国連プラスチック条約交渉が決裂 生産削減巡り溝、協議は続行へ
国連が目指す「プラスチック汚染を抑えるための世界条約」の交渉が韓国・釜山で行われましたが、各国は合意に達せず、決定事項の多くが先送りされることになりました。本稿では、なぜ交渉が難航したのか、国際ニュースとしてのポイントを整理します。
釜山での最終会合、条約案まとまらず
韓国・釜山で開かれた第5回国連政府間交渉委員会(INC-5)は、本来であればプラスチック汚染対策のための法的拘束力を持つ世界条約の最終案をまとめる予定でした。しかし各国の立場の違いは大きく、条約の基本的な射程についてすら一致できませんでした。
その結果、各国は重要な決定を先送りし、後日あらためて「INC-5.2」と呼ばれる追加会合を開いて協議を続けることでしか合意できませんでした。国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は「依然として根強い対立が残っている」と述べ、溝の深さを認めています。
最大の争点は「プラスチック生産の上限」
今回の国際交渉で最大の争点となったのが、プラスチックそのものの生産量を世界的に抑えるかどうかという点です。パナマが提示し、100を超える国々が支持した案では、世界全体でのプラスチック生産削減に向けた道筋を条約に明記することが提案されました。
これに対し、別の案では生産量の上限は設けず、廃棄物対策など下流の対策に重点を置く内容となっていました。どこまで「上流」(生産段階)に踏み込むかをめぐり、各国の意見は大きく割れています。
争点となったのは、
- プラスチック生産に上限を設けるかどうか
- 製品設計や有害な化学物質など、プラスチック製品のライフサイクル全体をどう管理するか
- 途上国が条約を実施するための資金支援の仕組みをどう設計するか
といったポイントです。ルイス・バヤス・バルディビエソ議長が公表した改訂文書には、これらの論点に関する複数の選択肢が残されたままで、最終合意からはほど遠い状態であることが示されました。
「自発的な取り組みだけでは不十分」途上国側の危機感
特に、生産削減を求める国々からは「実効性のある条約でなければ意味がない」という声が上がっています。ルワンダ環境管理庁のジュリエット・カベラ長官は「自発的な取り組みだけに頼る条約は受け入れられない」と強調し、「失敗することを前提にした条約ではなく、目的にかなう条約を交渉すべきだ」と呼びかけました。
プラスチック汚染が海洋や生態系、社会に与える影響が懸念されるなか、途上国を含む多くの国々は、生産抑制や有害化学物質の管理など、より踏み込んだルールを求めています。
産油国・石油化学産業を抱える国の慎重姿勢
一方、石油化学産業を抱える一部の産油国は、生産削減に強く慎重な姿勢を示しています。サウジアラビアなど少数の石油化学生産国は、生産量の削減に踏み込む提案に反対し、手続き論をめぐる議論を通じて交渉の進行を遅らせようとしたとも伝えられています。
サウジアラビア代表のアブドルラフマン・アル・グワイズ氏は「合意は最初から存在しなかった」と述べ、「われわれが一貫して条約の範囲外だと主張してきた条文が、いつの間にか文書に入り込んでいる」と不満を表明しました。
データ提供会社ユノミアによると、2023年の一次ポリマー(プラスチックの原料)生産量の上位5か国は、中国、アメリカ、インド、韓国、サウジアラビアでした。プラスチック生産に大きな影響力を持つ国々が交渉の行方を左右する構図が、あらためて浮かび上がっています。
パリ協定級の「大枠合意」となるはずだった条約
もし今回、主要な対立点が乗り越えられていれば、このプラスチック条約は、2015年のパリ協定以来で最も重要な環境関連の国際合意の一つになり得るとみられていました。プラスチック汚染対策は世界規模の問題であり、各国の政策や産業構造に直接影響を与えるテーマだからです。
しかし現時点では、条約案の柱となる部分ですら選択肢が並んだままで、どの方向性に収れんしていくのかは見通せません。合意の難しさは、環境保護と経済・産業の利害をどう折り合わせるかという根本的な課題の大きさを映し出しています。
COP29直後の先送りが示すもの
今回の先送りのニュースは、アゼルバイジャンのバクーで開かれたCOP29が波乱含みで閉幕してから、ほどなくして伝えられました。環境関連の国際交渉が相次いで難航していることがうかがえます。
2025年12月現在、プラスチック条約づくりのプロセスは続いており、「INC-5.2」でどこまで具体的な妥協案が示されるのかが次の焦点です。生産削減を強く求める国々と、廃棄物対策を中心に据えたい国々との間で、どのような中間案が描けるのかが問われています。
私たちはこのニュースをどう受け止めるか
今回の国連プラスチック条約交渉は、国際政治のニュースであると同時に、日常生活ともつながるテーマでもあります。プラスチック製品の多くは、私たちの消費行動の結果として生産・使用され、最終的にはどこかで廃棄されます。
交渉の行方を見守りつつ、
- 自国の政府が国際交渉でどの立場をとっているのか
- 企業や自治体がどのような削減・再利用の取り組みを進めているのか
- 個人としてどのように使い捨てプラスチックへの依存を減らせるか
といった点を意識してニュースを追っていくことが、グローバルな動きを自分ごととして捉える一歩になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








