西側vs非西側のパラレル・グローバリゼーション:新しい国際秩序を読む video poster
リード:西側 vs 非西側、「パラレル・グローバリゼーション」とは
国際ニュースでグローバリゼーション(世界の一体化)が語られるとき、かつては「ひとつの世界市場」を前提にした議論が中心でした。しかし現在は、西側と非西側がそれぞれのルールやネットワークを発展させる「パラレル・グローバリゼーション(並行するグローバル化)」という見方が力を持ちつつあります。
中国本土の人民大学にある重陽金融研究院の王文(ワン・ウェン)教授は、このパラレルなグローバル化の行方を読み解きつつ、ハイテク分野での「冷戦」から気候変動・安全保障における協力の可能性まで、新しい国際秩序を形づくる力を分析しています。
パラレル・グローバリゼーション:一体化から「並行」へ
王教授が描く「パラレル・グローバリゼーション」とは、西側と非西側が対立しながらも、完全に断絶せず「並行して」世界経済や国際協力を続ける姿です。
- 貿易や投資:西側中心のサプライチェーン(供給網)と、非西側を軸とした新しいネットワークが同時に存在する。
- 金融システム:通貨や決済の仕組みで、西側の枠組みとそれ以外の選択肢が併走する。
- テクノロジー:通信インフラやデジタル規格で、異なる標準が競い合いながら普及する。
重要なのは、「どちらか一方が他方を完全に排除する」のではなく、複数の仕組みが同時に走る「マルチトラック化」が進むという視点です。
ハイテク冷戦:最も「並行化」が進む分野
王教授が指摘するのは、とくにハイテク分野で西側と非西側の緊張が高まり、「冷戦」にたとえられる状況が見られることです。
たとえば、
- 半導体や人工知能(AI)などの先端技術の輸出規制
- 通信網やデジタルプラットフォームをめぐる安全保障上の懸念
- 技術標準(スタンダード)をどの国・地域のルールに合わせるかという争い
こうした動きは、単なるビジネス競争を超え、国家の安全保障や価値観と結びついた「ハイテク冷戦」として理解されつつあります。
一方で、デジタル経済は国境を越えてつながっているため、完全な分断は現実的ではありません。その結果、西側と非西側がそれぞれ自分たちのルールを強化しながらも、必要な部分では相互接続を維持する「パラレル」な構図が浮かび上がります。
気候変動と安全保障:対立と協力の「両立」
王教授が強調するもう一つのポイントは、対立だけでなく「協力の余地」を見ていることです。とくに、気候変動と安全保障の分野では、西側と非西側が並行しながらも互いを無視できない状況が続きます。
気候変動:地球規模の課題は分けられない
気候変動は、どの国・地域にも影響する地球規模の問題です。排出削減やエネルギー転換の取り組みは、西側だけ、あるいは非西側だけで完結させることはできません。
そのため、ハイテク分野での競争が激しくても、再生可能エネルギー技術の普及や気候ファイナンス(気候対策のための資金支援)などでは、協力が続く可能性があります。パラレル・グローバリゼーションは「二つの世界の断絶」ではなく、「競い合いながらも共通課題では連携せざるをえない世界」として現れます。
安全保障:共存のルールづくりへ
安全保障の領域でも、完全な分離は現実的ではありません。海洋の安全、サイバー空間の安定、宇宙空間の利用など、いずれも一国や一つの陣営だけで秩序を維持することは難しいからです。
王教授は、西側と非西側が安全保障で「共存するための最低限のルール」を探る動きにも注目しています。対話のチャンネルを閉ざすのではなく、危機を管理し、誤解や偶発的な衝突を防ぐ仕組みづくりが、パラレルな国際秩序の中で重要になっていきます。
新しい国際秩序を動かす力
王教授は、パラレル・グローバリゼーションの背景に、次のような力が働いていると見ています。
- 技術とデジタル空間の重み
AI、ビッグデータ、通信インフラなどのデジタル技術が、経済だけでなく政治や安全保障にも直結するようになりました。これが、ハイテク冷戦と並行化の圧力を強めています。 - 経済の相互依存の根強さ
同時に、世界の貿易・投資のネットワークは深く結びついたままです。完全な「デカップリング(切り離し)」が難しいからこそ、対立しながらもつながりを保つパラレル構造が生まれます。 - グローバル課題への共通の関心
気候変動や感染症、エネルギー・食料安全保障などの課題は、どの国にとっても避けられません。こうした共通課題への対応が、並行する二つのグローバル化をつなぐ橋渡しの役割を果たします。
日本と私たちにとっての意味
では、日本を含むアジアの読者にとって、パラレル・グローバリゼーションはどんな意味を持つのでしょうか。
- ビジネス:複数のルールや標準が存在する前提で、市場やサプライチェーンの戦略を考える必要が高まります。
- 政策:西側と非西側のどちらか一方に寄り切るのではなく、両方のネットワークとどう関わるかが重要なテーマになります。
- 情報との向き合い方:国際ニュースや分析を読むときも、一つの「物語」だけで世界を理解するのではなく、複数の視点を並行して持つことが求められます。
パラレル・グローバリゼーションは、「世界が二つに割れる」という単純な話ではありません。むしろ、多層的で複雑なつながりのなかで、西側と非西側が競争しつつ共存する新しい秩序が形づくられつつある、という見方です。
こうした変化を読み解くことは、ニュースをどう理解し、自分の仕事や生活の選択をどう考えるかにもつながっていきます。国際ニュースを追うとき、「世界は今、並行して動いている」という視点を、ひとつのヒントとして持っておくとよさそうです。
Reference(s):
cgtn.com








