成都・龍興寺の都市再生が世界建築賞で人気賞 video poster
中国・成都の龍興寺都市再生プロジェクトが、建築界の「オスカー」とも呼ばれる2025年のArchitizer A+Awardsで一般投票によるPopular Choice Awardを受賞しました。歴史ある寺院と周辺の街区を、伝統を生かしつつ最先端技術でよみがえらせた取り組みとして注目されています。
建築界の国際賞で認められた成都・龍興寺
今回受賞したのは、成都の彭州に位置する龍興寺周辺を対象にした「Longxing Temple Urban Renewal Project」です。かつて老朽化した街区だったエリアに新しい命を吹き込み、歴史的な雰囲気を残しながら現代的な都市空間として再生した点が評価されました。
Architizer A+Awardsは、世界各地の建築を対象とする国際的な建築賞で、建築界の「オスカー」とも呼ばれています。その中で一般投票によるPopular Choice Awardを獲得したことは、プロジェクトが専門家だけでなく幅広い人々の支持を集めたことを示しています。
伝統と現代デザインをつなぐ都市再生
龍興寺のプロジェクトでは、長い歴史を持つ地域の文化や意匠を大切にしながら、新しいデザインを取り入れるアプローチが取られました。北京建築設計研究院(Beijing Institute of Architectural Design)が計画を担い、地域の歴史的価値を現代にどう伝えるかが大きなテーマとなりました。
プロジェクトは、何世紀にもわたって受け継がれてきた四川の文化的な要素と、現代建築の感覚を丁寧に組み合わせています。単に「古いものを保存する」だけでなく、現代の生活や都市機能に合うかたちで再構成することで、過去と現在のあいだに新しい関係性をつくり出そうとしている点が特徴です。
AIとBIMが支える「新しい職人技」
この都市再生は、伝統と同じくらいテクノロジーにも支えられています。施工を担当した中国建築第三工程局(China State Construction Third Engineering Bureau)は、次のような技術を導入しました。
- AI監視システム:工事の進行や構造の安全性をリアルタイムでモニタリングし、品質と安全を高いレベルで管理。
- プレハブ鉄骨構造:工場であらかじめ部材を製作し、現場で組み立てる工法により、精度と工期の両方を最適化。
- BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング):建物の情報をデジタル上で一元管理し、設計と施工のズレを減らしながら、歴史的な意匠を正確に再現。
こうした技術は、「古い様式を新しい工法でよみがえらせる」ための基盤になっています。伝統的なディテールを守りながらも、構造の安全性や施工の効率を高めることで、歴史とテクノロジーの両立を図っています。
国家レベルのパイロットが示す中国の都市再生像
龍興寺の都市再生プロジェクトは、国家レベルのパイロット事業として位置づけられています。これは、中国における都市再生の新しい方向性を示すモデルケースとして期待されていることを意味します。
今回の受賞は、「過去を尊重しながら未来を受け入れる」都市づくりの姿勢を世界に向けて発信する機会にもなっています。歴史的な寺院とその周辺の街区を壊して一から建て直すのではなく、文化的なレイヤーを残しながらアップデートしていくやり方は、多くの都市が直面する課題への一つの回答といえます。
日本の都市再生へのヒント
少子高齢化や空き家問題を抱える日本の都市にとっても、成都・龍興寺の事例は示唆に富んでいます。本文で紹介した要素は、日本の文脈でも次のようなヒントとして考えられます。
- 歴史資源を中心にしたまちづくり:寺社や古い街並みを「残すか壊すか」ではなく、「どう更新するか」という視点で捉える。
- 先端技術はあくまで裏方に:AIやBIMなどのデジタル技術を前面に押し出すのではなく、職人技や歴史的な雰囲気を支える基盤として使う。
- 老朽化したエリアの価値を再発見する:かつて「さびれた」と見なされていた場所に、文化や観光、日常生活の新しい可能性を見いだす。
2025年のArchitizer A+Awardsでの受賞は、一つのプロジェクトの成功を超えて、これからの都市再生のあり方を考えるきっかけにもなります。龍興寺のような事例を手がかりに、私たちの身近な街をどのように次の世代へ引き継いでいくのか、改めて問い直してみるタイミングかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








