中国のゼロカーボン産業パーク:グリーン経済を支える新たな中核
ゼロカーボン産業パーク、中国グリーン経済のカギに
中国が進める「ゼロカーボン産業パーク」が、今後のグリーン経済と産業政策の中核になりつつあります。12月の中央経済工作会議では、2025年の経済運営の優先課題としてグリーン転換が改めて強調され、その実践の場としてゼロカーボン産業パーク構想が一段と存在感を増しました。中国は2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を達成する目標を掲げており、ゼロカーボン産業パークはその野心的なロードマップを支える「現場」です。
まだ定義は途上、それでも動き出したゼロカーボン産業パーク
「ゼロカーボン産業パーク」という言葉の、全国で統一された定義はまだ固まっていません。それでも中国各地では、2021年以降、複数の都市が独自のコンセプトづくりとプロジェクトに乗り出しています。一般的には、再生可能エネルギーなどでエネルギー需要を賄い、園区全体として温室効果ガス排出を実質ゼロに近づける産業団地を指すと理解されていますが、具体的な条件や評価方法は模索中です。
内モンゴル自治区オルドス市、「世界初」を掲げる先行事例
中でも、北部の内モンゴル自治区オルドス市は、ゼロカーボン産業パークの先駆けとされています。2022年に「世界初のゼロカーボン産業パーク」を打ち出し、2023年には中国で初めてとなるゼロカーボン産業パークの地方標準を策定しました。さらに2024年7月にはパークをアップグレードし、取り組みの内容を拡充しています。
このオルドスのパークには、電池メーカー、太陽光パネルメーカー、水素燃料関連企業、電気自動車メーカーなど、多様な企業が集積しています。エンビジョン・グループでゼロカーボン戦略を担当するZhang Yuan氏は、8月に経済観察報(The Economic Observer)の取材に対し、園区の最大の魅力は「安価で排出ゼロの電力が利用できること」だと説明しました。豊富なクリーン電力を前提に、脱炭素ビジネスが集まり、相互にエネルギーや技術を融通し合う構図が見えてきます。
「都市よりパーク、パークより建物」が難しい理由
ゼロカーボンを実現するには、スケール(対象とする範囲)の設定が大きなカギになります。清華大学建築設計研究院で副主任エンジニアを務めるLiu Jiagen氏は、中国証券報の5月の取材に対し、都市よりも産業パーク、産業パークよりも個々の建物のほうがゼロカーボン化は難しいと語っています。
都市レベルでは、専用の再生可能エネルギー発電所への投資や、大規模な送配電網の整備がしやすくなります。産業パークも、敷地内に太陽光パネルや省エネ設備をまとめて導入しやすいという利点があります。一方で、単体の建物は設置できる設備や面積に制約があり、需要と供給を自前で完結させるのはより複雑になります。
「つくるとき」「壊すとき」の排出をどう扱うか
建物のライフサイクル全体を見ると、実は建設や解体そのものの排出よりも、建設資材の製造過程で出る排出のほうが大きな比重を占めます。Liu氏は、こうした資材製造に伴う排出(エンボディド・カーボン)を、ゼロカーボンの計算にどこまで含めるべきかについて、いまも専門家の間で議論が続いていると説明します。
対象範囲を広くとればとるほど、真の意味での排出削減に近づく一方で、計算や検証のコストも膨らみます。企業や地方政府にとっては、どこまでを自らの責任範囲とするのかが、投資判断やプロジェクト設計に直結する問題になっています。
標準づくりはこれから、本格展開へのステップ
中国の住宅・都市農村建設部は2023年7月、ゼロカーボン建築に関する技術基準案を公表し、社会からの意見募集を行いました。しかし、この基準は現在も最終決定には至っていません。国レベルの正式なルールがない中で、オルドス市のように地方が先行して独自の標準を定める動きも出ています。
ゼロカーボン産業パークの建設は、多くの企業や地方政府にとって依然として大きな挑戦です。必要な設備投資は決して小さくなく、排出削減の効果をどのように測り、どの範囲まで「ゼロ」とみなすのかについても、明確な答えがまだありません。それでも、国の気候目標達成に向けて、こうした標準づくりと制度設計をどう進めるかが、今後のグリーン経済の行方を左右するとみられます。
2030年・2060年目標に向けた「実験の場」として
中国は、2030年までの排出ピークと2060年のカーボンニュートラルという長期目標を掲げています。ゼロカーボン産業パークは、その達成に向けて技術、ビジネスモデル、制度を検証する「実験の場」としての役割を担いつつあります。
今後の注目ポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- 国レベルでゼロカーボン建築・産業パークの技術標準や評価基準がどのように整備されていくか
- オルドス市のような先行事例が、他地域の産業パークにどの程度展開・応用されていくか
- 建設資材の製造など「見えにくい排出」を、実務上どこまでカウントするのかという議論の行方
工場やオフィスが集まる産業パークは、経済成長と排出削減を同時に進めるための重要なハブになり得ます。2025年以降、中国のグリーン経済をウォッチするうえで、ゼロカーボン産業パークの動向は見逃せないテーマになりそうです。
Reference(s):
Zero-carbon industrial parks a key to China's green economic future
cgtn.com








