中国の医薬品価格交渉が患者負担を8800億元削減 その仕組みとは
中国の医療保険当局が進めてきた医薬品価格の交渉と集中購買により、2024年10月までに患者の自己負担が累計8800億元(約1124億ドル)以上削減されたことが明らかになりました。医薬品アクセスを広げつつ医療費を抑えるこのモデルは、医療費の持続可能性が課題となる各国にとっても注目すべき動きです。
中国国家医療保障局(National Healthcare Security Administration、NHSA)は北京での記者会見で、医療保険の価格交渉を通じて保険適用となった医薬品が、2024年10月までに延べ8億3000万回以上利用され、患者の負担軽減額は累計8800億元を超えたと明らかにしました。
中国の医薬品価格交渉プログラムの規模
今回の発表は、中国が医療保険制度を通じて医薬品価格をコントロールし、患者の負担軽減につなげている実績を数字で示したものです。
- 患者の自己負担軽減額:8800億元超(約1124億ドル)
- 保険適用薬の利用回数:8億3000万回超
- 対象:医療保険の価格交渉を経てリスト入りした医薬品
中国では、医薬品をより買いやすくするために、価格交渉と「集中購買」(複数の医療機関がまとまって入札する仕組み)を組み合わせた取り組みが進められてきました。これにより、単価を下げつつ、必要な薬を安定的に供給することが目指されています。
医療保険の購買力をテコに薬価を下げる仕組み
NHSAによる価格交渉は、医療保険制度の持つ大きな購買力をテコにして行われます。全国レベルでどれくらい医薬品が使われるかという使用量を前提に価格が決められるため、製薬企業は安定した販売量が見込める代わりに、1剤あたりの価格を引き下げる構図になっています。
- 医療保険当局が全国の使用量を見込み、製薬企業と価格交渉を行う
- 交渉で合意した医薬品は、国家医療保険の薬品リストに収載される
- リスト収載後は保険適用により、患者の自己負担が大きく軽減される
中国東部の江蘇省常州市の薬局では、2024年11月時点で、こうした保険適用薬を求める市民の姿が見られました。価格交渉と集中購買は、地方都市を含む広い地域で医薬品の入手しやすさを高めているとみられます。
年次更新される薬品リストがイノベーションを後押し
NHSAは記者会見で、2018年に導入した国家医療保険の薬品リスト年次更新制度の効果も強調しました。この仕組みにより、新しく有効性の高い医薬品を迅速にリストに加えることができ、加入者が最新の医療の成果をより早く享受できるようにする狙いがあります。
91品目追加で3,159品目に拡充
NHSAは新たに91種類の医薬品を国家医療保険の薬品リストに追加し、収載品目数は合計3,159となりました。今回の追加では、特に慢性疾患、希少疾患、小児向け医薬品のカバーが強化されたとされています。
慢性疾患を抱える人にとっては、長期にわたる薬代の負担が少しでも軽くなることが生活の質に直結します。また、対象となる患者数が少ない希少疾患や、子ども向けの専門的な薬は、価格が高くなりがちな分野です。保険リストへの収載は、こうした分野の患者や家族にとって大きな安心材料となり得ます。
医療費の持続可能性に向けた一つのモデル
高齢化や医療技術の進歩に伴い、多くの国で医療費の増加が課題として語られています。2025年の今、日本でも薬価や高額医薬品の扱いは大きなテーマとなっています。中国で進む医薬品価格交渉と集中購買は、次のような論点を投げかけます。
- 医療保険財政を守りながら、患者の負担をどこまで減らせるか
- 新薬のイノベーションと、誰もがアクセスできる価格をどう両立させるか
- 全国レベルの使用量データを価格決定にどう生かすか
中国のケースは、医療保険当局が交渉力を持ち、薬価に直接関与することで、患者負担の大幅な軽減につなげている点が特徴的です。制度や経済状況は国や地域によって異なりますが、医薬品の価格とアクセスをどのように設計するかという問いは、日本を含む多くの国や地域が共有するテーマだと言えそうです。
Reference(s):
China's drug price negotiation program saves billions for patients
cgtn.com








