中国の医療保険が拡充 薬価引き下げと不妊治療支援が進む
中国が公的医療保険制度をさらに拡充し、薬の保険適用の拡大や薬価引き下げ、不妊治療(生殖補助医療)の支援強化などを進めています。2024年の最新データから、中国の医療保障の現在地を整理します。
3.11兆元の医療保険基金は「安定運営」
医療保険関連の会議で報告されたデータによると、2024年11月までの中国の基本医療保険基金の収支は次のようになっています。
- 基金収入:3.11兆元(約4,270億ドル)
- 基金支出:2.63兆元
- プール基金(医療費支払いに充てる公的積立金)の残高:約4,600億元
収入が支出を上回り、数千億元規模の残高を維持していることから、医療保険基金は安定的に運営されており、被保険者の医療費を賄う十分な財源が確保されているとされています。
ここでいう「プール基金」とは、多くの加入者から集めた保険料や公費を共同の財源として積み立て、入院や高額治療などの医療費支払いに充てる仕組みです。
医療保険の薬剤リストに91品目追加、合計3,159品目に
今回の会議では、中国の医療保険薬剤リスト(保険適用される薬のカタログ)がさらに拡充されたことも明らかになりました。
- 新たに追加された薬:91品目
- 保険適用薬の総数:3,159品目
これにより、患者が保険を使って購入できる薬の選択肢が増え、自己負担の軽減につながるとみられます。
集中購買で62品目の薬価が引き下げ
同時に、中国当局は「集中購買」と呼ばれる仕組みも進めています。これは、政府や公的機関が医療機関の需要をまとめて製薬企業と一括交渉し、薬の価格を下げる取り組みです。
- 最新の集中購買の対象となった薬:62品目
- これらの薬の価格が引き下げられ、中国の患者の負担軽減につながっているとされています。
薬価の引き下げは、高額薬の使用が増える中で医療保険財政を守る手段であると同時に、患者のアクセス改善策でもあります。
不妊治療(生殖補助医療)も保険対象に、100万人超が恩恵
少子化や晩婚化が課題となる中、不妊治療への支援も広がっています。会議によると、中国の多くの地域で、生殖補助医療(体外受精など)のサービスが医療保険の償還対象に追加されました。
- 不妊治療の保険対象を拡大した地域:全国の大多数
- 2024年中に恩恵を受けた人:100万人超
高額になりがちな生殖補助医療が保険で一部カバーされることで、子どもを望む人々の経済的ハードルを下げる狙いがあります。
地域をまたぐ「その場精算」が急拡大
中国では、居住地以外の地域で受診した際にも、医療保険をその場で使えるようにする仕組みづくりも加速しています。2024年11月時点で、全国には次のような体制が整っていると報告されています。
- 異なる地域間で医療費の直接精算に対応する医療機関・薬局:64万カ所
- それらの窓口でのサービス件数:2億1,300万件(2024年11月時点)
- 前年同時期(2023年)との比較:件数が約87.98%増加
これにより、出張や転勤、都市部への受診など、居住地をまたいだ医療利用がしやすくなっています。日本でいう「どこでもマイナ保険証」が進んだイメージに近い動きだといえます。
医療保険の不正対策で約240億元を回収
制度の持続性を高めるため、不正請求などに対する取り締まりも強化されています。会議によると、2024年1月から11月にかけて、医療保険関連の不正を対象とした全国的な取り締まりキャンペーンが行われました。
- 回収された医療保険基金:242億3,000万元(約24.23 billion yuan)
水増し請求や不正な入院・処方など、医療保険資金の流出を防ぐ取り組みであり、基金の健全な運営に直結する分野です。
中国の医療保険拡充は何を示しているのか
今回紹介した数字は、いずれも2024年のデータですが、中国の医療保険制度が次のような方向に動いていることを示しています。
- 基金の安定運営を維持しつつ、カバー範囲を拡大している
- 薬剤リストの拡充と集中購買で、医療費の効率化と患者負担の軽減を図っている
- 不妊治療支援や地域をまたぐ直接精算の拡大など、ライフスタイルや人口構造の変化に対応している
- 不正対策を通じて、限られた財源を必要な医療サービスに回そうとしている
世界最大級の人口を抱える中国が、どのように医療保障を設計し直しているかは、日本を含む近隣の国・地域にとっても無視できないテーマです。高齢化、少子化、医療費の増大といった課題は多くの国に共通しており、中国の動きは、医療保険制度の将来を考える際の一つの参考事例になりそうです。
Reference(s):
China expands medical insurance, boosts accessibility and coverage
cgtn.com








