中国が輸出管理技術リスト改定 電池正極材を新たに追加
中国は、輸出を禁止・制限する技術をまとめたカタログを改定しました。電気自動車などで注目される電池正極材の製造技術を新たに制限対象とする一方、中国建築などの技術については規制を緩めています。国際ニュースとして、グローバルなサプライチェーンや企業戦略に影響し得る動きとして注目されます。
何が変わったのか:今回の改定ポイント
今回の改定は、中国商務省(MOFCOM)と科学技術省が共同で公表したもので、担当者によると「1件の新規追加、3件の削除、1件の修正」が盛り込まれています。主なポイントは次のとおりです。
- 電池正極材の製造技術(リチウム鉄リン酸塩を含む)が新たに「制限」技術として追加され、輸出には許可が必要に。
- 非鉄冶金分野では、スポジュメンを原料とした炭酸リチウム製造技術などに新たな管理を導入し、ガリウム金属抽出技術の要件を調整。
- 国際的な建築分野での共有を促すため、伝統的な中国建築技術に関する1件の「禁止」項目と、建築環境制御技術に関する2件の「制限」項目をリストから削除。
電池正極材技術が輸出管理入り、その背景
今回新たにカタログに加えられたのは、リチウム鉄リン酸塩などの電池正極材を製造するための技術です。これらは、電池の性能やコストを左右する中核技術であり、今後の輸出には当局の許可が必要になります。
商務省の担当者は、こうした技術が安全保障上のセンシティブな分野での利用を含め、さまざまな場面で使われるようになっていると説明し、技術発展と安全保障のバランスを図る狙いがあるとしています。
電気自動車や定置型蓄電システムなどで電池の需要が高まるなか、電池関連技術の管理強化は、世界のサプライチェーンや企業の研究開発戦略にも影響を与える可能性があります。中国の企業や研究機関と取引・協力する海外企業にとっては、技術移転や共同研究の枠組みを設計する際に、輸出許可の要否をより慎重に確認する必要がありそうです。
非鉄冶金・リチウム関連技術の調整
改定では、非鉄冶金分野の既存の項目も見直されました。特に、リチウムを含む鉱石であるスポジュメンを原料とした炭酸リチウムの製造技術が、新たに管理対象として明確に位置づけられています。また、ガリウム金属の抽出技術に関する要件も調整されました。
リチウムやガリウムは、電池、通信機器、電子部品など幅広い用途を持つ戦略的な素材です。こうした資源や素材に関わる技術の管理を細かく調整する動きは、資源・材料分野における中国の政策スタンスを映しているとも言えます。
建築技術の規制緩和と国際共有
一方で、すべての分野で規制が強まったわけではありません。中国当局は、伝統的な中国建築技術に関する「禁止」項目1件と、建築環境制御に関する「制限」項目2件をカタログから削除しました。
商務省の説明によると、これは中国の建築分野での成果を国際的に共有しやすくするための調整です。伝統建築のデザインや、室内環境や省エネ性能を高める建築技術などが海外で活用されやすくなることで、建築・都市開発分野での国際協力が進む可能性があります。
輸出禁止・制限技術カタログとは
このカタログは2001年に初めて公表され、その後2008年、2020年、2023年と改定が行われてきました。今回の見直しは、それに続く最新のアップデートです。
カタログに掲載された技術は、性格によって二つに分かれます。輸出が「禁止」とされた技術は国外に提供することができず、「制限」とされた技術は、輸出のたびに当局の許可(ライセンス)が必要になります。
商務省によると、今回の改定にあたっては、関係政府部門、業界団体、産業界や学術界の関係者、さらには一般市民からも幅広く意見が集められました。そのうえで、国家の経済安全と発展利益を守ると同時に、国際的な経済・技術協力を促進することを目標に、リストの調整が行われたとしています。
開放姿勢と安全保障の両立をどう見るか
商務省の担当者は、中国が引き続き高水準の対外開放を進め、国内のビジネス環境の改善にも取り組む姿勢は変わらないと強調しました。また、各国との技術交流を一層深める用意があるとも述べています。
今回の改定は、電池やリチウム関連など戦略性の高い技術については管理を強めつつ、建築などの分野では国際発信と協力を促すという「選択的な開放」の姿勢がうかがえます。技術を軸にした産業競争力と安全保障をどう両立させるかは、中国だけでなく多くの国に共通するテーマであり、今後の政策動向を読み解く一つの手がかりになりそうです。
日本と世界の企業へのチェックポイント
今回の動きは、日本を含む各国の企業や研究機関にとっても無関係ではありません。押さえておきたいポイントを簡単にまとめると、次のようになります。
- 中国の電池正極材やリチウム関連技術に依存している企業は、輸出許可手続きや契約条件の確認がより重要になる。
- 建築・都市開発分野では、中国の建築技術やノウハウがこれまで以上に活用しやすくなる可能性がある。
- 技術輸出や共同研究に関わる企業・研究機関は、カタログの更新など規制情報の動きを継続的にフォローする必要がある。
技術と安全保障、そして開放政策のバランスをどう取っていくのか。今回の中国のカタログ改定は、その問いをあらためて投げかける出来事と言えます。
Reference(s):
China revises catalog of technologies subject to export controls
cgtn.com







