EU首脳「原発離れは戦略的誤り」中東危機で化石燃料依存に警鐘
2026年3月11日、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員長は、欧州が民生用原子力から距離を置いてきたことを「戦略的な誤り」だったと述べました。米国・イスラエルとイランの戦闘が2週目に入るなか、中東危機が化石燃料輸入への依存という“弱点”を浮き彫りにした、という問題意識を示しています。
「信頼できる低排出電源」を手放した—委員長が強調した論点
フォン・デア・ライエン氏は、欧州が背を向けたとされる民生用原子力について、「信頼でき、手頃で、低排出の電源」だと位置づけました。そのうえで、化石燃料については「高価で変動の大きい輸入に完全に依存している」と述べ、他地域に対する構造的な不利につながるとの見方を示しました。
中東危機が突きつけた“脆弱性”
今回の発言は、パリ近郊で開かれた原子力エネルギー・サミットの冒頭で出たものです。委員長は、現在の中東情勢が、化石燃料依存が生む脆弱性を「厳しく思い出させる」と表現しました。
原子力と再生可能エネルギーを「両輪」に
委員長は、域内にある低炭素エネルギー源として「原子力と再生可能エネルギー」を挙げ、両者を組み合わせることで、次の3つを同時に支え得ると述べました。
- 独立性(エネルギー面の自立)
- 供給の安全(安定供給)
- 競争力(コストや産業面の強さ)
ただし、その実現には「正しくやれば」という条件も添え、制度設計や投資の方向づけが鍵になることをにじませました。
マクロン仏大統領も同調、「エネルギー主権」に言及
同じサミットで、フランスのマクロン大統領も、民生用原子力が「エネルギー主権」を支えると強調しました。原子力は、独立性(主権)と脱炭素(カーボンニュートラル)を両立させるうえで「重要」だと述べ、炭化水素(石油・ガスなど)への依存が強いと、圧力や不安定化の道具になり得る、という認識を示しています。
数字で見る欧州の原子力:1990年「3分の1」→現在「約15%」
フォン・デア・ライエン氏によると、1990年に欧州の電力の約3分の1を占めていた原子力は、現在は約15%に近い水準まで低下しました。この変化を踏まえ、欧州の電源構成をどう組み直すかが、サミットの中心テーマになっています。
EUが「2億ユーロ保証」を表明、革新的な原子力技術へ投資後押し
委員長は、EUとして「革新的な原子力技術」への投資を支援するため、2億ユーロ(約2億3000万ドル相当)の保証を創設すると発表しました。保証は、資金調達の不確実性を下げ、民間投資を呼び込みやすくする狙いがあるとみられます。
化石燃料輸入の価格変動と地政学リスクが意識されるいま、欧州が原子力をどこまで“現実的な選択肢”として再評価するのか。今回の発言と新たな支援策は、その議論を一段押し上げる材料になりそうです。
Reference(s):
Europe's nuclear energy rollback a 'strategic mistake': EU chief
cgtn.com








