同盟国は「受け入れ難い」 トランプ関税通告に揺れるEU・韓国・日本
同盟国は「受け入れ難い」 トランプ関税通告に揺れるEU・韓国・日本
トランプ米大統領が2025年夏に各国へ送りつけた関税通告に対し、EU・韓国・日本などの同盟国が強い不満と警戒を示しました。2025年末の今、何が問題で、各国はどう動こうとしているのかを整理します。
トランプ氏の「関税レター」に同盟国が反発
アメリカの貿易相手国は、ドナルド・トランプ米大統領による最新の関税措置の通告に対し、落胆といら立ちをにじませています。各国はここ数カ月、合意に向けて誠実に交渉してきたと考えていただけに、その思惑は大きく外れた形です。
とくに影響が大きいのは、ヨーロッパ連合(EU)、韓国、日本といったアメリカの同盟国です。いずれも「相互に利益のある合意」を目指すとしながらも、自国の産業と雇用を守るため、ぎりぎりの駆け引きを続けています。
EU:合意目前でも高関税がのしかかる
EUは、アメリカとの通商協定で合意に近づきつつある一方で、直ちに関税を引き下げてもらえないこと、そして新たな追加関税を封じる約束が得られていないことに頭を悩ませています。
欧州議会の国際貿易委員会のトップであるベルント・ラング氏は、水曜日の発言で、鉄鋼や自動車をめぐる関税について「一定の理解の余地がある回廊が見えてきた」としつつも、現状は決して受け入れられるものではないと強調しました。
EUは現在、アメリカから次のような関税を課されています。
- 鉄鋼輸出:50%
- 自動車:25%
- その他多くの輸出品:概ね10%
- 銅:50%の関税が間もなく発動予定
- 半導体・医薬品:追加関税が近く導入予定
ラング氏は、こうした関税はEUの産業発展を狙い撃ちにするものであり、「EUとして容認できない」と述べました。
EUが求める2つの条件
EU側の焦点は、次の2点にあります。
- 枠組み合意の時点での関税引き下げ:最終合意を待たず、合意の骨格がまとまった段階で関税を下げること。
- スタンドスティル条項:交渉中に新たな関税措置を取らない「凍結」の約束をアメリカから引き出すこと。
欧州委員会は27カ国を代表して交渉にあたり、2025年8月1日までに枠組み合意にこぎつけることを目指してきましたが、その過程で高関税が重くのしかかっています。
韓国:一時停止の「延長」を梃子に交渉加速
韓国の産業通商資源部は火曜日、「トランプ大統領による関税通告は、韓国製品への新たな関税発動の一時停止を事実上延長したものだ」と受け止めつつ、アメリカとの「互恵的で互いに利益となる」協定の実現に全力を尽くすと表明しました。
同省によると、6月4日に就任した李在明(イ・ジェミョン)大統領の新政権の下で、韓国は「国益を最優先する」という原則に基づき、激しい交渉を続けてきました。ただ、関係するすべての論点を短期間でまとめることは難しく、トランプ氏の書簡は「相互主義的な関税」を一時的に猶予する効果を持ったと見ています。
韓国政府は、残された期間で不確実性をできるだけ早く解消するため、交渉を加速させる構えです。とくに貿易赤字への懸念に対応するため、自国の制度見直しや規制の合理化を通じて、アメリカ側の懸念を和らげる考えを示しました。
日本:石破首相「真に遺憾」 25%関税の通告
日本の石破茂首相は火曜日、トランプ大統領が日本からの輸入品に25%の関税を課すと決定したことについて、「真に遺憾な決定だ」と述べました。そのうえで、「国益を守りつつ、互いに利益となる合意の可能性を探るため、アメリカとの交渉を続ける」と語りました。
トランプ大統領は月曜日、日本からの輸入品に対し、2025年8月1日から25%の関税を課す方針を表明しました。また、日本がアメリカ製品への関税を引き上げた場合には、自身の政権も同じ幅で対抗関税を課すと警告しました。
日本企業にとっては、自動車や部品、素材といった対米輸出の柱となる分野が影響を受ける可能性があり、サプライチェーン(供給網)や国内雇用への波及も懸念されます。
他のアジア・新興国にも一斉関税
トランプ大統領は同じ日に、日本や韓国以外の13カ国にも新たな関税率を発表しました。アジアや新興国を中心に、次のような高い税率が示されています。
- 韓国:25%
- 南アフリカ:30%
- セルビア、バングラデシュ:35%
- タイ、カンボジア:36%
- ミャンマー、ラオス:40%
同盟国や友好国も含めて広範囲に高関税を課す姿勢は、多くの国にとって想定外のものであり、「関税ショック」ともいえる状況を生んでいます。企業にとっては、どの市場を主軸に据えるか、投資計画や生産拠点の見直しが迫られかねない局面です。
「関税ラッシュ」が示す3つのポイント
- 同盟国も例外ではない
今回の関税通告は、EU・韓国・日本といった同盟国やパートナー国も「例外扱い」されないことを明確にしました。安全保障面では協力関係にあっても、通商では厳しく交渉するという姿勢が浮き彫りになっています。
- 企業にとっての不確実性が急拡大
発動時期や対象品目が変わる可能性がある中で、企業は中長期の投資や雇用計画を立てにくくなっています。特定の税率そのものよりも、「いつ条件が変わるかわからない」という不確実性が、経営判断を難しくしている側面があります。
- 各国が共通して掲げる「互いに利益ある合意」
EUのラング氏、韓国の産業通商資源部、日本の石破首相など、各国のキーパーソンが共通して口にしているのが「互いに利益となる(mutually beneficial)合意」という言葉です。一方的に譲歩するのではなく、自国の産業と雇用を守りながら、どこまで妥協点を探れるかが問われています。
2025年末の視点:これから何を見るべきか
これらの関税通告が集中した2025年夏から、すでに数カ月が経ちました。発動・先送り・見直しなど、具体的な行方は各国の交渉次第ですが、日本の読者として押さえておきたいポイントは次のような点です。
- どの関税が実際に発動・修正・凍結される(された)のかというプロセス
- 自動車、鉄鋼、半導体、医薬品など、日本と関わりの深い産業への影響
- EU・韓国・日本が、国内の制度改革や産業政策を通じてどのように対応していくか
国際通商ルールをめぐる揺れは、為替や株価だけでなく、日々の物価や雇用にもじわじわと影響してきます。短期的なニュースの動きに一喜一憂するのではなく、「どのルールが長期的に定着していくのか」「その中で日本やアジアはどんな立ち位置を取るのか」という視点で、2026年以降の動きを見ていくことが重要になりそうです。
関税をめぐる攻防は、単なる数字の問題ではなく、各国がどのような産業構造と社会を選び取ろうとしているのかを映し出す鏡でもあります。2025年末の今だからこそ、一つひとつの通商ニュースを、自分の暮らしや働き方と結びつけて考えてみることが求められています。
Reference(s):
'Not acceptable,' U.S. allies react to Trump's tariff letters
cgtn.com








