中国の医療保険改革が前進 家族で個人勘定をシェア、全国へ拡大
中国で医療保険制度の改革が一歩進み、従業員向け医療保険の個人勘定を家族と共有できる仕組みが、全国すべての省級地域に拡大しました。国際ニュースとしても注目されるこの動きは、家計の医療費負担や社会保障のあり方にどんな変化をもたらすのでしょうか。
何が変わったのか:家族で個人勘定を共有
中国の国家医療保障局(NHSA)は、従業員向けの医療保険に加入している人が、自分の個人勘定と近親の家族の医療保険をオンラインで連携させ、残高を家族と共有できる制度を、12月9日付で全国のすべての省級地域に拡大したと発表しました。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 対象は、従業員向け医療保険の加入者(被用者基本医療保険の個人勘定保有者)
- オンライン手続きで、家族の医療保険と個人勘定をひも付け
- ひも付けされた家族は、個人勘定の残高を医療費支払いなどに共同利用可能
これにより、家族の誰か一人の口座に残高が偏っていても、他の家族の医療費に柔軟に回すことができ、家庭全体で医療費を管理しやすくなります。
段階的に広がってきた「家族利用」
今回の改革は、ここ数年続いてきた医療保険改革の延長線上にあります。中国では近年、従業員向け医療保険の個人勘定を家族も使えるようにする方向で、段階的な見直しが行われてきました。
- 2021年:従業員個人勘定の利用対象を、配偶者、両親、子どもに拡大
- 2025年現在:さらに改革が進められており、家族単位での活用が一般的になりつつある
家族を単位に医療費を支える仕組みを強化することで、個人の負担とリスクを分散し、医療保険制度の持続可能性を高める狙いがあるとみられます。
2024年の利用実績:325百万件、利用額は数百億元規模
国家医療保障局のデータによると、2024年1〜11月のあいだに、従業員医療保険の個人勘定を家族で共有利用したケースは約3億2500万件に達しました。利用された金額は、用途別に次のように報告されています。
- 指定医療機関での個人の医療費支払い:343.1億元(約47.7億ドル)
- 指定小売薬局での支払い:20.7億元
- その他の用途(住民基本医療保険への個人負担分の支払いなど):74.8億元
実際にかなりの規模で家族利用が行われていることが分かり、医療費の支払い手段として個人勘定が重要な役割を果たしていることがうかがえます。
省内は全国実施、省をまたぐ共有は導入中
現時点で、中国のすべての省級地域において、同じ省の中であれば従業員医療保険の個人勘定を家族間で共有できる仕組みが実施されています。一方で、家族が別々の省に住んでいる場合などを想定した、省をまたぐ口座共有は、まだ段階的な導入の途中にあります。
近親者どうしで、省をまたいで個人勘定を共有できるようになれば、次のような効果が期待されています。
- 離れて暮らす家族を含めた医療費負担の軽減
- 突発的な病気や入院への備え(医療リスクへの耐性向上)
- 異なる省に住む家族間での医療資金の効率的な配分
国家医療保障局の黄華波副局長は、省をまたぐ共有について「3億人を超える従業員と、医療保険に加入する10億人近い住民が関わる大規模な改革だ」と説明し、この制度が2025年中に全面的に稼働し、より持続可能でアクセスしやすい医療を実現していく見通しであるとしています。
日本の読者が読み取れるポイント
今回の中国の医療保険改革には、日本の読者にとっても考えるヒントが含まれています。
- 医療保険を「個人」ではなく「家族」単位で活用する発想
- オンラインを活用した医療保険口座の連携・管理のデジタル化
- 高齢化や医療費の増大に対応するための社会保障改革の一例としての位置づけ
日本でも医療費や介護費用の増大が課題となる中で、家族や世帯を単位にしたセーフティーネットをどう設計するかは、今後の重要な論点です。中国の取り組みは、日本の医療保険制度を見直す際の一つの比較材料として、引き続き注目しておきたい動きだと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








