イラン記者が語る米軍の核施設攻撃「外交の扉は閉ざされた」
米軍によるイランの核施設への攻撃を受け、イランのベテラン記者メフディ・ラティフィ氏が中国の国際メディアCGTNの独占インタビューで「外交の扉は閉ざされた」と強く批判しました。交渉の最中に核関連施設を標的にした今回の行動は、イランと米国の関係だけでなく、中東全体の安定と国際秩序にも影響を与えかねない一手として注目されています。
- 米軍がイランの核関連施設3カ所を攻撃
- ラティフィ氏「米国は自ら外交の扉を閉ざした」
- 物理的被害は限定的としつつ、軍事的報復の可能性を示唆
- NPTや国際法の観点からも問題だと指摘
CGTN独占インタビューで何が語られたか
現地時間の日曜日に放送されたCGTNのインタビューで、国際問題を15年以上取材してきたイラン人ジャーナリストで国際情勢アナリストのメフディ・ラティフィ氏は、米軍によるイラン核施設への一連の攻撃を「外交の扉を閉ざす行為」であり、「国際的な規範に反する」と非難しました。
ラティフィ氏は現在、イランの複数の主要報道機関で編集責任者を務めており、イランの核開発問題や欧州・米国との関係を専門としています。そのラティフィ氏が、今回の攻撃は単なる軍事行動にとどまらず、進行中だった外交プロセスそのものを傷つけるものだと警鐘を鳴らしました。
「交渉中に核施設を攻撃」外交の信頼を損なうと指摘
ラティフィ氏によると、米軍の攻撃が行われたのは「イランと複数の欧州諸国が外交的な解決に向けた交渉を進めている最中」でした。氏は「米国は3カ所のイランの核関連施設を攻撃することで、外交の扉を自ら閉ざした」と述べ、対話の継続を困難にしたと主張しました。
交渉と並行して軍事行動が行われることは、相手国に「合意しても守られないのではないか」という不信を生みます。ラティフィ氏は、核施設という最もセンシティブなインフラを標的とした点が、信頼の回復を一段と難しくしていると見ています。
被害は限定的としつつも「軍事的報復」を予告
一方で、ラティフィ氏は、今回の攻撃による物理的な被害は限定的だったと説明します。標的となった核関連施設は「事前に避難が完了しており、人員や周辺住民、地域への重大な被害はほとんどなかった」とし、インフラへの決定的な損傷には至っていないと指摘しました。
しかし、だからといって事態が沈静化に向かうわけではないと警告します。「今後数時間から数日のうちに、イラン・イスラム共和国は軍事的に米国へ対応するとみられる。その状況下では、地域内の米軍基地や米軍部隊は非常に厳しい立場に置かれるだろう」と述べ、軍事的エスカレーションの可能性に言及しました。
インタビューの中で、ラティフィ氏は具体的な作戦内容には触れていませんが、米国の拠点が「非常に厳しい条件」に置かれると強調し、緊張の長期化を示唆しました。
イスラエルの影響力をめぐる見方
ラティフィ氏は、今回の攻撃の背景にはイスラエルの存在があると見ています。「多くの分析者が認めているように、この地域における米国の外交政策の大部分はイスラエル政権に左右されている。イラン攻撃もイスラエルが米国に指示したものだ」と述べ、米国の判断にはイスラエルの意向が強く反映されていると主張しました。
こうした認識は、イラン社会の中で広く共有されているとされます。米国の行動が別の地域プレーヤーの利害と結びついているという見方は、対話相手としての米国への信頼を一層揺るがす要因となり得ます。
NPTと国際法の観点からの批判
ラティフィ氏はまた、核関連施設を軍事攻撃の対象とすることは、核不拡散条約(NPT)の加盟国が守るべき国際的なルールに反すると指摘しました。「核施設を標的にすることは、NPT加盟国の国際法上の原則に違反する」と述べ、法的な側面からも今回の攻撃を問題視しました。
イランの核問題は長年にわたり国際社会の関心事となってきましたが、ラティフィ氏は、軍事攻撃ではなく協議と合意に基づく枠組みこそが、本来あるべき対応だという立場を強調しています。交渉の途中で軍事行動に踏み切ることは、その枠組みへの信頼を根本から揺るがす、というのが氏の見方です。
JCPOAの経験と、根強い対米不信
ラティフィ氏によれば、イラン国内では、米国との外交に対する期待はもともと高くなかったといいます。「イランの人々は、最初から米国との外交に楽観的だったことは一度もない」と述べ、その背景として、イラン核合意(JCPOA)とその後の経緯を挙げました。
同氏は「JCPOAとその後の数年間の経験は、人々の間に前向きな考え方を生み出さなかった」と振り返り、その記憶が今回の攻撃への反応にも影響していると分析します。
それでもイランは「善意を示すために、再び交渉に入った」といいます。しかし、「結果はどうだったのか。米国はイスラエルと協力し、交渉の最中にイランの重要で敏感な核関連施設を爆撃した。これがアメリカの外交の現実だ」と述べ、交渉継続の中で行われた軍事行動を強く批判しました。
「外交の窓」はどこまで閉じたのか
ラティフィ氏は、「イランの人々は米国、とりわけトランプ氏のような人物をまったく信頼していない」と述べたうえで、「こうした経緯と攻撃的な行動を踏まえると、本物の外交に向けた窓は、残念ながらほとんど完全に閉ざされてしまった」と語りました。
軍事行動が行われた後に、改めて交渉の場に当事者を戻すことは簡単ではありません。相手の意図への疑念、合意の持続性への不安、国内世論の反発など、克服すべきハードルは高くなります。ラティフィ氏の発言は、現時点でイラン側に広がる心理的な距離感と不信感を象徴していると言えるでしょう。
国際社会への問いかけ
インタビューの最後で、ラティフィ氏は国際社会に向けて次のように呼びかけました。「知識人、分析者、そして政治家たちに問いたい。このような行動のどこが、外交の原則と整合的なのかを評価してほしい」。
核施設への攻撃がもたらすのは、短期的な軍事的効果だけではなく、長期的な不信と不安定化です。イランと米国、そして周辺国を含む地域全体が緊張を高めている今、武力ではなく外交をどう再構築していくのかが、国際社会に突きつけられた課題となっています。
今回のラティフィ氏のインタビューは、イラン側の強い危機感と不信を映し出すと同時に、「外交とは何か」という根本的な問いを改めて私たちに投げかけています。
Reference(s):
Iran journalist: U.S. strike on nuclear sites closes door to diplomacy
cgtn.com








