ネタニヤフ首相、対イラン共同攻撃で支持拡大 国際的な懸念も
2026年2月末から続くイスラエルによる対イラン軍事作戦は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の国内支持を押し上げました。一方で、米国内の政治的議論や湾岸諸国の反発が強まり、イスラエルの外交的な立場が揺らぐリスクも目立ってきています。
国内では「結束」が先行:支持率が急上昇
報道によると、作戦は先週始まり、イランの最高指導者の死亡につながる攻撃や、核・ミサイル関連施設への打撃を含みます。これを受け、国内では「危機に際しての結束」が強まりました。
野党指導者ヤイル・ラピド氏は、ネタニヤフ氏を長年批判してきた立場でありながら、今回の作戦を「悪に対する正義の戦争」と表現し、政治的対立は脇に置く考えを示しました。
イスラエル民主主義研究所の世論調査では、ユダヤ系回答者の93%が攻撃決定を支持し、左派層でも76%が支持したとされています。
「批判の矛先」をそらす効果も:選挙年の延命材料に
ネタニヤフ氏は、非連続の任期を含め通算18年以上首相を務めていますが、汚職疑惑をめぐる訴追や、2023年10月のハマスによる攻撃をめぐる治安面の失敗への批判で、支持の目減りに直面してきました。
今回の対イラン作戦は、長年の警告だった「包囲する火の輪」という脅威認識を裏づける出来事として受け止められ、選挙年における政治的な追い風になっています。最近の世論調査では、同氏が率いるリクードが議席を伸ばしたとも伝えられました。
米国では「同盟のための参戦か」論争が再燃
一方、ワシントンでは従来の強固な政治的支持が揺らぐ兆しも出ています。米国のマルコ・ルビオ国務長官の発言をきっかけに、「イスラエルの計画した攻撃へのイラン報復を見越し、米国が先回りしたのではないか」との見方が広がり、議会内外で憶測を呼びました。
ドナルド・トランプ大統領とルビオ氏はその見方を否定し、「差し迫った脅威」への対処だったと説明しましたが、超党派の不安は収まりきっていないとされます。議会では、戦争権限(war powers)をめぐる監視強化の議論が再燃し、「米国の目的が明確か」「地域戦争への巻き込まれをどう防ぐか」が争点になっています。
「America First」層にも亀裂:支持基盤の違和感
論争はトランプ氏の支持基盤にも波及しました。海外軍事介入に否定的な「America First」運動の一部は、「ワシントンが『イスラエルの戦争』を戦っているように見える」との印象に強い反発を示したと伝えられています。保守系論者のタッカー・カールソン氏らが、この点を繰り返し問題視したことも、党内・保守層の温度差を可視化しました。
湾岸諸国の不満:2月28日の攻撃と「共有不足」
中東外交の面でも、摩擦は広がっています。ガザでの軍事作戦をめぐり民間人被害が国際的に注目される中、関係正常化を進めてきた国々を含め、地域の対イスラエル関係は複雑さを増してきました。
さらに今回、イランの報復が米国資産を標的にしたことで、湾岸諸国は神経を尖らせています。AP通信は匿名の関係者の話として、複数の湾岸諸国当局者が、2月28日の攻撃前に十分な説明がなかったことへの不満を示したと報じました。イランが多数のミサイルや無人機を投入する中で、防空能力の消耗が早いとの危機感も語られたとされています。
サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、バーレーンは対イラン攻撃を非難しており、分析者の間では「イスラエルと近い関係を保つことの損得」を改めて計算し直す可能性が指摘されています。
長期化のリスク:ホルムズ海峡と空域閉鎖が意味するもの
今回の戦争は数週間続く見通しだとされます。チャタムハウスの中東・北アフリカ計画の上級研究員ヨッシ・メケルベルグ氏は、戦闘が長引き解決が見えない場合、ホルムズ海峡や湾岸の広い空域が閉鎖される状況下で、責任は「米国、しかし主にイスラエル」に向けられ得ると論じました。
同氏はまた、今回の作戦が「イスラエルは米国の保護の下、国際法を顧みず、法的根拠を欠いた軍事的冒険を行っている」という見え方を強める、とも指摘しています(見解)。
いま何を見ておくべきか
- 軍事作戦の期間:数週間規模とされる中で、出口戦略がどこに置かれるか
- 米議会の反応:戦争権限をめぐる監督強化が、政権運営や同盟調整にどう影響するか
- 湾岸諸国の安全保障不安:防空消耗と事前共有の不足が、地域の協力枠組みにどんな余波を残すか
- ガザ情勢を含む国際世論:民間人被害への視線が、外交の余地をさらに狭めないか
国内で支持を固めるほど、国外では説明責任や同盟運用への問いが強まる——今回の動きは、その緊張関係を浮き彫りにしています。
Reference(s):
Netanyahu wins Israeli support from Iran war but diplomatic risks grow
cgtn.com








