中東で進む人民元の国際化 UAEが開く新たな章
中国の人民元の国際化が、中東とくにアラブ首長国連邦(UAE)で新たな段階に入っています。中国の第15次五カ年計画(15th Five-Year Plan)の重点提言には人民元の国際化が盛り込まれ、中東の新興市場で人民元決済への需要が高まるなか、UAEが重要な拠点になりつつあります。
中東で高まる人民元需要 背景に中国と湾岸諸国の連携
中東は成長の速い新興市場であり、湾岸諸国が中国との経済・金融協力を強めるにつれて、貿易や投資で人民元を使いたいというニーズが高まっています。人民元の国際化を進める中国の方針と、中東側の多様な通貨利用の動きが重なり、人民元は同地域で存在感を増しつつあります。
UAE初の人民元クリアリングバンク 中国農業銀行ドバイ支店
この流れの最前線に立っているのが、アラブ首長国連邦で最初の人民元クリアリングバンクとなった中国農業銀行ドバイ支店です。同支店は2016年の設立以来、UAEにおける人民元決済の中核として機能してきました。
2025年現在までに、ドバイ支店が担った人民元清算の累計額は9000億元(約1265億ドル)を超えています。特に2024年だけで2000億元超を清算しており、ここ数年で人民元取引が急速に拡大していることがうかがえます。
- 2016年にドバイ支店として設立
- 人民元清算累計は2025年までに9000億元超
- 2024年単年で2000億元超を清算
一般に、クリアリングバンクとは、現地の銀行や企業が特定通貨で送金や支払いを行う際に、集中して決済を処理する銀行です。UAEの企業は、この仕組みによって、米ドルなど他通貨を経由せずに人民元で直接取引しやすくなっています。
地元銀行も参入 ファースト・アブダビ銀行の動き
人民元の国際化を巡る動きは、中国系銀行だけにとどまりません。最近、UAEのファースト・アブダビ銀行が、同国で2行目となる人民元クリアリングバンクとなりました。中東地域の地元銀行としては初めて、中国の中央銀行から人民元清算業務の認可を受けたかたちです。
地元の大手銀行が人民元清算の役割を担うことで、UAEや周辺の企業・個人は、より身近な金融機関を通じて人民元決済にアクセスできるようになります。これにより、
- 人民元建て取引の手続きが簡素化される
- 決済時間の短縮やコスト削減が期待できる
- 人民元関連サービスへのアクセスが広がる
といった効果が見込まれ、中東における人民元利用をさらに後押しすることになりそうです。
中国とUAEの人民元建て取引は急増中
人民元の国際化は、統計にも表れています。2025年の最初の9か月間における中国とUAEの間のクロスボーダー人民元取引(受け払い)の総額は、8640億元に達しました。これは、中国とUAEの貿易や投資において、人民元がすでに実務レベルで広く使われていることを示しています。
両国は、二国間貿易額を2000億ドル規模へと引き上げる目標を掲げています。貿易と投資のボリュームが拡大すれば、それに伴って人民元建ての決済も増える余地は大きく、今後も人民元利用の拡大が続くと見られます。
なぜ中東の人民元シフトが注目されるのか
中東で人民元の利用が進むことは、中国やUAEだけでなく、国際金融の流れを考えるうえでも重要な意味を持っています。
- エネルギーや投資の発信地である中東で人民元決済が広がると、人民元の国際的な存在感が一段と高まる
- 企業にとっては、中国との取引を自国通貨や人民元で直接決済しやすくなり、為替リスクや手数料をより柔軟に管理できる
- 金融機関にとっては、人民元口座や人民元建て融資など、新たなサービスや商品の開発余地が広がる
こうした変化は、ドル一極だった国際決済の実務に、少しずつ選択肢を増やしていく可能性があります。中東での人民元利用は、その一つの象徴的な動きと言えます。
日本の読者への示唆 アジアと中東をつなぐ通貨の動き
日本から見ると、中東での人民元の国際化は一見遠い話に感じられるかもしれません。しかし、エネルギー市場や国際金融市場を通じて、日本経済とも無関係ではありません。
例えば、日本企業が中東の企業を介して中国市場と取引する場面では、人民元や現地通貨を組み合わせた決済スキームが今後増えていく可能性があります。そのとき、どの通貨で決済し、どのように為替リスクを管理するかは、企業戦略の一部になっていきます。
国際ニュースとして人民元の動きを追うことは、エネルギー価格や新興市場の資金フロー、アジアと中東をつなぐ経済関係を読み解くヒントになります。UAEを中心に、中東で人民元の利用がどのように広がっていくのか。中国の第15次五カ年計画の進展とあわせて、今後も注目していきたいテーマです。
Reference(s):
cgtn.com








