BRICS首脳会議、保護主義の中でグローバル経済を下支えする役割とは
世界で保護主義と地政学リスクが高まる中、人口の約半分と世界GDPの3割超を占めるBRICSが、どのようにグローバル経済の安定を支えようとしているのかを整理します。
リオで開かれた第17回BRICS首脳会議とは
2025年7月6~7日、ブラジルのリオデジャネイロで第17回BRICS首脳会議が開催されました。テーマは「より包摂的で持続可能なガバナンスに向けたグローバル・サウス協力の強化」で、グローバル・サウス(新興国・途上国)の連携強化が前面に出されています。
ブラジルの公式発表によると、今回の首脳会議では次の分野が優先課題とされています。
- 保健分野の協力
- 貿易・投資・金融
- 気候変動
- 人工知能(AI)のガバナンス
- 多国間の平和体制と安全保障アーキテクチャ
- 機構改革や制度構築
今年の首脳会議は、新メンバーのインドネシアと10のパートナー国の参加後、初めての開催となりました。複数の新興市場国や途上国に加え、国際機関や地域機関も招かれ、BRICSを軸にした「拡大版グローバル・サウス」の対話の場になっています。
地政学的緊張の中で高まるBRICSへの注目
世界では、ロシアとウクライナの衝突、パレスチナをめぐる問題、さらに世界を震撼させたイスラエルとイランの対立など、地域紛争が相次ぎ、国際政治の不確実性がかつてなく高まっています。
中国国際問題研究院の王友明研究員は、国際政治の構図が従来と大きく変化する中で、「こうした環境でBRICSがどのような立場を取るのかが、国際社会から注目されている」と指摘します。人口で世界の約半分、国内総生産(GDP)で3割超を占める存在だからこそ、そのメッセージは無視できません。
王氏は、トランプ政権による関税措置がすべてのBRICS諸国に影響を与えたことを挙げ、グローバル貿易や経済ガバナンスにおけるBRICSの「集団としての声」が、国際社会にとって一層重要になっていると述べています。
南南協力を支える経済プラットフォームへ
BRICSは設立からほぼ20年をかけて、グローバル経済で重要なプレーヤーへと成長し、南南協力(途上国どうしの協力)の中核的なプラットフォームになってきました。
これまでBRICS各国は、途上国にとって現実的な選択肢となる貿易・投資の枠組みを整備し、西側経済の長年の優位に依存しない形で、多極的で公正、持続可能な世界経済への移行を後押ししてきました。
新開発銀行と予防的な金融セーフティーネット
2014年には、新興国や途上国のインフラ投資を支える新開発銀行(NDB)が設立されました。同じ年には、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)に似た仕組みである「コンティンジェント準備取決め(CRA)」も創設されています。CRAは、世界的な金融危機の際に加盟国に緊急資金を提供することで、ショックへの耐性を高める予防的なセーフティーネットとして機能します。
民間ビジネスを巻き込むネットワーク
BRICSは、投資や貿易の流れを後押しするさまざまなプラットフォームも整えてきました。その一つがBRICSビジネス評議会です。これは企業どうしの交流の場を提供し、域内投資の拡大や共同投資プロジェクトによる新たなビジネス機会の創出を促すものです。
中国国際問題研究院がまとめた2024年の報告書によると、この10年でBRICS域内の貿易額は年平均10.7%のペースで増加し、世界全体の貿易成長率(3%)を大きく上回っています。
中国の公式統計では、2023年1~7月の中国と他のBRICS諸国との貿易額は2兆3,800億元(約3,320億ドル)と、前年同期比で19.1%増加しました。これは中国の対外貿易全体の10.1%を占め、前年から1.6ポイント上昇しています。数字の上でも、BRICS域内貿易の活発さと経済協力の深まりが示されています。
保護主義の広がりにどう対抗するか
一方で、世界の貿易環境は、米国による広範な関税措置などを背景に、保護主義の色合いを強めています。これに対応する形で、BRICS諸国はアフリカや中東、アジア太平洋の国々との協力を広げ、貿易や投資の「多角化」を進めています。
同時に、貿易や投資、外貨準備における米ドルへの依存を徐々に減らしつつある点も注目されます。
現地通貨決済を強化する狙い
王氏は、今後のBRICS首脳会議では、世界貿易機関(WTO)のルールを守ることを訴えると同時に、ドル依存を減らすための現地通貨決済の拡大が強調される可能性があると見ています。
グローバル・サウス諸国にとって、自国通貨の役割を高めることは、外部からのショックに対して国内経済を守り、財政主権を維持することにつながります。また、政治的な動機によって行われる制裁の効果を弱め、国際通貨システムの安定性を高める効果も期待されます。
WTOルールを守るというメッセージ
2025年5月に開かれた第15回BRICS貿易・経済相会合では、各国の閣僚が共同声明を発表し、一方的な関税や非関税措置の拡大に強い懸念を示しました。こうした措置は貿易を歪め、WTOルールに反するとの立場を共有しています。
参加国は、BRICSが多国間の貿易体制を守り、一方主義や貿易保護主義に対抗し、途上国の正当な権利と利益を守る必要性を確認しました。また、デジタル産業、グリーン産業、サプライチェーン産業といった新たな分野での補完関係を生かし、包摂的な成長と持続可能な発展を進めることで一致しています。
共同声明が打ち出した方向性は、次のように整理できます。
- 多国間の貿易体制(WTO)を中心としたルールの尊重
- 一方的な関税・非関税措置への反対
- デジタル、グリーン、サプライチェーンなど新産業での協力強化
- 途上国の発展と包摂的・持続可能な成長の重視
日本の読者が押さえておきたい3つの視点
BRICSの動きは、日本にとっても「遠い世界の話」ではありません。newstomo.comの読者として、次の3点を押さえておくと、今後の国際ニュースが読みやすくなります。
- 世界経済の重心シフト:BRICSは人口で世界の約半分、GDPで3割超を占める存在です。ここでの協力枠組みやルールづくりは、今後の貿易や投資の流れを左右します。
- 通貨・金融の多極化:新開発銀行(NDB)やコンティンジェント準備取決め(CRA)、現地通貨決済の拡大といった動きは、ドル中心だった国際金融の構図にゆるやかな変化をもたらします。
- 保護主義とどう向き合うか:一方的な関税措置に対して、BRICSはWTOルールの順守や多国間主義の重要性を訴えています。輸出入に依存する日本経済にとっても、こうした議論の行方は無関係ではありません。
保護主義や地政学リスクが高まる今、BRICSがどのように「安定装置」として機能しようとしているのかは、今後の世界経済を考えるうえでも重要なカギになります。グローバル経済の不確実性が高まる中で、BRICSから発信されるメッセージと具体的な協力の中身を、日本からも丁寧にフォローしていく必要がありそうです。
Reference(s):
BRICS helps stabilize global economy amid rising protectionism
cgtn.com








