル・仮定の積み重ねでできています。今回の報告書が投げかけるのは、「排出量」だけでなく、それを受け止める側の海の変化を、どれだけ精密に追えているかという問いです。海の炭素吸収の理解が深まれば、将来予測の幅を狭め、対策の優先順位づけもより現実的になります。逆に言えば、空白が残るほど、政策は“幅の大きい不確実性”と同居し続けることになります。
Reference(s):
UNESCO warns gaps in ocean carbon science could skew climate forecasts
cgtn.com








