河南省登封の武術学校で育つ10代 拳で鍛えるのは体か、それとも心か video poster
中国・河南省登封市の武術学校では、10代の若者たちが毎日、蹴りや拳、棒術や剣術の稽古に打ち込みながら、体だけでなく「心」と「徳」も鍛えています。本稿では、その現場でどのように精神と人格が育まれているのかを見ていきます。
山あいに響くかけ声、止まらない稽古
登封の武術学校の屋外訓練場では、朝から夕方まで、若い生徒たちのかけ声が山々にこだましています。力強いキックとパンチ、棒を振り下ろす音、剣を振るう鋭い気合。ひとつひとつの動きに集中するうちに、額の汗だけでなく、迷いや甘えも少しずつそぎ落とされていきます。
ここで行われているのは、単なる体力づくりではありません。繰り返される基本動作や型の練習は、忍耐力や集中力を磨くと同時に、「自分を律する」という感覚を身につけさせる営みでもあります。
武術教育の土台にある「徳」
この武術学校では、稽古の前にまず「徳」について教え込まれます。「徳なき拳に魂はなく、誠なき武術に真の力はない」といった考え方が、指導のベースにあります。技の上達だけを追い求めるのではなく、人としてどうあるべきかを同時に学ぶことが重視されているのです。
生徒たちは、師範や先輩に対する敬意を示す礼、仲間への思いやり、約束を守る誠実さなど、日々の生活の中で具体的な行動を通じて道徳を身につけていきます。強くなるほど謙虚であること、勝ってもおごらず、負けても投げ出さないことが、繰り返し語られます。
10代が学ぶ「勝ち方」と「負け方」
試合やスパーリングの場面では、勝敗がはっきりとつきます。勝った生徒には、相手への敬意を忘れない態度が求められます。過度なガッツポーズや派手なアピールではなく、静かに一礼し、自分の課題を振り返ることが「本当の勝ち方」とされています。
一方、負けた生徒には、「なぜ負けたのか」「次にどう生かすのか」を自分の言葉で整理させる時間が設けられます。敗北を恥とするのではなく、成長の契機として受け止める練習です。このプロセスを繰り返すことで、打たれ強さと、失敗から立ち上がる力が育っていきます。
身体づくりから「ぶれない心」づくりへ
毎日の厳しいトレーニングは、ときに単調で、肉体的にも精神的にもきついものです。それでも生徒たちは、決められた時間に起き、決められたメニューをこなし、型や動きを何百回と繰り返します。その積み重ねが、筋力や柔軟性だけでなく、「やると決めたことを続ける力」を育てています。
スマートフォンやネット情報に囲まれ、集中を保つことが難しいと言われる時代に、こうした環境で鍛えられる「ぶれない心」は、武術の場を超えて、学業や将来の仕事、人間関係にも生きる資質となっていきます。
日本から見える、武術と教育のヒント
登封の武術学校で行われているのは、「技・体」と「徳・心」を切り離さずに教える教育です。この考え方は、日本の部活動や武道にも通じるものがありますが、日常生活の中でどこまで一貫して実践できるかは、あらためて考えるべきテーマかもしれません。
登封で汗を流す10代の生徒たちは、一つ一つの構えや一歩一歩の踏み込みを通じて、自分の中の弱さや迷いと向き合っています。拳や剣を振るうその背中には、「強さ」と同時に「誠実さ」や「責任感」を身につけようとする姿が重なります。武術を通じて心身を鍛える営みは、今の時代を生きる私たちに、「何をもって強さと呼ぶのか」という問いを静かに投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








