イスラエルがレバノン各地を空爆 ヒズボラも報復攻撃、死者3千人超の一年
イスラエル軍がレバノンの首都ベイルート南部や内陸部、南部など各地を空爆し、少なくとも数十人が死亡しました。一方でイスラム組織ヒズボラも北イスラエルへのドローン攻撃などで応酬しており、ガザでの戦争をきっかけに始まった両者の衝突は、この1年で3,000人を超える犠牲を出しながら、なお激しさを増しています。
ベイルート南部で昼間の大規模空爆
火曜日(現地時間)、イスラエル軍はベイルート南郊のダヒエ地区などヒズボラが影響力を持つエリアに対し、日中としてはこれまでで最も激しい部類に入る空爆を行いました。午前遅くからおよそ10回前後の空爆が連続し、ベイルートの空には大きな黒煙が立ち上りました。
イスラエル軍はソーシャルメディアで住民に事前警告を出したとしたうえで、ダヒエ地区のヒズボラ関連施設を攻撃し、同組織の武器やミサイル関連施設の大半を無力化したと主張しています。
一方でイスラエル側は、市民への被害を減らす措置を講じたと強調し、ヒズボラが住民を人間の盾として利用する形で民間地区に拠点を構えていると非難しています。ヒズボラはこうした主張を否定しています。
イスラエルの空爆が始まった9月以降、ベイルート南部の住民の多くはすでに避難しているとされます。ソーシャルメディア上で共有された映像には、10階建てほどの建物に2発のミサイルが直撃し、瞬時に崩れ落ちる様子が映っていました。
レバノン各地で死者少なくとも32人
レバノン中部の山岳レバノン県でも、イスラエルの空爆により多くの死者が出ました。ベイルート南東の村バアルフマイで8人、シュフ地区のジュン村で15人が死亡したと、レバノン保健省が発表しています。
南部では、テファフタ村への攻撃で5人、ナバティーエで2人、沿岸都市ティルス(タイア)で1人が死亡しました。さらに北東部のヘルメルでも1人が空爆で死亡したとされています。これらを合わせると、この日のレバノン側の死者は少なくとも32人に上ります。保健省の集計は、市民と戦闘員を区別していません。
北イスラエルでドローン攻撃 幼稚園にも被害
戦闘は国境を越えて北イスラエルにも及んでいます。北部の都市ナハリヤでは、住宅ビルが攻撃を受けて2人が死亡したとイスラエル警察が明らかにしました。ヒズボラはその後、ナハリヤ東方の軍事基地を狙った無人機攻撃の責任を主張しています。
イスラエル軍によると、北部一帯ではたびたびドローン攻撃があり、住民は避難壕やシェルターに身を寄せました。ハイファ近郊の郊外では、無人機1機が幼稚園の庭に落下しましたが、子どもたちは事前に避難しており、けが人はいなかったということです。
ガザ戦争から続く長期化した衝突
レバノンのヒズボラとイスラエルの衝突は、ガザでの戦争をきっかけに約1年前に激化しました。その後約1年にわたり国境地帯で断続的な攻撃が続き、イスラエルは9月からレバノン側で攻勢を強め、空爆を本格化させるとともに南レバノンに地上部隊も送り込んでいます。
イスラエルはヒズボラに大きな打撃を与え、多くの幹部を殺害したほか、ベイルート南部の広い地域を破壊し、南部国境沿いの村々を壊滅させるなど、レバノン各地で攻撃を拡大してきました。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏も殺害されたとされています。
1年でレバノン側3,287人死亡 イスラエル側でも犠牲
レバノン保健省によると、この1年の戦闘でイスラエルによる攻撃によりレバノンで少なくとも3,287人が死亡しており、その大半はここ7週間の攻撃で亡くなっています。同省の統計は市民と戦闘員を分けていません。
イスラエル側によれば、同じ期間にヒズボラの攻撃で、北イスラエルやイスラエルが占領しているゴラン高原、南レバノンで約100人の市民と兵士が死亡しました。これに対しヒズボラは、10月1日以降に自らの攻撃で100人を超えるイスラエル兵を殺害したと主張しています。
イスラエル軍は「強く行動」 ヒズボラはさらなる攻撃を予告
火曜日、イスラエル軍のヘルツィ・ハレヴィ参謀総長が南レバノンに展開する部隊を訪問し、イスラエル軍はレバノン国内で非常に強く行動していると述べたと伝えられています。
一方ヒズボラは声明で、10月1日以降、南レバノンの複数の町からイスラエル軍を撤退させたと主張しました(具体的な地名は示されていません)。さらに、今後もイスラエル軍の拠点に対する攻撃を続けるとしています。イスラエル軍は、火曜日だけでヒズボラが55発の弾薬をイスラエル側に向けて発射したと発表しました。
焦点となる市民の保護
今回の一連の空爆と報復攻撃では、市街地や住宅街への被害が目立っています。イスラエルはヒズボラの軍事インフラを狙っているとしつつ、民間人被害の最小化に努めていると説明していますが、結果として多くの死傷者が出ていることも事実です。
一方、イスラエルはヒズボラが人口の多い地域に拠点を置き、人間の盾として市民を利用していると非難しています。ヒズボラはこれを否定し、軍事目標のみを狙っていると主張します。どこまでが正当な軍事行為で、どこからが過剰な民間被害なのかという問いが、改めて突きつけられていると言えます。
私たちが押さえておきたい3つの視点
- 犠牲の規模の拡大:この1年でレバノン側だけでも少なくとも3,287人が死亡し、その多くが直近数週間に集中しています。
- 戦場の広がり:国境周辺だけでなく、ベイルート南部の都市部や中部・南部の村々にまで攻撃が及び、北イスラエルの都市や幼稚園の近くにも飛び火しています。
- エスカレーションのリスク:イスラエルが強い軍事行動を続け、ヒズボラもさらなる攻撃を予告するなかで、偶発的な拡大や広範な戦争につながる懸念が高まっています。
中東での武力衝突は、日本からは遠い出来事のように感じられるかもしれません。しかし、市民が巻き込まれる空爆やドローン攻撃の連鎖は、国際社会にとっても無関係ではありません。今後、緊張のさらなる高まりをどう抑え、民間人の被害を減らしていくのかが、大きな焦点となっています。
Reference(s):
cgtn.com








