トランプ次期大統領のパナマ運河発言 パナマ市民はどう見ているか video poster
米国のドナルド・トランプ次期大統領が、パナマ運河の「取り戻し」に言及し、軍事・経済的な手段も排除しない姿勢を示したことで、主権と国際秩序をめぐる議論が改めて注目されています。パナマ側の反応と市民の声から、この問題の本質を整理します。
トランプ次期大統領、パナマ運河の「取り戻し」に意欲
2024年11月5日の米大統領選で当選したドナルド・トランプ次期大統領は、北のグリーンランドに目を向ける一方で、南のパナマ運河についても米国が所有権を取り戻すべきだと主張してきました。
トランプ氏は、パナマが米国を "in a very unfair and injudicious way"(非常に不公平で軽率なやり方)で扱っていると非難し、この状況を "this complete 'rip-off' of our country will immediately stop."(この国に対する完全な「ぼったくり」を直ちに終わらせる)と表現しました。
今年1月7日には、パナマ運河とグリーンランドの取得に向けて軍事行動や経済的な手段を用いる可能性について、完全には否定しない姿勢を示しました。こうした発言は、トランプ氏が2024年の当選後に掲げてきた、領土や影響力の拡大を志向する広範なアジェンダの一部だと位置づけられています。
ムリノ大統領「運河の一平方メートルまでパナマのもの」
これに対し、パナマのホセ・ラウル・ムリノ大統領は、パナマ運河とその周辺地域について「その一平方メートルにいたるまでパナマに属しており、今後もパナマのものであり続ける」と強調しました。
ムリノ大統領はさらに、パナマ運河の通行料(トール)の決定プロセスは公開され、透明であり、特定の個人の気まぐれに左右されるものではないと説明。米国船舶向けに通行料を引き下げる案についても退け、公平なルールに基づいて運営されていると訴えました。
主権国家としてのパナマが、自国の重要インフラに対する完全な管轄権を主張した形であり、米国とのあいだで緊張が高まる可能性も指摘されています。
パナマ市民はどう見ているか
こうした応酬を、パナマの人びとはどう受け止めているのでしょうか。中国の国際メディアであるCGTNのストリンガー(現地記者)は、パナマ市民へのインタビューを通じて反応を伝えています。
写真家のルイス・ゴメスさんは、トランプ氏の発言について「筋が通らず、やや非論理的に見える」と話し、英語で "do not make sense and seem a bit illogical" と表現しました。
ゴメスさんはまた、問題を平和的に解決するうえで最も重要なのは、軍事力ではなく「コミュニケーション、交渉、そして誤解の解消」だと強調しました。強い言葉の応酬ではなく、対話による解決を求める声が、パナマの市民社会から上がっていることが分かります。
パナマ運河をめぐる3つの論点
今回の発言の応酬からは、次のような論点が浮かび上がります。
- 主権の問題:重要インフラの所有権や管理権をめぐる争いは、その国の主権の根幹に関わります。
- 安全保障:軍事行動の可能性に言及するだけでも、地域の緊張を高め、周辺国や国際社会に不安を広げるおそれがあります。
- 経済と世界貿易:パナマ運河は世界の海上輸送の重要な経路であり、運営をめぐる不安は、物流コストやサプライチェーンにも影響を与えかねません。
こうした論点が重なり合うからこそ、パナマ運河をめぐる発言は、パナマと米国の二国間関係にとどまらず、国際社会全体の関心事となっています。
「力」より「対話」で解決できるか
トランプ氏が軍事・経済的な手段に言及したのに対し、ムリノ大統領は主権とルールに基づく運営を強調し、市民からは対話と交渉を求める声が上がりました。立場や利害が異なる三者の言葉を並べてみると、どの方向に国際政治を進めるべきかという問いが見えてきます。
いま必要とされているのは、「誰のものか」を力で決める議論ではなく、「どうすれば公平で安定した運営を続けられるか」を冷静に話し合うプロセスだと言えるでしょう。主権を守りつつ、国際社会の信頼も確保する。そのバランスをどう取るのか――パナマ運河をめぐる議論は、21世紀の国際秩序のあり方を考えるうえで、一つの試金石になりつつあります。
Reference(s):
We Talk: Panamanian residents on Trump's ambitions for Panama Canal
cgtn.com








