トレヴィの泉に参観料導入、観光と文化遺産保護の新しいバランス video poster
2026年2月、ローマの象徴的な名所であるトレヴィの泉に参観料の導入が開始されました。入場管理の強化と文化遺産保護を目的としたこの施策は、単なるチケット販売にとどまらず、観光都市が抱える構造課題への実践的なアプローチを示しています。
混雑緩和が見える化される導入効果
バロック建築の傑作として知られるトレヴィの泉は、築264年を迎えた今も世界中から愛され続けています。一方で、訪れる人々の急増に伴い、階段での飲食や像への座り込み、水場への立ち入りといったマナー違反が後を絶たず、文化財の劣化が進む懸念も指摘されてきました。
こうした課題に対応するため、ローマ当局は泉の下部ゾーンに近づく際、2ユーロの参観料を義務付けるシステムの運用を開始しました。ローマ観光委員会副代表のジョルジョ・トラブッコ氏は、導入初月となる2月時点で約23万枚のチケットが販売されたとし、以前の無秩序な状態と比較して訪問者のアクセスが格段に秩序立ったものになったと評価しています。
観光客と文化財の適度な距離
参観料制度の本質は、収益創出だけにあるわけではありません。その背景には、観光客と歴史的空間との間に適切な距離感を再定義する狙いがあります。無料開放が当たり前だった公共空間に管理の仕組みを組み込むことで、訪問者数は適正化され、地域の負担軽減と文化財の長期的な維持を両立させる試みが図られています。
欧州をはじめとする多くの歴史都市では近年、観光の課題に対処するため、訪れる人数の制限や環境保全税の導入などが議論されています。ローマのケースは、そうした潮流の中で具体的な一石を投じた形です。入場管理によって得られたデータや収益は、施設の保全コストや清掃体制の強化に充てられることが見込まれ、観光消費がそのまま地域還元につながるモデルとしての側面も持っています。
他施設への波及と今後の在り方
一方で、当局は現時点で他の歴史的建造物への参観料導入計画はないと明言しています。この姿勢は、観光収入の依存と文化遺産の公共性との間で慎重なバランスを取ろうとする現れのひとつでしょう。
観光政策の転換期において、都市は今後次のような点を意識していくことになりそうです。
- アクセス制限による地域経済への影響の検証
- デジタルチケットと現地誘導員による柔軟な混雑管理
- 訪問者への事前教育と行動規範の明確化
トレヴィの泉の新しい運用ルールは、訪れる人々に観光資源をどう享受し、次世代へつなぐかという静かな問いを投げかけています。混雑と保存という一見対立する要素を、制度設計でどう調和させていくか。その答えを探るローマの歩みは、世界中の観光地にとって参考となる実験の場となりそうです。
Reference(s):
Trevi Fountain fee highlights Rome's balancing act over tourism
cgtn.com








