EU、メルコスール貿易協定を「暫定適用」へ 違法性判断待ちで踏み出す
EU(欧州連合)が、南米メルコスール(Mercosur)との大型貿易協定を「暫定適用」する方針を示しました。 欧州議会の同意やEU最高裁判所の判断を待つ間も、協定を動かし始める判断で、農業をめぐる反発が強いフランスなどとの綱引きが続きそうです。
何が起きた?EUが「暫定適用」を進める
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2月27日(現地時間)、ブリュッセルで、メルコスールとの貿易協定について欧州委員会が暫定適用の手続きを進めると述べました。
背景には、アルゼンチンとウルグアイが2月26日に協定を批准したことがあります。欧州委員会はこれを「良いニュース」だと評価しました。
委員長は、加盟国が欧州委員会に暫定適用を進める権限を与えていることに言及しつつ、「暫定適用は、その性質上、暫定的なもの」と整理。協定が完全に成立するには、欧州議会の同意が必要だとも強調しました。
いつ始まる?手続きの“次の2か月”が節目
欧州委員会の通商担当報道官オロフ・ギル氏によると、欧州委員会は今後、メルコスール側と正式な手続きを交わし、そのやり取りから2か月後に暫定適用が始まる見通しです。
暫定適用は、批准を終えたメルコスール加盟国に対して適用されるとされ、欧州委員会は、未批准のブラジルとパラグアイも「近く」批准するとの見方を示しています。
なぜ揉める?フランスが警戒する「農業」への影響
この協定には、フランスが強く反対してきました。特に農業分野で、ブラジルや周辺国からのより安価な品により国内農家が不利になるのではないか、という懸念が根強いとされています。
発表直後、フランスのアニー・ジュヌヴァール農相は欧州委員会の決定を「遺憾」とし、EUの制度運営や欧州の制度の精神にとって「非常に有害」だと述べました。フランス選出のEU議員セリーヌ・イマール氏も、農家への「軽視」だとして反発し、暫定適用が恒久化しないよう「断固として戦う」と表明しました。
一方でギル氏は、加盟国が欧州委員会に決定権を与えていると述べ、手続き面での正当性を強調しています。
協定の規模:25年越しの交渉、関税の9割超を撤廃へ
EUとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの創設4か国)による協定は、四半世紀にわたって交渉が続いてきたとされます。協定が目指すのは、世界最大級の自由貿易圏の形成で、両地域間の貿易の90%超で関税を撤廃するとされています。両地域を合わせると、世界GDPの30%、消費者は7億人超に上る、という説明も示されています。
主な品目のイメージは次の通りです。
- メルコスール→EU:農産品、鉱物など
- EU→メルコスール:機械、化学品、医薬品など(関税負担の軽減)
「司法判断」と「議会同意」— 暫定適用の先に残る焦点
この協定は今年1月に署名された後、欧州議会が数日以内にEU最高裁判所へ適法性の判断を求めたとされています。つまり、政治的な賛否だけでなく、制度面の解釈も並走する構図です。
欧州委員会は、農業分野などの不安に対して、生産者保護のための一連のセーフガード(安全弁)を承認したとして、懸念に対応している姿勢を崩していません。フォン・デア・ライエン委員長も、中小企業がより大きな市場にアクセスできるなど「数えきれない機会」をもたらすと述べました。
ただ、暫定適用は“始まり”であり、最終的には欧州議会の同意と、EU最高裁判所の判断という二つの関門が残ります。貿易のメリットと、地域社会の不安をどう同じテーブルに乗せるのか。EUの意思決定の難しさが、今回の動きに凝縮されています。
Reference(s):
EU will provisionally apply contested South America trade deal
cgtn.com








