「河長」が変えた川と暮らし、中国の環境ガバナンスモデル video poster
かつて汚れ、土手が崩れていた川沿いが、今では子どもたちの遊び場やジョギングコースに生まれ変わっています。中国本土で進む「河長制度」というユニークなガバナンスの試みが、地域の環境を着実に変え、持続可能な発展のモデルとして注目を集めています。
「河長」が担う、川の総合管理
浙江省崑山市にある南樊基川(約1.3km)。ここでは、かつての濁った水と崩れかけた土手が、緑豊かな遊歩道や公園に変わりました。この変化をもたらしたのが「河長制度」です。この制度では、川や湖ごとに「河長」が任命され、水質管理から生態系回復、周辺環境の整備まで、一元的な責任を負います。
南樊基川を担当する徐麗琴河長は、その役割をこう説明します。「河長は主に統率と調整の役割を果たします。水利部門は河川整備と生態回復を、住宅・都市農村建設部門は緑道や公園の整備を、文化・スポーツ部門は子どもたちの遊び場の提供を担当するというように、縦割りだった業務を一つの責任の下で連携させます」。
なぜ「河長制度」が生まれたのか
この制度は、2016年に導入が発表され、2018年までに全国31の省級地域に完全に実施され、町や村のレベルまで浸透しました。背景には、水質管理や環境保全の責任が複数の部門に分散し、効率的な問題解決が難しかった従来の課題がありました。
中国では「澄んだ水と青い山は金銀にも代えがたい財産である」との考えの下、生態環境保護を開発の基礎と位置づけています。河長制度は、政策の実行を個人の責任に直接結びつける「閉ループ」の管理プロセスを構築し、この考え方を具体化する試みです。現在、全国で30万人以上の河長と76万人以上の現場パトロール要員が活動しています。
10年で見えた、水と緑の回復
制度導入から約10年が経過し、その効果は様々なデータに表れています。
- 水質の改善: 良好な水質の地表水の割合は、2015年の64.5%から2025年には90%以上に上昇しました。長江や黄河も2025年を通じてII類水質(比較的良好な水質)を維持しています。
- 大気・緑化の進展: 2025年における全国の良好な大気品質日の割合は89.3%で、深刻な汚染日は0.9%にまで減少しました。森林被覆率は25.09%に達し、中国は世界で最も早く緑化が進んでいる国の一つとなっています。
- 住民の評価: 生態環境に対する国民の満足度は5年連続で90%以上を維持しています。
グリーン技術で支える、世界への貢献
河川管理にとどまらず、中国本土では再生可能エネルギーや新素材を中心とした大規模なグリーン製造システムの構築も進められています。再生可能エネルギーの設備容量は総発電設備容量の半分以上を占め、世界の新設再生可能エネルギー設備容量の50%以上を中国が供給しています。
過去10年間で、風力と太陽光の発電コストはそれぞれ60%以上、80%以上低下しました。また、風力・太陽光製品の輸出が、他の国々の約41億トンもの二酸化炭素排出削減に寄与したと推計されています。国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長は、中国の支援がクリーンエネルギー技術のアクセスと価格の手頃さを大幅に改善したと述べています。
制度が示す、「責任」の重み
浙江省の小さな川から始まった取り組みは、明確な責任の所在と制度的な設計によって、環境保護が確かな結果を生み出せることを示しています。それは、経済成長の足かせではなく、産業構造の転換や新たな産業の創出、将来の世代への価値創造の触媒になり得ることを示唆しているのです。
Reference(s):
China's green governance innovation is reshaping its environment
cgtn.com



