国際ニュース:トランプ米大統領が全輸入に10%関税
トランプ米大統領が、全ての輸入品に最低10%の追加関税を課す「相互関税」の大統領令に署名しました。日本を含む各国・地域への高関税と、世界的な報復措置の連鎖が懸念されています。
何が起きたのか:全輸入品に「最低10%」
米国のトランプ大統領は現地時間の水曜日、「相互関税(reciprocal tariffs)」に関する大統領令に署名し、原則として全ての輸入品に10%の追加関税を課す方針を打ち出しました。これは「最低ベースライン関税」とされ、一部の国・地域に対してはさらに高い税率が適用されます。
トランプ氏は、各国が米国製品に課している関税や、規制などの非関税障壁への対抗措置だと主張し、新たな関税が米国内の製造業の雇用を取り戻すと強調しました。
しかし発表を受けて、米株式市場の先物は急落しました。投資家の間では、今回の関税が世界経済やインフレ、企業収益にどのような影響を与えるのかを巡って不安が高まっており、2月以降、米株式市場では時価総額が約5兆ドル失われたとされています。
相互関税の中身:一律10%+国別「上乗せ」
大統領令によると、特別な例外を除き、米国への全ての輸入品に対して10%の追加関税が課されると定めています。発効日は4月5日とされました。
さらにホワイトハウスの資料によれば、米国との間で「最大の貿易赤字」を抱える国・地域には、個別により高い「相互関税」が課されます。これらの高関税措置は4月9日に適用されるとされ、およそ60の国と地域が対象になるとホワイトハウス高官がロイター通信に語りました。
対象外となる品目
一方で、一部の品目は今回の相互関税の対象外とされています。ホワイトハウスの説明によると、除外されるのは次のような品目です。
- 鉄鋼・アルミニウム、自動車・自動車部品(すでに米通商拡大法232条に基づく関税が適用されているもの)
- 銅、医薬品、半導体、木材、金、エネルギー関連品目
- 米国内で産出されない「特定の鉱物」
カナダ・メキシコ向けの特例
隣国のカナダとメキシコには、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく特例措置が設けられています。
- USMCAに準拠した品目:関税は引き続き0%
- USMCA非準拠の品目:25%の関税
- USMCA非準拠のエネルギー関連品目およびカリウム肥料(ポタッシュ):10%の関税
主要相手国ごとの関税水準
トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンで演説し、「相互関税」の仕組みを示すチャートを掲げました。チャートでは、国・地域ごとに異なる関税率が示され、次のような例が挙げられています。
- 中国:34%
- 欧州連合(EU):20%
- ベトナム:46%
- 日本:24%
- インド:26%
- 韓国:25%
- タイ:36%
- スイス:31%
- インドネシア:32%
- マレーシア:24%
- カンボジア:49%
トランプ氏は、こうした税率は、各国が米国製品に課している関税だけでなく、「通貨操作」や各種規制などの「非金銭的障壁」を含めた負担を反映したものだと説明しました。ただし、その算定方法や前提については、専門家から疑問の声も上がっています。
米国内の反発:「史上最大の逆進税」との批判も
トランプ氏は、新たな関税が政府の税収拡大と製造業の復活につながると主張しますが、米国内では懸念が広がっています。経済学者の多くは、関税が米国の消費者や企業のコストを押し上げ、世界貿易を混乱させ、世界経済全体を冷やすと警告しています。
米紙ニューヨーク・タイムズは、今回の措置を「トランプ氏の貿易戦の重大なエスカレーション」と位置づけ、世界経済に波紋を広げ、米国の消費者と製造業のコストを押し上げるとともに、他国の報復を招く可能性が高いと報じました。
米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のゲーリー・クライド・ハフバウアー氏は、ホワイトハウスが示した各国の「関税同等率」について「その主張を裏付ける根拠はなく、純粋な作り話だ」と批判しました。さらに、「今回発表された関税は、予測されていたシナリオの中でも極端な部類に属する。外国を過激な言葉で描写している状況を踏まえると、米国が景気後退を避けるのは難しい。世界の成長率も1ポイント以上押し下げられるだろう」と述べています。
米下院外交委員会で野党・民主党の筆頭議員を務めるグレゴリー・ミークス氏は、関税を撤回させるための法案を提出すると表明しました。ただし、共和党が多数を握る議会で成立する可能性は高くないと見られています。
ミークス氏は、「トランプ氏は全ての輸入品に巨額の関税を課すことで、現代史上最大級の逆進的な増税を米国民に強いた。無謀な政策は市場を混乱させるだけでなく、働く家庭に不釣り合いな打撃を与える」と強い言葉で批判しました。
各国の対抗措置と広がる「貿易戦争」懸念
今回の大規模な関税は、世界最大の消費市場である米国の周囲に新たな貿易障壁を築くものであり、長年続いてきた貿易自由化の流れを逆向きに押し戻す動きと受け止められています。各国は対抗措置を検討しており、自転車からワインに至るまで、多くの品目で価格上昇が連鎖する可能性が指摘されています。
欧州の指導者らは相次いで懸念を表明しました。イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、「米国との合意を目指し、貿易戦争を避けるためにあらゆる努力をする」と述べ、貿易戦争は消費者を傷つけ、いずれの側にも利益をもたらさないとの考えを示しました。
ブラジル政府は、一律10%関税への対応として取り得る全ての選択肢を検討していると表明し、ブラジル議会は報復措置の枠組みを定める法案を可決しました。
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は記者会見で、「これは友好国のする行為ではない」と不満を示し、「オーストラリアの雇用の4分の1は貿易に依存している」と指摘しました。
カナダのマーク・カーニー首相も、トランプ氏の包括的な関税は「世界の貿易システムを根本から変えてしまう」と警告し、「カナダは対抗措置を通じて、これらの関税と戦っていく」と述べました。
日本・アジアへの意味合い:何が問われているか
日本、韓国、東南アジア諸国などアジアの主要な輸出国も、高い追加関税の対象例として名指しされています。日本に対しては24%、ベトナムには46%、タイには36%といった水準が示されており、対米輸出の採算悪化やサプライチェーン(供給網)の見直しを迫られる可能性があります。
一方で、関税のコストは米国の消費者や企業にも跳ね返ります。輸入品価格の上昇はインフレ圧力となり、企業収益や株式市場にもマイナスに働きうると指摘されています。実際に、今回の発表後、米株式市場では先物が急落し、2月以降の時価総額は約5兆ドル減少したと報じられています。
各国がどこまで報復関税を拡大させるのか、それとも交渉を通じて妥協点を探るのか。今回の「相互関税」をめぐる動きは、国際ニュースとして、世界の貿易秩序と経済の持続可能性をあらためて問い直す局面となっています。
Reference(s):
cgtn.com








