北京で世界古典学会議が初開催 グローバルなシノロジストが語る古典研究
古代の知恵は、いまの社会に何を語りかけているのでしょうか。2025年12月8日、北京で初開催となる世界古典学会議(World Conference of Classics)が開幕し、30を超える国と地域から485人以上の研究者が集まりました。国際ニュースとしても注目されるこの会議では、古典学が現代世界に与える影響について、グローバルな視点から議論が交わされています。
北京で初の「世界古典学会議」 485人超が参加
世界古典学会議は、古典学やシノロジー(中国学)を専門とする研究者が一堂に会する新しい国際会議です。今回の初開催となる会議では、世界各地の大学や研究機関から、古代ギリシャ、中国古典、その他の古代文明を研究する学者が北京に集まりました。
- 開催地:北京
- 日程:2025年12月8日開幕
- 参加者:30を超える国と地域から約485人の研究者
- テーマ:古典研究が現代社会や学問にもたらす意味
古代ギリシャから孔子まで ギリシャの研究者が語る古典の力
アテネ・アカデミーのメンバーであるマノリス・コレース氏は、古典学の歴史的な奥行きと、その現代的な意義を強調しました。演説の中で、ソクラテスやアリストテレス、ユークリッドといった古代ギリシャの思想家・数学者が取り上げられました。
コレース氏によると、ソクラテスは道徳的な完成だけでなく、理性的な探求を通じて真理を追求することを重視していました。アリストテレスはソクラテスの議論を土台に、人間の行動や社会・政治のあり方を倫理の観点から深く掘り下げたといいます。この点で、倫理を重んじ、経験的な事実にもとづいて考える孔子との共通性が指摘されました。
さらにコレース氏は、アリストテレスが築いた厳密な方法論が後の近代科学の基礎となり、そのすぐ後にユークリッドが公理にもとづく数学的推論の方法を確立したことにも触れました。古代の知的成果が、現代の科学や論理の土台に直結していることを示すエピソードです。
中国古典の言葉が現代中国語に与えた影響
ミュンヘン大学副学長のハンス・ファン・エス教授は、古典研究、とりわけ古代中国語と中国古典の歴史的・文化的な重要性を強調しました。教授は、古典を理解せずに中国文化を深く理解することは難しいと指摘しました。
ファン・エス教授は、孟子や荘子、史記といった中国古典作品を例に挙げ、その言語表現が現代中国語にまで強い影響を与えていると述べました。古典の文体や表現が、今日の言葉づかいにまで浸透しているという視点は、シノロジーだけでなく、言語学や文化研究にとっても示唆的です。
プリンストン大学教授が提案する「文明間ネットワーク」
プリンストン大学のアジア研究教授であるマーティン・カーン氏は、古代文明と古典文学を研究するトップレベルの学者たちを結ぶ仕組みの必要性を訴えました。
カーン氏は、学術研究は他の文明からの知見によって豊かになり、より包括的でニュアンスのある理解につながるべきだと述べました。古代ギリシャ、中国、そして他地域の古典が互いに響き合うことで、単一の文明だけでは見えない視野が開ける、という問題提起です。
古典学は「過去の学問」ではなく「いまを読み解く鍵」
今回の世界古典学会議は、各国のシノロジストや古典学者にとって、自らの研究や意見を共有するための国際的な交流の場となっています。参加した研究者たちは、次の点でおおむね一致しています。
- 古典学は単なる過去の記録の収集ではない
- 古代の思想やテキストは、現代社会の課題を理解し、向き合うための重要な鍵である
- 学問の国際的ネットワークが、より深い理解と対話を生む
「古典研究は歴史の彼方にある専門的な学問」というイメージとは異なり、会議の議論から浮かび上がるのは、「古典は現代を読み解くためのレンズでもある」という発想です。倫理、政治、社会のあり方、さらには科学や論理の基礎にいたるまで、古代のテキストは今も問いを投げかけ続けています。
ニュースを読んだ私たちにとっての問い
今回の国際ニュースは、研究者コミュニティだけの話題ではありません。デジタル時代を生きる私たちにとっても、いくつかの問いを投げかけています。
- 忙しい日常のなかで、「古典」をゆっくり読む時間をどれだけ持てているか
- 異なる文化や文明の視点を、自分の考え方にどう取り入れていくか
- 歴史的なテキストから、いまの社会問題や個人の生き方にどんなヒントを見いだせるか
北京で始まった世界古典学会議は、古代から現代へ、そして国境を越えて知恵をつなぎ直そうとする試みともいえます。今後、この会議からどのような共同研究や新しい視点が生まれてくるのか、引き続き注目していきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








