ホルムズ海峡封鎖による「エネルギー・ショック」:日本の脆弱性と産業への波及
2026年2月に発生した米国およびイスラエルによるイラン攻撃を受け、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態にあります。この事態は世界のエネルギー市場に激震を走らせましたが、特に原油の大部分を中東に依存する日本にとって、これは一時的な混乱ではなく「構造的な危機」として突きつけられています。
原油輸入の激減と顕在化した「構造的リスク」
日本のエネルギー自給率は長年低い水準にあり、中東への依存度はむしろ深まっていました。2025年時点で、日本の原油輸入の約94%を中東が占めており、そのうちの90%がホルムズ海峡を通過しています。今回の封鎖により、この潜在的なリスクが現実のものとなりました。
具体的な数字を見ると、その影響の大きさが分かります。
- 輸入量の減少: 2026年3月の原油輸入量は前年同月比で17%減少し、1989年以来の低水準を記録しました。
- 主要国からの減少率: カタールから81%減、クウェートから64%減、アラブ首長国連邦(UAE)から22%減と、主要供給国からの輸入が激減しています。
化学工業から一次産業まで広がる連鎖的な影響
エネルギー危機の影響は、単なる燃料不足にとどまりません。原油の誘導体であり、プラスチックや化学製品、合成繊維の原料となる「ナフサ」の深刻な不足が発生しています。国内ナフサの80%以上を中東に依存しているため、エチレン製造設備での減産を余儀なくされる事態となっています。
こうした影響は、私たちの身近な製品にも波及しています。例えば、塗料の重要な成分であるトルエンやキシレンの不足により、日本ペイントなどのメーカーが出荷調整を行うなどの影響が出ています。現場の調達担当者は、連日深夜まで交渉を続けているものの、供給が追いつかない状況が続いています。
一次産業への打撃
特に深刻なのが、コスト上昇を直接的に受ける一次産業です。
- 漁業: 1隻あたりの燃料費が1日15,000円以上上昇。静岡県の大井川港では、費用増で採算が合わなくなり、ゴールデンウィークの最盛期にシラス漁の中止を余儀なくされました。
- 農業: 米農家は、燃料費、物流費、資材費の「三重苦」に直面しており、作付け面積の縮小や生産停止を検討する生産者も現れています。
1973年の教訓と、いま直面している課題
今回の危機は、日本が1973年のオイルショックから十分な教訓を得ていなかったことを示唆しています。中東依存からの脱却や供給源の多角化という課題が、解決されないまま放置されていた形です。
200日分以上の消費量に相当する国家備蓄による放出で、ある程度の緩衝材(バッファー)は機能しましたが、2026年3月までに備蓄量は過去最低水準まで落ち込んでいます。専門家は、たとえ紛争が終結したとしても、中東のエネルギー情勢が2月28日以前の状態に容易に戻ることは極めて困難であると警鐘を鳴らしています。
Reference(s):
cgtn.com