NASAの「バン・アレン探査機A」、想定より早く大気圏再突入へ—地上リスクは低いと説明
NASAは、退役した宇宙機「Van Allen Probe A(バン・アレン探査機A)」が、従来予測より大幅に早く地球大気圏へ再突入する見通しだと明らかにしました。多くは燃え尽きる一方、一部の破片が地上に到達する可能性もあるとして、最新の推定と背景を共有しています。
再突入の見込み時刻は「3月10日夜」—ただし約24時間の不確実性
NASAと米宇宙軍(United States Space Force)による予備的な分析では、質量およそ600キログラムの同機は、米東部時間で2026年3月10日午後7時45分ごろに再突入する可能性があるとされています(日本時間では翌11日午前ごろに相当)。
ただし、推定には約24時間の不確実性幅があるため、再突入は前後1日程度ずれる可能性があります。きょう(2026年3月12日)の時点では、推定ウィンドウをすでに通過している計算になり、再突入が完了している可能性もあります。
「破片でけがをする確率は1/4200」—NASAは“低リスク”と評価
NASAは、再突入で発生し得る破片によって人が負傷する確率は約4,200分の1と見積もっています。リスク評価は「低い(low)」という説明で、理由として地球表面の約70%が海であり、破片が残った場合でも人口密集地より外洋に落下する可能性が高い点を挙げました。
バン・アレン探査機とは?—地球を守る「放射線帯」を調べた双子の探査機
Van Allen Probesは2012年に打ち上げられた2機の探査機で、地球磁場に捕捉された高エネルギー粒子の領域であるバン・アレン放射線帯を観測してきました。軌道は近地点約640キロメートルから遠地点約58,000キロメートルの、細長い楕円軌道だったとされています。
NASAによると、放射線帯は有害な宇宙線、太陽風、太陽嵐(ソーラーストーム)などから地球環境を守る“盾”としての側面があり、探査機が集めたデータは、次のような影響を理解する上で重要だったといいます。
- 人工衛星の運用リスク(通信・測位など)
- 宇宙飛行士が受ける放射線環境
- 地上インフラ(通信、ナビゲーション、送電網など)への波及
「2年の予定が2019年まで」—退役後は“25年以内の処分”が原則
ミッションは当初2年間の設計でしたが、2機は想定を大きく超えて運用され、2019年に燃料切れで運用を終えたとされています。NASAのガイドラインでは、米国が打ち上げた宇宙機は、ミッション終了後25年以内に大気圏再突入させるか、適切に処分することが求められています。
処分方法としては、軌道を下げて再突入させるほか、運用を終えた衛星を一定の領域に移す「墓場軌道(graveyard orbit)」もあります。ただしNASAは、墓場軌道でも衝突リスクを完全にゼロにはできず、衝突が起きれば宇宙デブリ(宇宙ごみ)が増え、運用中の衛星を脅かし得る点にも言及しています。
なぜ早まった?鍵は「太陽活動」と“空気の抵抗”
今回、再突入時期が前倒しになった主因として挙げられたのが、想定以上に強い太陽活動です。NASAは以前、再突入は2034年ごろになると予測していましたが、その計算は「現在の太陽活動周期が始まる前」に行われたものでした。
入力情報によれば、2024年に科学者が太陽が活動極大期(solar maximum)に入ったことを確認。これにより宇宙天気現象が強まり、探査機が通過する高度の大気が膨張して大気抵抗(ドラッグ)が増え、軌道低下が加速したとされています。
もう1機のProbe Bは?—「2034年より前には再突入しない見込み」
双子のもう1機であるVan Allen Probe Bも、太陽活動の影響で寿命が短くなったものの、影響はProbe Aより小さいとされています。NASAは現時点で、Probe Bは2034年より前には再突入しない見積もりだとしています。
今回のニュースが示すもの—宇宙は“静かに変動する環境”でもある
宇宙機の寿命は、燃料や機器の状態だけでなく、太陽活動に伴う「上空の大気のふくらみ」のような、目に見えにくい要因でも揺れます。衛星や宇宙インフラが生活に溶け込むほど、こうした変動をどう織り込むかが、運用やルール設計の現実味を増していきます。
Reference(s):
cgtn.com








