干ばつ地域の排水を「藻」で再生 豪州研究チームの新技術とは
干ばつに苦しむ地域の水不足を、藻類の力で和らげようという試みが進んでいます。オーストラリア南部の研究チームが、排水を低コストかつ省エネで再生する新しい処理システムを実証中で、農業用水などへの活用が期待されています。
干ばつ地域の排水を「資源」に変える試み
Flinders Universityの研究者らは、干ばつの影響を受ける農村部で、排水を再利用可能な水に変えるグリーンな解決策を追求しています。ポイントは、自然界に存在する藻類を使って、汚れた水を浄化することです。
大学の声明によると、この技術は飲み水ではなく、農地への灌漑(かんがい)や各種の非飲用用途に使える水質まで排水を高めることを目指しています。従来型の下水処理よりもコストとエネルギー消費を抑えつつ、地方コミュニティが抱える深刻な水不足に対応しようとしています。
「高効率藻類池(HRAP)」という仕組み
研究チームが使っているのは、高効率藻類池(High-Rate Algal Pond、HRAP)と呼ばれるシステムです。南オーストラリア州の地方自治体ではすでにこの方式が活用されており、次のような仕組みになっています。
- 浅い水路(チャネル)に排水をためる
- 低エネルギーのパドルホイール(水車)が水をゆっくり循環させる
- 水の中で、微細な藻類と細菌が増え、汚染物質を取り込んで浄化する
太陽光と生物の働きを利用しながら、シンプルな構造で排水処理を行うのがHRAPの特徴です。機械設備に過度に頼らずに水質を改善できる点が注目されています。
在来の糸状藻類で処理効率と回収性をアップ
Flinders Universityの研究者たちは、既存のHRAPをさらに改良するため、地域に生息する在来の糸状藻類を組み込んだ新しい方式を試験しています。糸状藻類が細菌と一緒になって塊(バイオマス)を作ることで、処理効率と固形分の回収がしやすくなるのが狙いです。
博士課程研究者のSam Butterworth氏は、藻類と細菌が顆粒状の塊を作る現象について「密度が高く、素早く沈むバイオマスを形成し、処理水の質を高める有望な方法だ」と説明しています。
こうしたバイオマスは沈降しやすく、池の底からまとめて取り除きやすいため、処理後の水がより透明になりやすくなります。藻類をフィルターのように使いながら、大きな追加設備を必要とせず水をきれいにする発想と言えます。
低コスト・省エネで地方の水不足に向き合う
大学の説明によると、この藻類ベースの排水処理は、次のような利点を持つとされています。
- 従来の下水処理よりもエネルギー消費を抑えられる
- 構造が比較的シンプルで、導入・運用コストを低く抑えやすい
- 灌漑などの非飲用用途に適した水質を確保しやすい
干ばつに見舞われる農村地域では、高価でエネルギー集約型の処理施設を新たに建設するのは簡単ではありません。藻類を活用したシステムは、地方コミュニティが既存の施設を活かしながら水資源を増やす選択肢となる可能性があります。
高度な「SBR型HRAP」でさらなる効率化へ
研究チームは現在、南オーストラリア州の排水処理施設で、高度なシーケンシング・バッチ・リアクター(Sequencing Batch Reactor、SBR)型HRAPの実証試験も進めています。
この方式では、生物学的な処理プロセスを時間ごとに制御し、汚水の投入、処理、沈殿、排出といった工程を順番に行うことで、処理速度と効率の最適化を目指しています。大規模な新規投資を行わずに性能を引き上げることが狙いとされています。
生物の力で「循環する水」を取り戻す
水不足が深刻化するなか、排水を「捨てるもの」から「循環させる資源」に変える技術の重要性は高まっています。南オーストラリアで進む藻類を使った排水再生の試みは、干ばつに直面する他地域にとっても、低コストで環境負荷の少ない選択肢の一つになりうる動きです。
身近な藻が、私たちの水の未来を支える存在になり得るのか。今後の実証結果と実用化の行方が注目されます。
Reference(s):
Researchers use algae to recycle wastewater in drought-hit regions
cgtn.com








