中国で新たなDV対応指針 警察の立証基準と通報義務を明確化
中国は2025年12月8日、警察による家庭内暴力(DV)への対応を強化する新たな指針を公表しました。DVの立証方法や、関係機関の役割、通報の義務などを具体的に示したもので、中国のDV対策が新たな段階に入ったことを示しています。
新指針の概要:中国のDV対策が一歩前進
今回の指針は、公安省、最高人民法院(最高裁)、司法省、中華全国婦女連合会など9機関が共同で策定したものです。目的は、現場の警察がDVをより的確に「予防し、発見し、対応する」ための共通ルールをつくることにあります。
DVの事実をどう認定するのか、どのような証拠を集めればよいのか、軽微なケースにどう対応するのかといった点は、実務上よく紛争になる部分です。指針は、こうしたグレーゾーンをできるだけ減らす方向で整理しています。
DVの「事実」をどう認定するか
指針はまず、警察がDVの「事実」をどう認定するかを細かく定めています。
- 加害者がDVの事実を争わない場合は、加害者と被害者の供述、または証人の証言が求められます。
- 加害者がDVを否認する場合は、被害者の供述や証人の証言に加え、「補強証拠」とされる資料が必要とされます。
単に「言った・言わない」に終わらせず、客観的な資料を組み合わせて判断する方向性を明確にした形です。
デジタル証拠を含む8種類の補強資料
指針は、補強証拠として認められる資料のタイプを8種類挙げています。その中でも具体的に示されているのは次のようなものです。
- DVの様子を記録した音声・映像、通話の録音などのデジタル資料
- 友人や近隣住民などによる目撃証言
- 医療機関での受診記録や診断書などの医療記録
- DVに関して関係部門に出した相談・苦情・通報の記録
これらに加えて、他の資料も含めた8類型が示されています。家庭内で起こるため外からは見えにくいDVについて、証拠の幅を広げることで実態をとらえやすくする狙いがあるといえます。
軽微なケースへの対応:教育と「告誡書」
指針はまた、「比較的軽微」とされるDVへの対応も整理しています。拘留などの行政処分にまでは至らない場合でも、警察は加害者に対して次のような措置を取ることができます。
- 加害者に対する教育や指導
- 口頭での警告
- 文書による警告である「告誡書」の交付
告誡書は、すでに警察から教育や口頭警告を受けているにもかかわらずDV行為を行った場合に出されるもので、加害者に対し、行為の違法性と再発防止を強く促す役割を持ちます。
中国の反家庭内暴力法は2016年に施行され、警察が加害者に対して告誡書を出す制度が導入されました。2023年には全国で98,000件の告誡書が発出されています。今回の指針は、この仕組みを前提に、どのような場面でどのように活用するのかを、より具体的に示したものと位置づけられます。
8分野にまたがる役割分担と通報義務
新指針の特徴は、DVを警察だけの問題とせず、複数の分野が関わる「社会ぐるみの仕組み」として位置づけている点です。裁判所、教育当局、民政部門、病院、女性団体など8つの分野について、それぞれの責任と役割が整理されています。
学校や医療機関に求められる「気づき」と通報
特に強調されているのが、義務的な通報制度です。指針によると、次のような機関の職員は、DVの疑いを把握した場合に警察へ通報することが求められます。
- 学校や幼稚園などの教育機関
- 病院やクリニックなどの医療機関
- コミュニティセンターなど地域の拠点
- 社会サービス機関や福祉関連の団体
DVは、被害者自身が声を上げにくいケースが少なくありません。子どもや高齢者など、弱い立場にある人ほど第三者の「気づき」と通報が重要になります。指針は、現場で最初に異変に気づきやすい立場にある人たちに、より積極的な役割を求めた形です。
なぜ今、この指針が重要なのか
DVは、人権と安全に関わる深刻な問題であり、日本を含む各国・地域で対策が課題となっています。中国では2016年の反家庭内暴力法施行以降、法制度の整備が進んできましたが、実務の現場では「どこまでをDVと認定するのか」「どの証拠を重視するのか」といった点で迷いが生じる場面もありました。
今回の指針は、
- DVの立証基準と証拠の例示を具体化したこと
- 軽微なケースに対する警察の対応メニューを整理したこと
- 教育・医療・司法など複数分野の連携と通報義務を明確にしたこと
といった点で、制度を「使える形」に近づける役割を果たすとみられます。被害者にとっても、「どのような資料を残しておけばよいのか」が見えやすくなることで、支援につながりやすくなる可能性があります。
日本の読者へのヒント:DVを「社会の課題」として捉える
今回の中国の動きは、日本の読者にとってもいくつかの示唆を与えてくれます。
- DVの立証にデジタル証拠や周囲の証言を積極的に活用する発想
- 「家庭の問題」ではなく、学校や医療、福祉など社会全体で支えるという視点
- 軽微なうちから教育や警告を行い、深刻化を防ぐ段階的な対応
各国・地域で制度や文化は異なりますが、「被害を早く見つける」「被害者の声を裏付ける証拠を確保する」「関係機関が連携して支える」という三つの軸は、多くの場所で共通する課題です。
身近なところでDVやモラルハラスメントの話題が出たとき、このニュースをきっかけに、「証拠をどう残すか」「周囲の大人はどう動くべきか」といった視点から話し合ってみることもできそうです。
Reference(s):
China strengthens domestic violence response with new guidelines
cgtn.com








