ハメネイ師死亡でイラン移行局面へ 憲法111条と次期最高指導者選び
2026年3月初旬、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師が殺害されたとされ、イスラム共和国は歴史的な移行局面に入りました。空爆が続き地域の緊張が高まる中でも、当局は憲法手続きの発動によって「統治の継続」を前面に出しています。
いま何が起きているのか:最高指導者不在への制度対応
イランの政治は、選挙で選ばれる共和制の制度と、聖職者による監督機構が並走する「二重構造」で成り立っています。最高指導者は軍や司法、主要機関を監督する頂点の存在で、その不在は国家運営に直結します。
今回、最高指導者の死亡を受けて憲法第111条が適用され、後継者が選ばれるまでの暫定的な指導体制が動き出しました。制度上は、急激な空白を生まないための安全弁として設計された仕組みです。
イランの統治システム:選挙で選ばれる機関と、任命制の監督機関
提供された情報によれば、統治の中核には以下の要素があります。
- 最高指導者:軍、司法、主要な国家機関を監督
- 大統領:選挙で選出される行政府の中心
- 議会:選挙で選出
- 護憲評議会(Guardian Council):非選挙の監督機関
この複層的な構造が、危機時には「権限の所在がどこに集まるのか」を見えにくくする一方、制度としての連続性も支えています。
憲法111条で動く「暫定指導評議会」
憲法第111条に基づき、最高指導者の職務を暫定的に担う3人の評議会が発足しました。構成員は次のとおりです。
- マスード・ペゼシュキアン大統領
- ゴラームホセイン・モフセニ=エジェイ司法府長
- 護憲評議会メンバーのアヤトラ・アリレザ・アラフィ師
この暫定機構は、後継の最高指導者が選ばれるまで、形式上の最高指導者の機能を代行する役割を負います。
実務の重心:国家安全保障会議と革命防衛隊
一方で、進行中の紛争の影響により、実務上の重心は国家安全保障会議とイスラム革命防衛隊(IRGC)へと移っているとされています。提供情報の範囲では、それぞれの位置づけは次のように説明されています。
- 国家安全保障会議:国防・安全保障政策を定め、国家機関間の調整メカニズムとして機能
- 革命防衛隊(IRGC):弾道ミサイル部隊の管轄、地域作戦を担うコッズ部隊の指揮、情報機能の運用、他機関と連携した軍事作戦
つまり、憲法上の「代行」は暫定指導評議会が担い、危機対応の「実務」は安全保障中枢が握る――その二層が同時に走っている構図です。
次の最高指導者はどう選ばれるのか:3カ月以内の選出
憲法上、新たな最高指導者は3カ月以内に選ばれる必要があります。選出を担うのは、8年任期で選挙により選ばれる88人の聖職者組織である専門家会議(Assembly of Experts)です。
専門家会議は、最高指導者を選出するだけでなく、監督し、必要があれば解任する権限も持つとされています。移行の行方は、ここでの判断と合意形成のテンポに大きく左右されそうです。
緊張下の「結束」と「継続性」
移行期の政治を読み解く鍵として、外部からの軍事圧力が国内の空気を変える可能性も指摘されています。ドーハ大学院(Doha Institute for Graduate Studies)の国際紛争解決の准教授、イブラヒム・フレイハルト氏は、次のように述べています。
「外からの攻撃や戦争、とりわけイスラエルからのものは、人々の支持と団結を引き起こし、特定の反対派の間でも……体制との違いをいったん脇に置き、支持しようとする人が出てくる」
制度は連続性を示そうとし、同時に安全保障の現場は即応を迫られる。最高指導者の不在という衝撃の中で、どの機関がどの領域をどこまで担うのか。その線引き自体が、いま進行している「移行」の一部なのかもしれません。
Reference(s):
Iran's government: How the system operates and what comes next
cgtn.com








