ショルツ首相、EV関税巡る中国との早期合意をEUに要請
ドイツのオラフ・ショルツ首相が、電気自動車(EV)への関税を巡る中国との交渉を急ぐよう欧州連合(EU)に呼びかける一方、2025年から一段と厳しくなる排出ガス規制へのペナルティ運用の緩和も求めています。本稿では、その発言の内容と背景を整理します。
EV関税巡り「対立に意味はない」とショルツ首相
最近開かれた欧州理事会サミットに到着した際、ショルツ首相は、EUと中国の間で続く電気自動車を巡る関税問題について「これを巡って対立するのは意味がない」と述べ、協議を早期にまとめるよう訴えました。
首相は「今こそ、交渉を良い結果に導くべきだ」として、EU側に対し、中国との協議を加速させるよう求めています。EVは欧州の脱炭素戦略と産業政策の中核に位置付けられており、追加関税の行方は、自動車産業だけでなく、消費者や気候目標にも影響します。
中国商務省「価格コミットメント案で協議を前進させたい」
これに先立ち、中国商務省も声明を発表し、EUに対し「できるだけ早く具体的な行動を取り、中国製EVの価格コミットメント(価格約束)案に関する協議を共同で前進させたい」と表明しました。
商務省の何勇乾報道官は、中国側は一貫して「対話と協議による貿易摩擦の解決」を支持しており、EVを巡る価格コミットメント協議でも「最大限の努力」を続けていると強調しました。双方とも、対立の長期化よりも、現実的な妥協点を探る姿勢を示していると言えます。
EUの排出規制と自動車産業への負担
ショルツ首相は、EV関税だけでなく、EUの気候政策、とくに自動車分野の排出規制についても懸念を示しました。欧州委員会に対し、来年から適用される二酸化炭素(CO2)排出目標を達成できない自動車メーカーへの制裁金(ペナルティ)の運用を緩和するよう求めています。
首相は「世界、とくに欧州の自動車産業が大きなプレッシャーにさらされている中で、2025年に未達成の目標に対してさらに罰金を課すのは意味がない」と述べました。そのうえで、「もし罰金が必要になるとしても、電動化や新しい車両への投資が必要な企業の資金繰りを圧迫しない形にすべきだ」と訴えています。
欧州グリーンディールと厳格なCO2ルール
EUは「欧州グリーンディール」の一環として、2050年までの気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)を掲げ、その中で輸送部門の温室効果ガスを90パーセント削減する目標を設定しています。
この目標を支えるため、2025年から自動車メーカーに対して一段と厳しい排出基準が導入されます。新車の平均排出量を1キロメートルあたり93.6グラム以下のCO2に抑えることが求められ、この基準を超える場合、超過1グラムあたり1台につき95ユーロの罰金が科されます。
業界の試算によると、目標を達成できない場合、欧州の自動車メーカーには合計で150億ユーロ規模のペナルティが発生する可能性があり、欧州最大手のフォルクスワーゲンなどが特に影響を受けやすいとされています。
対立回避と脱炭素の両立は可能か
EV関税を巡る交渉と、厳格な排出規制の運用見直しという二つのテーマは、一見別々の議論に見えますが、いずれも「脱炭素」と「産業競争力」をどう両立させるかという同じ問いにつながっています。
中国との交渉が決裂し、互いに高い関税を掛け合えば、EVの普及が鈍り、消費者負担も増えます。一方で、規制を緩めすぎれば、気候目標が遠のくおそれがあります。ショルツ首相の発言は、その間でバランスを取ろうとする試みとも読めます。
今後、EUと中国がどのような形でEV関税問題の妥協点を見いだすのか、そしてEUが気候目標を維持しつつ自動車産業をどう支えるのかは、国際経済と環境政策の両面で、2025年以降の行方を左右する重要な焦点になりそうです。
Reference(s):
Germany's Scholz urges swift deal with China over EV dispute
cgtn.com








