CGTN『The Vibe』が映す現代中国:ブラジル記者から上海アートフェスまで
2024年11月に放送された中国の国際情報番組『CGTN The Vibe』は、ブラジル人記者、ペルー人詩人、古典学者、上海のアーティストたちの視点を通じて、現代中国の姿を立体的に描きました。
番組で取り上げられた4つのトピックは、2025年の今あらためて振り返ってみると、中国が世界にどんなメッセージを届けようとしているのかを考える手がかりになります。本記事では、その4つのコーナーを手がかりに、国際ニュースとしての中国と、文化・都市の物語を読み解きます。
ブラジル人記者の「Eye on China」 現代化を追い続けて
コーナー「Eye on China」では、ブラジル出身の記者が、中国の近代化の歩みを長年追いかけてきた経験を振り返りました。急速に変化する街並みやインフラ整備、暮らしのデジタル化など、変わりゆく中国の日常を、現場から記録してきたという位置づけです。
ここで印象的なのは、「欧米ではない第三の視点」から中国を語っている点です。ブラジルという同じ新興国の立場から見ることで、成長や都市化のスピード、課題と可能性が、より立体的に描かれます。
- グローバル・サウス出身の記者が、中国の近代化の物語を伝える構図
- インフラや都市生活の変化を、長期的な取材経験にもとづいて語る試み
- 「外からの視線」でありつつも、単なる批評ではなく記録に重きを置いた語り口
国際ニュースでは、欧米メディアの視点が基準になりがちですが、このコーナーは「誰が語り手なのか」が変わるだけで、同じ現象も違って見えるということを示しているように見えます。
ペルー人詩人の「China-Peru Ties」 女性アイコンがつなぐ物語
「China-Peru Ties」では、ペルー出身の詩人が登場します。彼女は元戦場記者で、約20年にわたりアジアを拠点に暮らしてきた人物です。その経験を背景に、古代中国の女性の英雄や神話の登場人物を主役に据えた詩をつづっています。
戦場を取材してきた記者が、今は詩という形で女性の姿を描く。この転換には、「暴力や分断ではなく、言葉と文化で世界をつなぎたい」というメッセージが込められているようにも受け取れます。
- 古代中国の女性アイコンを通じて描かれる、強さとしなやかさ
- 戦場取材の経験を持つ詩人が、アジアでの生活を背景に紡ぐ静かなまなざし
- 中国とペルーという遠い地域を、個人のストーリーが結びつけている点
国家間の外交や経済協力とは別に、個々の表現者が言葉や芸術を通じてつくる「文化の橋」に光を当てたコーナーと言えます。ラテンアメリカとアジアの距離を、詩の一行ずつで少しずつ縮めていくような試みです。
北京発「World Conference of Classics」 文明のウィンウィンを掲げて
「World Conference of Classics」は、北京で開催され、中国とギリシャが共催した古典をテーマとする国際会議として紹介されました。キーワードは「civilizational win-win」と「united we stand」。古代の遺産を持つ二つの地域が、互いの古典を軸に対話を深める場として位置づけられています。
分断や対立が語られがちな国際情勢の中で、「文明と文明が共に立つ」というメッセージは象徴的です。この会議は、文明を競い合うものではなく、学び合い、補い合う存在として捉える視点を打ち出しています。
- 北京とギリシャが共催することで、東西の古典が一つの舞台に並ぶ構図
- 「civilizational win-win」というフレーズに込められた、相互尊重の発想
- 経済や安全保障ではなく、古典や思想を切り口にした国際対話
国際ニュースというと、どうしても緊張や対立が目を引きますが、こうした「静かな会議」は、その陰で進む長期的な文明間の対話を思い起こさせます。中国が自らの古い歴史を、他文明との共通言語として位置づけようとしている姿も見えてきます。
上海の「Let's Dance」 スポーツ女神とジャズが街を包む
「Let's Dance」では、上海を舞台にしたアートフェスティバルが取り上げられました。オリンピックを連想させる要素をまとったヴィーナス像が「スポーツ女神」として街角に並び、ジャズのリズムが流れる中で、中国の大都市が一つの大きなステージのように演出されています。
古典彫刻の象徴であるヴィーナス像にスポーツのイメージを重ねることで、「身体の美」と「競技の躍動感」を同時に表現している点が特徴的です。ジャズという音楽ジャンルと相まって、国境を越えた文化コードが街中で交差しているような印象を与えます。
- クラシックな女神像とスポーツモチーフを掛け合わせた、公共空間のアート
- ジャズと彫刻、ライトアップが一体となった、体験型の都市フェスティバル
- 上海というメガシティが、経済だけでなく文化と芸術の発信地として描かれている
日常の街をアートで包み込み、人びとを「踊りに誘う」ような演出は、都市の魅力をソフトなかたちで伝える手法の一つです。スポーツと芸術を重ね合わせることで、来たる大会やイベントのムードづくりにもつながっていきます。
4つの物語から見える、2020年代の中国イメージ
ブラジル人記者のまなざし、ペルー人詩人の言葉、古典をめぐる国際会議、上海のアートフェスティバル。『CGTN The Vibe』の4つのコーナーを並べてみると、2020年代の中国が世界に向けて発信しようとしているイメージの輪郭が見えてきます。
- 政治や経済のニュースだけでなく、文化・都市・個人のストーリーを前面に出す
- グローバル・サウスやラテンアメリカなど、多様な背景を持つ語り手を登場させる
- 古典や芸術、スポーツを通じて、「対立」ではなく「共に立つ」関係を描く
日本から国際ニュースを見るとき、こうした「どのような物語が、誰の声で語られているのか」という視点を意識してみると、映像の裏側にある意図や価値観も少しずつ見えてきます。
もし今後、同様の番組やコンテンツに触れる機会があれば、次のような問いを頭の片隅に置いてみるのも一つの方法です。
- 語り手の出身地や経歴は、中国をどう切り取る視野につながっているか
- 繰り返し登場するキーワードやイメージは何か
- 自分の暮らす社会が世界に向けて発信するとしたら、どんな物語になるか
国際ニュースを「情報」として受け取るだけでなく、「物語」として読み解くこと。その積み重ねが、世界を見る自分自身の視野を少しずつ広げてくれるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








