春節でつながる中国本土と台湾 両岸に共通する年越しの風景
2025年の春節(旧正月)で巳年が始まって以来、中国本土から台湾地域まで、街は華やかな飾りと家族の笑い声に包まれました。厦門と金門の共同花火、食卓を囲む年夜飯(年越しの食事)、先祖を敬う祈り——台湾海峡を挟む両岸で共有される中国の新年の風景が、あらためて注目されています。
2025年の春節、両岸をまたぐ花火が夜空を彩る
今年1月29日の春節初日、福建省の沿海都市・厦門と、すぐ対岸に位置する金門では、恒例の共同花火大会が午後8時にスタートしました。両岸の砂浜から打ち上げられた花火は約5万発。30分間にわたり、春節や両岸の結びつきをテーマにした演出が続きました。この共同花火は1987年に始まった伝統で、今では両岸の人びとにとって欠かせない年越しの風景となっています。
台湾・嘉義県出身で現在は厦門に暮らすHung Tzu-iさんは、この日、娘と一緒に何時間も前から会場近くに陣取り、ベストな場所を確保したといいます。Hungさんは「両岸から同時に打ち上がる花火が夜空を照らす光景は息をのむほど美しく、とても胸を打たれます」と話します。
金門側で花火を見た台湾の住民も「言葉にしがたい感動がある。この伝統が毎年続いてほしい」と語り、「両岸の人びとはもともと一つの家族。協力し、共に発展して、より良い未来を築きたい」と期待を寄せました。
台湾の新聞・聯合報は、この共同花火が両岸の人びとの祝福と期待を象徴していると指摘しました。眩い光の一つひとつが、海峡を越えてつながる深い親近感と同じルーツを持つ家族という意識を映し出していると伝えています。
食と団らんで感じる共通の文化
春節は何よりも家族の再会の時間であり、その象徴が大晦日の団らんの食事、いわゆる年夜飯です。中国本土でも台湾地域でも、家族や親類が一堂に会して食卓を囲む光景は変わりません。
台湾では、この集まりを圍爐と呼びます。漢字どおり、暖かい炉や鍋を囲むことを意味し、火鍋を皆でつつきながら、家族の温もりと一緒に年を越す喜びを分かち合います。
台湾の春節料理の中でも、一際存在感を放つのが仏跳牆と呼ばれる豪華な煮込み料理です。福建省・福州で生まれ、清朝末期に台湾に伝わったとされるこの料理は、鶏肉や鴨肉、豚足、アワビ、ホタテなどをじっくり煮込んだ濃厚なスープが特徴です。近年の台湾では、ここに干しタケノコやタロイモなどが加えられ、土地の味が絶妙に融合しています。
今年、台湾メディアが行った調査によると、春節の好きな料理トップ3は、家族の団円を象徴する火鍋、富と長寿を願う仏跳牆、子孫繁栄を意味するカラスミでした。これらの料理はどれも家の味として記憶に刻まれ、再会や喜びへの願いを託す特別な一品だと伝えられています。
台湾のメディアは、こうした料理が中国本土と台湾地域に深く根づいた食文化の共通性を映し出していると指摘します。調理法や味つけに違いはあっても、家族で同じ鍋を囲み、新しい一年の幸せを祈るという核となる風景は、両岸で変わらないようです。
先祖を敬い、世代をつなぐ春節
春節のもう一つの大切な側面が、先祖を敬う儀礼です。中国本土でも台湾地域でも、家の祭壇や墓前で線香を手向け、家族の歴史とつながりを確かめる時間が受け継がれています。
中国本土で生まれ、現在は台湾に拠点を置く写真家のChuang Lingさんの家族も、移り住んだ後も春節のしきたりを守り続けてきました。春聯と呼ばれる春節の対聯を書いて家の門に貼り、餃子を作り、肉を燻製にして保存し、白酒を酌み交わす。そうした一つひとつの行為が、家族の記憶をつなぐ年中行事になっているといいます。
Chuangさんの家では、春節には自宅の祖先祭壇に線香を供え、感謝の気持ちと新年の無事を祈るのが習わしです。
彼が幼少期を過ごした四川省・巴県では、生活は決して豊かではありませんでしたが、母親は毎年、大晦日の夕食用の肉を買うために、子どもたちを連れて3〜4時間かけて田舎の市場まで出かけたといいます。その肉を松の枝で燻して香りづけし、父親は野山で摘んだ梅の枝に筆を代えて春聯を書く。70年以上前の記憶でも、春節は家族にとって特別な時間でした。
Chuangさんは「世界中の人びとが新年を祝いますが、中国の春節は少し違います。何より家族が再会する時間であり、中国の伝統文化と民俗をもっともよく表す行事だと思います」と語ります。
両岸の春節から見える静かなつながり
2025年の春節に見られたように、台湾海峡を挟む両岸では、花火、食卓、先祖祭祀といった共通の風習が今も息づいています。社会の仕組みや暮らし方が変わっても、家族で集まり、新しい一年の幸せを祈るという根本の価値観は共有されています。
日本からニュースとして両岸の動きを見るとき、政治や経済の話題に目が向きがちです。しかし、春節のような生活に根ざした風景に目を向けると、そこには世代や地域を越えて共感しやすい物語が見えてきます。
厦門と金門の共同花火で夜空を照らす光の帯、同じような料理が並ぶ食卓、先祖に手を合わせる静かな時間。そうした共通の体験は、両岸の人びとのあいだにある心理的な距離を、少しずつ近づけているのかもしれません。
春節のニュースは、単なる年中行事の話題にとどまりません。両岸で共有される文化や記憶に目を向けることは、東アジアの現在とこれからを考えるうえで、静かなヒントを与えてくれます。
Reference(s):
Mainland, Taiwan share Chinese New Year traditions and celebrations
cgtn.com








