トランプ政権の25%関税で米国金属価格が急騰 アルミに最大の打撃
米国の産業用金属価格が今週も上昇を続けています。背景にあるのは、トランプ米大統領が発表した鉄鋼・アルミニウムへの25%の輸入関税です。来年3月12日の発効を前に、国内供給の不足懸念が強まり、市場が先回りして価格に織り込み始めています。
何が起きているのか:米国で金属価格が急伸
米国の金属市場では、今週火曜日の取引で鉄鋼やアルミニウムなど産業用金属の価格が一段と上昇しました。関税そのものはまだ発効していませんが、輸入品に25%の追加コストが乗るとの観測から、トレーダーが先に値上げを進めているためです。
今回の措置の狙いは、苦境にある国内の金属メーカーを保護することだとされています。しかし、閉鎖された工場の再稼働や新規設備の建設には時間がかかります。その間、国内産だけでは需要を満たせず、輸入に頼らざるを得ない構造はすぐには変わりません。
アルミニウムに集中するリスク
最も大きな影響が懸念されているのがアルミニウムです。アルミニウムは自動車や航空機などの輸送機器、建設、飲料缶などの包装に広く使われる基礎素材で、米国の需要の約8割超が輸入で賄われているとモルガン・スタンレーは試算しています。
ロンドン金属取引所の指標価格に上乗せされる米国向けアルミニウムのプレミアム(上乗せ料金)は、先週金曜日以降だけで4分の1上昇し、1ポンドあたり35セントに達しました。トランプ氏が大統領に選出されて以降でみると、その水準は約6割も上がっています。
コメルツ銀行のフォルクマー・バウアー氏は、輸入を国内生産に置き換えるには「ごく短期間でアルミニウムの生産能力を大幅に拡大する必要がある」と指摘しますが、現実にはそれは容易ではありません。
足りない国内生産能力
米国地質調査所のデータによると、米国内の一次アルミ生産量は昨年わずか67万トンで、2000年の370万トンから大きく落ち込みました。一方で国内需要は430万トンに達しており、輸入への依存度が高い状況が浮き彫りになっています。
- 休止中の生産能力:約47万トン分は理論上再稼働可能
- しかし、事前準備の状況にもよるが、再開には少なくとも6~12カ月必要との見方
- 新たな製錬所の建設となれば、さらに長い時間と投資が不可欠
ワシントンに本拠を置く業界団体アルミニウム協会も、「成長を続けるアルミ産業に必要な原料を供給するだけの製錬能力が米国にはない」として、関税そのものを評価しつつも、国内生産の拡大が追いついていない現状に懸念を示しています。
アルミスラブやワイヤーロッドなどを扱うニューヨークの流通企業ペレニアルのブライアン・ヘッセ最高経営責任者は、仕入れ価格の上昇分を顧客に転嫁せざるを得ないとしつつ、「国内生産の拡大には賛成だが、数年単位で慎重に進めるべきだ」と語りました。
鉄鋼と銅にも広がる波紋
鉄鋼も例外ではありません。米国は需要の約4分の1を輸入に頼っており、今回の関税発表を受けて、半製品である熱延鋼板の国内価格は先週木曜日以降だけでほぼ4割も上昇しました。
UBSのアナリスト、アンドリュー・ジョーンズ氏は、多くの製品で「国内の供給増だけでは輸入減少を補いきれず、関税が実施されれば米国の価格は大きく上振れする」と指摘。その上で、「より深刻なのは、貿易摩擦の激化が経済成長そのものの重しとなるリスクだ」と警鐘を鳴らしています。
一方、銅に対しては関税はまだ課されていませんが、トランプ氏が先週、銅への追加関税を示唆したことで、先行き不透明感が強まりました。ニューヨークの先物市場(COMEX)で取引される米国向け銅の価格は、ロンドン金属取引所の指標価格に対するプレミアムが今週月曜日に過去最高水準まで拡大。その後やや縮小したものの、1月末の約2倍の高止まりとなっています。
カナダと世界市場の視線
カナダのアルミ生産者は、競争する用意はあるとしながらも、25%関税の価格への影響を懸念しています。カナダ・アルミニウム協会のジャン・シマール最高経営責任者は、トランプ氏の第1期政権で導入された10%の関税が米国のアルミ産業に大きな混乱を招いたと振り返り、「10%でもあれだけ混乱したのだから、25%が米国経済に与える打撃は想像を超える」と語りました。
貿易摩擦が激化し、世界経済の減速懸念が強まるとの見方から、火曜日の世界の産業用金属市場では、米国とは対照的に多くの金属価格が下落しました。米国発の関税ショックが、世界の需給や投資マインドに波紋を広げていることがうかがえます。
日本の読者にとっての意味:サプライチェーン時代の関税をどう見るか
今回の動きは、米国の国内政策であると同時に、グローバルなサプライチェーンのあり方を問う問題でもあります。アルミや鉄鋼は、自動車、建設機械、電子機器など、多くの完成品のコスト構造を左右する基礎素材です。
関税によって米国の素材価格が上昇すれば、米国向けに輸出している日本企業にも、次のような形で影響が波及する可能性があります。
- 米国で生産する自動車・機械メーカーのコスト増加
- 最終製品価格の上昇を通じた需要の減速
- 調達先の見直しや在庫積み増しによるサプライチェーンの再編
一方で、国内産業を守るための保護主義的な政策が、長期的にどこまで産業競争力の強化につながるのかという論点もあります。短期的な価格上昇だけでなく、中長期的な産業構造の変化や国際協調とのバランスをどうとるのか。日本にとっても他人事ではない問いが、米国の金属市場から浮かび上がっています。
Reference(s):
cgtn.com








