ナイジェリア中部で農民と牧畜民の衝突続く 気候変動と土地不足が火種 video poster
ナイジェリアの「ミドルベルト(中部の肥沃地帯)」で、農民と牧畜民(遊牧的に牛を移動させる人々)の衝突が、いまも深刻な社会問題として続いています。背景にあるのは、気候変動による牧草地の縮小と、人口増などによる土地の圧力です。
何が起きているのか:畑と放牧地が重なる場所で
乾燥化や降雨の不安定化で、従来の放牧ルートや牧草地が使いにくくなり、牧畜民が南へ移動しやすくなっています。その結果、定住して耕作する農民の土地と接触する機会が増え、家族の生計を左右する「境界線」が緊張を生んでいます。
現場では、牛が作物の植わった土地に入り込むかどうかをめぐり、互いに警戒しながら向き合う状況があると伝えられています。こうした小さな摩擦が、暴力へと拡大することがあるといいます。
被害の大きさ:長期化する国内の最難題の一つ
ナイジェリア下院(House of Representatives)は、2001年以降に6万人以上が死亡したとの推計を示しています。地域によっては共同体が丸ごと移転を余儀なくされ、食料生産の落ち込みや、都市への人口流出につながっているとされます。
また、地元報道などによれば2024年だけでも400人以上が死亡したとされ、近年も犠牲が止まっていません。
当事者の声:同じ土地を前に、見えている景色が違う
牧畜民のルックマン・アダム氏は、放牧の最中も近くの農民に見られていると感じるといい、対立の構図が固定化しつつある苦しさを語っています。
一方、農民のリベットシャク・アンソニー氏は、襲撃で親族を失い避難した経験から共存の難しさを訴え、牧畜のあり方として「牛を一定の場所で飼う(牧場型)」を求めています。
同じ土地を前にしながら、片方は「生存のための移動」、もう片方は「生活を支える畑の防衛」として体験している──この非対称が、話し合いの前提を難しくしているようにも見えます。
気候変動が押し広げる「接触面」
農業の専門家カレブ・メネグベ氏は、原因は人為的要因と自然要因の両方にあるとした上で、草の生える土地が減り、移動型の牧畜(ノマド)が定住農業とぶつかりやすくなっていると指摘します。移住・移動の増加も絡み、緊張が解けにくい構造になっているといいます。
解決策としての「放牧から牧場へ」:制度設計が鍵に
専門家の間では、衝突を減らすためにはオープン・グレージング(自由放牧)から、規制された牧場型(ランチング)へ移行する必要があるという見方があります。土地利用のルール、飼料生産、家畜の改良、移動を前提にしない生産性の向上など、複数の要素を同時に進める発想です。
ナイジェリア政府も、家畜開発のための新省(Ministry of Livestock Development)を設置し、改良品種の導入、持続可能な牧草地の整備、牧場型システムへの転換を進めているとしています。
「次の衝突」より先に変化は届くのか
ただ、土地をめぐる不信が残る現場では、制度が整うまでの時間差そのものがリスクになります。農民と牧畜民が見つめるのは、今日の畑と今日の群れです。変化が遅ければ遅いほど、次の摩擦が次の悲劇につながりかねません。
気候変動、人口、暮らし、そして安全保障が交差するミドルベルトの問題は、単なる「地域の争い」ではなく、気候の時代の社会設計を問う出来事として、静かに重みを増しています。
Reference(s):
Climate change, land pressure drive deadly clashes in Nigeria
cgtn.com








