中国、2035年までの教育強国戦略 大学専攻を大規模見直し
中国が、2035年までに教育強国となることをめざす新たな教育改革の青写真を示しました。国家の現代化と「民族復興」を支える柱として、教育システムをどのように変えていくのかを整理します。
中国、2035年に向けた教育マスタープランを公表
今回示されたのは、2024〜2035年を対象とした教育分野のマスタープランです。中国共産党中央委員会と国務院が共同で発表したもので、2035年までに「強い教育システム」を構築することを目標としています。
文書によると、この教育システムは中国の特色ある社会主義を基盤とし、国家の現代化と民族の復興を支える存在として設計されています。
文書は、めざす教育システムの特徴として、次のような点を挙げています。
- 思想・政治面での強いリーダーシップ
- 国際的に競争力のある人材の育成力
- 科学技術イノベーションを支える能力
- 教育を通じた生活保障(ライフライン)
- 社会全体が連携して教育を支える仕組み(社会的シナジー)
- 教育分野での国際的な影響力
2027年までの中間ゴールと2035年の最終像
中国にとって教育強国をめざす動きは近代以降の長年の願いとされ、2022年には2035年までにこの目標を達成する方針が示されました。今回のマスタープランでは、その道筋として二つの節目の年が示されています。
2027年まで:高品質な教育システムの「骨格」を作る
文書は、2027年までに質の高い教育システムをおおむね構築し、自国で人材を育てる力を大きく高めるとしています。その結果として、優れたイノベーション人材が絶え間なく育つ状態をめざすとしています。
2035年まで:世界トップ水準の基礎教育と「学び続ける社会」
2035年までには、高品質な教育システムを全面的に完成させることが目標です。基礎教育(初等・中等教育)のアクセスと質は世界でもトップクラスを維持し、社会全体が学び続ける「学習社会」が確立され、教育の現代化を全般的に達成するとしています。
大学・大学院改革:専攻を大胆に入れ替え
今回の計画では、高等教育の強化が重要な柱の一つとされています。中国は先進的な研究大学の育成を加速させるとともに、科学技術と工学の分野で世界的に高い評価を受ける海外大学が中国国内で教育プログラムを展開することを奨励します。また、専門職大学院などプロフェッショナルな大学院課程の拡充も進める方針です。
さらに、科学技術の進展や国家戦略に合わせて、大学の学部・専攻構成を柔軟に調整する仕組みを整備するとしています。特に、国家的にニーズが高い分野の専攻を優先的に立ち上げる一方で、基礎分野や新興分野、学際分野を強化しつつ、消滅の危機にある分野や人気の低い分野も支援するとしています。基礎研究や学際的なブレークスルーを生み出すための計画も進めるとされています。
失敗を許容する環境づくりと研究人材の育成
文書は、探究心を尊重し、失敗を許容する環境を整えることの重要性も強調しています。そのうえで、ハイレベルな教員や卓越した研究者を育成することを、強い教育システムを支える鍵と位置づけています。
専攻の大量見直し:1673設置・1670廃止
中国教育部の呉岩副部長は、2024年9月の記者会見で、国家戦略上のニーズに応えるために1673の学部専攻を新設し、経済や社会の発展と整合しなくなった1670の専攻を2024年に廃止したと明らかにしました。呉氏は、この規模の調整を「前例がない」と表現しています。
新設専攻の具体例:インテリジェント海洋装備など
新しく設けられた専攻には、インテリジェント海洋装備、インテリジェント材料技術、学際工学などが含まれます。例えば、華南理工大学は、ソフトマター科学と工学やインテリジェント海洋装備といった専攻の開設にいち早く動いた大学の一つとされています。
これらの専攻は、中国の戦略産業やハイテク産業の高度化を支えることを意図して設計されており、とりわけ広東・香港・マカオ大湾区の産業発展を後押しする狙いがあるとされています。
数字でみる中国の大学システム
中国には現在、学部課程を持つ大学が1308校あり、12の大きな分野と93の細分類のもとで816種類の専攻が設置されています。教育当局によると、2012年以降に新設された学部専攻は2万1000件に上る一方で、1万2000件の専攻が廃止または募集停止となっています。
今回のマスタープランは、こうした専攻の新陳代謝を通じて、教育と経済・社会のニーズをより緊密に結びつけようとする動きの延長線上にあると言えます。
日本の読者が押さえておきたい視点
今回の教育マスタープランは、中国が教育を長期的な国家戦略の中核に位置づけていることを改めて示す内容です。日本を含む周辺国にとっても、教育と人材をどう位置づけるかを考えるヒントになる側面があります。
- 教育を通じた人材競争力の強化が、明確な国家目標として掲げられていること
- 大学の専攻の新設・廃止を通じて、科学技術や産業戦略と教育を密接に連動させようとしていること
- 学校教育だけでなく、社会全体を「学び続ける社会」として設計しようとしていること
国際ニュースとして状況を追うだけでなく、自国の教育やキャリア形成を見直すきっかけとしても捉えられそうです。
Reference(s):
China unveils blueprint for building strong education system by 2035
cgtn.com








