メキシコ人映画監督、家族映画で文化をつなぐ video poster
世界の視線がペルーで開かれているアジア太平洋経済協力会議(APEC)の会合に集まる一方で、メキシコの映画監督アンドレス・カイザーが「家族のホームムービー」という身近な素材から、ラテンアメリカとアジアを静かにつなぐ物語を発信しています。
ペルーのAPECと「もう一つの国際交流」
APEC Leaders’ Meeting は、貿易や投資、デジタル経済をめぐって各国・地域の首脳が議論する場として注目されています。同じタイミングで、中国国際テレビ局(CGTN)の番組『The Vibe』は、ラテンアメリカとアジアのあいだで文化をつなぐ一人の映画監督に焦点を当てました。
カイザー監督の作品は、国境を越えた経済協力とは異なる形で、人と人との記憶や感情を結びつける「もう一つの国際交流」として紹介されています。
メキシコで評価される新世代監督
アンドレス・カイザー監督は、メキシコ国内で作品が高く評価され、主要な映画賞を受賞してきました。スペイン語圏の映画界で実績を積みながらも、題材の中心に据えているのは派手なアクションでも政治の表舞台でもなく、自身の家族の物語です。
監督の祖父母は移民として新しい土地に根を下ろしました。いま、カイザー監督はその祖父母が撮影したホームムービーを通じて、移民家族の歴史と日常を見つめ直しています。
ホームムービーを10年かけて見直す
カイザー監督は約10年にわたり、祖父母が残したホームムービーの映像を見返し続けてきました。何気ない日常の記録、家族の集まり、ささやかな祝いごと。その積み重ねを編集し直すことで、家族の歩んできた時間の「定理」を探ろうとしているのが、映画『Time Theorem』です。
この作品は、移民として生きる家族の視点から、故郷と新しい土地のあいだで揺れる感情を静かに描き出します。派手な演出よりも、祖父母が残した映像そのものの力に耳を傾ける構成が特徴です。
上海国際映画祭が注目した『Time Theorem』
2023年、カイザー監督の『Time Theorem』は、上海国際映画祭の「Belt and Road Film Week」のショートリストに選ばれました。アジアをはじめとする各地から集まる作品の中で、個人的な家族の物語が選ばれたことは、移民と記憶というテーマが多くの観客に共通する関心事であることを示しています。
「Belt and Road Film Week」は、異なる文化圏の作品が出会い、対話する場でもあります。メキシコで撮られた家族映画が、上海というアジアの都市で紹介されることで、ラテンアメリカとアジアのあいだに新しい視線の往来が生まれています。
スマホ動画も、未来の「家族アーカイブ」になるかもしれない
カイザー監督が祖父母のフィルムから家族の歴史を読み解いたように、私たちが日々スマートフォンで撮影している動画や写真も、数十年後には大切な「家族アーカイブ」になるかもしれません。
- どの瞬間を残し、どの瞬間を撮らないか
- 誰の視点で記録するのか
- それを誰と共有するのか
こうした選択は、知らないうちに「家族の物語」の形を変えていきます。カイザー監督の仕事は、撮りためた映像をただ保存するだけでなく、見返し、つなぎ直し、そこから新しい意味を引き出す営みでもあります。
読者への小さな問いかけ
国際ニュースというと、首脳会談や経済指標に目が向きがちです。しかし、メキシコの一人の映画監督が祖父母のホームムービーから紡いだ物語も、国境を越えて人々の感情や記憶をつなぐ「もう一つのニュース」として存在しています。
ペルーでのAPECの議論が世界経済の大きな方向性を形作るのだとすれば、カイザー監督の『Time Theorem』が映し出すのは、個々の家族がどのように時代を生き抜いてきたのかという、より小さく、しかし私たちの生活に近いスケールの物語です。
通勤時間やスキマ時間にニュースを追いながら、ふとスマートフォンのカメラロールを開いてみると、自分の「Time Theorem」の素材がすでにそこに並んでいるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








