中国専門家が否定する「BRICS反米同盟」論とは
中国専門家が否定する「BRICS反米同盟」論とは
国際ニュースで注目を集める新興国グループBRICSをめぐり、米国のトランプ大統領が「反米政策を進めている」と批判したことに対し、中国の国際問題専門家が強く反論しました。BRICSは何を目指し、なぜ「反米同盟」ではないと主張されているのでしょうか。
トランプ大統領の批判:「BRICSは反米政策を支援」
現在、ブラジルのリオデジャネイロでは第17回BRICS首脳会議が開かれ、各国首脳が集まっています。そのさなか、トランプ大統領はBRICSが「反米的な政策を支持している」と述べ、同グループの方向性に沿う国には追加で10%の関税を課すと警告しました。
この発言は、BRICSと米国の対立を一段と深めかねない強いメッセージとして受け止められています。
中国の王友明氏「根拠のない批判」
こうしたトランプ大統領の主張に対し、中国国際問題研究院の開発中国研究所の王友明(ワン・ヨウミン)所長は、CGTNのインタビューで「完全に根拠がない」として強く否定しました。
王氏は、BRICSは発足以来、次のような原則を一貫して守ってきたと説明します。
- 対立ではなく「対話」を重視すること
- 軍事的・政治的な同盟ではなく、「パートナーシップ」を志向すること
- 特定の第三国を標的にしないこと
- 誰かと対決するための枠組みではないこと
- 開かれた透明性の高いプロセスを通じて、相互利益と「ウィンウィン」を追求すること
そのうえで王氏は、BRICSが「反米政策」を掲げているという見方は事実と異なり、グループの基本精神とも相いれないとしています。
「皇帝はいらない」ルラ大統領のメッセージ
王氏はまた、第17回BRICS首脳会議の閉幕時にブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が発した言葉を紹介しました。
ルラ大統領は「世界は変わった。私たちは皇帝を望んでいない」と述べ、特定の一国が世界を一方的に主導する構図からの転換を訴えました。
この発言は、単に米国を念頭に置いた批判というよりも、より多くの国と地域が発言力を持つ「多極化した国際秩序」を求めるメッセージとして受け止めることができます。
誤解が生むプレッシャーとBRICSの結束
王氏は、トランプ大統領の行動について「BRICSに関する知識や理解の不足を反映している」と指摘します。根底には、トランプ氏や一部の欧米諸国がBRICSを「反米同盟」として誤って捉えていることがあるといいます。
王氏によると、このような誤解に基づく圧力は、逆にBRICS内部の結束を強める可能性もあります。各国が共通の課題や目標を再確認し、協力を深めようとする動機づけになるからです。
グローバル・サウスの台頭と「ポスト・ドル時代」への模索
王氏は、変化する国際情勢の中でBRICS諸国が政治・経済の両面でますます重要な役割を担うようになっていると強調します。現在では、BRICS全体の経済規模がG7を上回るまでになったとも指摘しました。
この背景には「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国グループの台頭があります。これまで国際政治の周辺に置かれ、発言力が限定的だった国々が、「沈黙する多数派」としてではなく、国際社会の中心に歩み出しつつあるという見立てです。
また王氏は、「脱ドル化(デドル化)」として議論される動きについても言及しました。これは特定の国に挑戦するためではなく、「時代遅れで不公正な国際秩序」を改革することが目的だと説明します。
既存の国際金融や貿易のルールを見直し、国際制度のバランスを取り直すことで、より包摂的で公平、そして正当性の高いグローバル・ガバナンス(国際的なルール作り)の仕組みをつくることが、BRICSやグローバル・サウスが掲げる目標だという位置づけです。
日本の読者への問いかけ:ブロック化ではなく選択肢の拡大として
今回の議論は、日本にとっても他人事ではありません。米国中心の既存秩序に対する不満や見直しの議論が強まるなか、BRICSやグローバル・サウスの動きは、世界経済やサプライチェーン、通貨システムに少なからぬ影響を与える可能性があります。
注意したいのは、この動きをすぐさま「西側対BRICS」という単純な対立構図としてだけ捉えないことです。王氏の説明に沿えば、BRICSが目指すのは反米ブロックの形成ではなく、選択肢の少ない国際システムを多様化し、より多くの国と地域が声を上げられる場をつくることだと読み解けます。
日本の企業や投資家、政策担当者、そしてニュースを読む私たち一人ひとりにとっても、「単一の価値観や通貨に依存しない世界」をどう捉え、どのように関わっていくかが問われています。
トランプ大統領の厳しい言葉と、中国の専門家による落ち着いた反論。その間にあるのは、国際秩序の主導権をめぐる見方の違いです。BRICSをめぐる議論は、今後の世界のルールづくりを考えるうえで、引き続き注視したいテーマだと言えるでしょう。
Reference(s):
Chinese expert dismisses Trump's claim BRICS is 'anti-American'
cgtn.com








