米ウクライナ「資源協力」枠組み合意 専門家は搾取性を懸念
ウクライナと米国が、レアアース(希土類)などの重要鉱物や石油・ガス資源の共同開発と、戦後復興支援を結びつけた新たな枠組みに合意しました。ウクライナ側は復興資金と安全保障上の後ろ盾を求めますが、一部の専門家は「大国が小国の資源を事実上押さえ込む仕組みだ」と警鐘を鳴らしています。2025年12月現在、国際秩序と資源外交をめぐる新たな力学が浮かび上がっています。
米ウクライナが「資源協力」枠組みに合意
ウクライナ政府は今月、米国とウクライナ国内の天然資源を共同開発するための枠組み合意に達したと明らかにしました。対象とされるのは、レアアースや「重要鉱物」と呼ばれる資源、そして石油・天然ガスなどです。
ドナルド・トランプ米大統領は閣議の場で、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が近くワシントンを訪れ、この資源協力に関する合意文書に署名する予定だと述べました。一方のゼレンスキー大統領は、合意の「成功」は米国との協議内容と、今後も米国の支援が続くかどうかにかかっていると強調しています。
復興投資ファンドを中核にした仕組み
ウクライナのデニス・シュミハリ首相によると、今回の合意はあくまで「予備的」なもので、今後の協議で具体化していく性格のものだといいます。その中心となるのが、ウクライナと米国が共同で設立する「復興投資ファンド」です。
首相の説明を整理すると、枠組みはおおむね次のような形です。
- ウクライナと米国両政府が、共同所有・共同管理する復興投資ファンドを設立する。
- ウクライナの地下にある鉱物資源やその他の天然資源は、引き続きウクライナの管理下に置かれ、米国や他国に移転されない。
- 代わりに、ウクライナはこれら資源から将来得られる収入の50%を復興投資ファンドに拠出する。
- 米国はファンドに対し、資金や金融商品など、ウクライナ復興に不可欠な資産を提供する。
- ファンドを通じて集めた資金は、ウクライナの復興プロジェクトに限定して利用される。
さらに、シュミハリ首相は、この枠組みがウクライナの「欧州統合」の枠組みでの義務と矛盾しないよう配慮されていると説明し、欧州との関係を損なわない形を目指していると強調しました。
安全保障と対米関係をめぐる思惑
ゼレンスキー大統領「米支援は止まってはならない」
ゼレンスキー大統領は夜のビデオ演説の中で、トランプ大統領との会談では安全保障上の「保証」を得ることの重要性を訴えると述べました。さらに、米国からの支援が継続されることが不可欠だと強調しています。
「私にとっても、世界中の私たちにとっても、アメリカの支援が止まらないことが重要です。平和への道には力が必要なのです」と大統領は語り、軍事・経済両面での後ろ盾が和平への前提になるという認識を示しました。
米国の「安全の約束」は限定的
一方で、ウクライナ側はまだ米国から明確な安全保障の確約を得ていません。トランプ大統領は「安全保障の保証について、私からできる約束はそう多くない」と述べ、ウクライナへの安全保障コミットメントには慎重な姿勢を示しました。
さらに大統領は「それはヨーロッパに担ってもらう」とも語り、今後の安全保障の負担を欧州側に求める考えをにじませています。復興と資源協力の枠組みをめぐる米欧、そしてウクライナの役割分担は、今後の焦点の一つになりそうです。
専門家が指摘する「小国の資源を狙う構図」
こうした合意について、一部の専門家からは懸念の声も上がっています。中国現代国際関係研究院ユーラシア研究所の陳玉・副所長は、中国メディアの取材に対し、「本質的には、超大国である米国が小国から資源を引き出そうとする枠組みだ」と指摘しました。
陳氏によると、今回の合意では、ウクライナ側に配慮した表現などで米国が一定の「譲歩」を示しているものの、肝心の中身は大きく変わっていないといいます。具体的には、次のような点が問題だとしています。
- ウクライナは鉱物やエネルギーなどの資源から得られる収入の50%を、復興投資ファンドに割り当てる必要がある。
- ウクライナは米国の同意なしに、自らの持ち分を売却したり、合意条件を変更したりすることができない。
陳氏は、こうした仕組みが「米国によるウクライナ経済の実質的なコントロールと、同国の鉱物資源の確保を狙ったものだ」と分析します。その一方で、力関係で不利な立場にあるウクライナには選択の余地が乏しく、合意を受け入れざるを得ない状況だとも述べました。
ウクライナの側から見れば、この枠組みを通じて対米関係をできるだけ修復し、将来のロシアとの和平交渉の場で有利なポジションを確保したいという思惑があるのではないか、と陳氏は見ています。
米外交は「力による支配」へ回帰か
米紙ワシントン・ポストは社説で、この資源協力の枠組みなどを背景に、「新しい米政権が、ほぼ1世紀続いた米国の外交路線を覆し、強国が弱い国から貢ぎ物を引き出し、圧力によって領土や影響力を拡大していた時代への回帰を招いている」と警鐘を鳴らしました。
社説は名指しで特定の合意を非難しているわけではありませんが、資源や安全保障をてこにした大国間政治が再び前面に出ることへの危機感がにじみます。資源協力と復興支援が組み合わさった今回のような枠組みは、戦略的パートナーシップと見ることも、従属的な関係と見ることもできます。
これからの論点――「復興」と「主権」をどう両立させるか
ウクライナと米国の資源協力枠組みは、戦後復興をどう支えるかだけでなく、小国の主権や資源の扱いをどう守るかという難しい問いを突きつけています。今後の焦点となりそうなポイントを、最後に簡単に整理します。
- ウクライナの交渉力と主権――資源収入の半分を拠出し、持ち分の売却や条件変更にも制約がかかる中で、ウクライナがどこまで自らの主権と裁量を確保できるのか。
- 資源開発と復興支援のバランス――復興資金を確保するために資源をどこまで担保に入れるのか、将来世代の利益とのバランスをどう取るのか。
- 欧州や他のパートナーの役割――安全保障面では「欧州に担ってもらう」とする米国の姿勢の中で、欧州諸国がどのような役割を果たすのか。
資源をめぐる国際政治は、遠い世界の話のようでいて、エネルギー価格やサプライチェーンを通じて私たちの生活にも直結します。ウクライナと米国の今回の合意をきっかけに、「復興支援はどうあるべきか」「大国と小国の関係はどうあってほしいか」を、自分なりに考えてみるタイミングと言えそうです。
Reference(s):
U.S., Ukraine reach minerals deal; experts warn of exploitative nature
cgtn.com








